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専門コラム「指揮官の決断」 

No.000 創刊準備号

危機管理に挑む経営者の皆様のための専門コラムです。社会、経済、国際情勢、日常生活その他の様々な分野からトピックを選び、意思決定、リーダーシップ、プロトコール、そして危機管理の視点から得られる気付き、ヒントをお伝えします。

私が意思決定論やリーダーシップ論の勉強を始めた学生時代、「危機管理」という言葉は国際政治学の専門用語でした。それは核戦争をいかに回避するかという問題として認識され、いわゆる核抑止の理論が研究されていました。

この「危機管理」という言葉を国際政治学の場から私たちの日常生活の場へ展開させたのは、警察官僚出身の佐々淳行氏であり、1979年に出版された『危機管理のノウハウ』以降、身近に起こる様々な危機への対応に概念が拡大されていきました。

この「危機管理」という言葉は、それ以降も折に触れて脚光を浴びることはありましたが、やはり何か特別な概念であって一般市民に直接かかわるものとは認識されていませんでした。

それが1995年(平成7年)1月17日に発生した兵庫県南部地震による大規模地震災害、いわゆる「阪神・淡路大震災」を機に、主として大規模自然災害への対応という観点から民間企業や一般市民にも一挙に関心が広まりました。危機管理のコンサルティング会社が活躍し始めたのもこの頃からです。

しかし、バブル崩壊後の日本社会は、長引く不況の中にあえいでおり、再びいつ起こるかわからない危機に対する備えに人、時間、資金をつぎ込む余裕がなかったのか、危機管理の重要性は理解しつつも本気で取り組む企業は僅かでした。一般社会も、災害直後は防災用品が爆発的に売れたのですが、備蓄用食料などは保存期限を超えても更新の需要は発生しませんでした。

そこで突然起こったのが2011年3月11日の東日本大震災です。この大震災は犠牲者の数、被災した地域の広さなどが阪神淡路大震災よりも数倍の大きさであり、かつ、桁違いの津波が押し寄せてくる映像が繰り返し繰り返しTVなどで放映されたこと、この自然災害を機に、改めて南海トラフに起因する大地震や富士山の噴火などの危険性がクローズアップされたことなどもあり、日本の民間企業、一般市民もいよいよ本格に危機管理に取り組まなければならないと真剣に考えるようになりました。

実は阪神淡路大震災と東日本大震災の間には、スマトラ島沖の地震津波という大きな自然災害が発生しており、巨大な津波が街を襲う映像が繰り返し流され、日本においても同様の危険があることが指摘されていたのですが、やはり我が身のこととして痛切に認識されるには至っていなかったのかもしれません。

日本の一般社会が太平の眠りから目を覚ますのに東日本大震災は極めて尊い犠牲だったとも言えます。

つまり、専門家を除く日本の一般社会が危機管理の問題を真剣に考え始めたのは2011年3月以降なのです。

東日本大震災以後、先に述べた南海トラフに起因する地震災害、富士山の噴火のおそれなどの自然災害だけでなく、世界的に頻発しているテロなどの危険も私たちは意識するようになりました。日本国内では地下鉄サリン事件などのオウム真理教が引き起こした事件以外にいわゆるテロ事件は発生していませんが、世界で頻発しているテロ事件のニュースを観るたびに、日本だけがいつまでも例外でいられるはずはないのではないかと私たち自身も感じるようになってきています。

しかし、真剣に考え始めてからまだ5年しかたっていません。地域住民の安全を守らなければならない自治体や、我が国の活力を支え続けなければならない企業などは、危機管理が重要なことは理解しても、どうすればいいのかその方法論に馴染んでいないように見受けられます。とりあえずBCPを作った会社はまだいい方で、多くの会社はまだ、怖いものは見ないようにするいわゆるオーストリッチ症候群にとらわれています。

BCPを作った多くの企業も、作ったことで安心してファイルに閉じて金庫に入れてしまっています、自治体も防災訓練の実施方法もまともに知らない担当者が一生懸命になって空振りしているところが少なくありません。

このコラムでは、企業、病院、自治体、政府機関を問わず、あらゆる組織の経営トップの皆様に、危機管理をどう考えるのかについて役に立つ情報、ヒントなどを様々な分野のトピックからお伝えしていきます。

危機管理には、的確な意思決定、優れたリーダーシップ、しっかりとしたプロトコール、そして効果的な訓練が必要ですので、それらの観点から様々な内容をお届けします。

どうか、当コラムを参考にして、脅威に屈しない組織を育て、いかなる事態にも毅然と対応できる経営者として、その責任を全うして頂きたいと願っています。