専門コラム「指揮官の決断」
第340回言いたくはないが国賊だろう
危機管理における重要要素
弊社では危機管理の三本柱として「意思決定」「リーダーシップ」「プロトコール」を掲げています。したがって、今年から始めている危機管理論の入門的議論においては、この3本柱を中心として話が進められていくはずです。
この中でちょっと異質なのが最後の「プロトコール」です。
危機管理におけるプロトコールの重要性
「意思決定」と「リーダーシップ」が危機管理に限らずあらゆる管理論において重要であることは皆様もご賛同頂けるかと存じます。
ところが、「プロトコール」となると「何だ、それ?」と思われる方もいらっしゃいます。
プロトコールとは、元々は外交用語であり、儀典・儀礼・規約・議定書などの意味があります。
弊社で「プロトコール」と言う場合、それは儀典・儀礼の意味合いが強いかと考えます。
つまり、対外関係において、しっかりとした接遇ができることなどを指しています。
例えば、株主総会や会社の創立記念式典などを一部の隙無く、滞りなく運営できる能力、来客時の会社正門到着から見送りに至るまで、あらゆる点に配慮が行き届くこと、記者会見などにおいて、いかなる質問に対しても、漏れなく、上げ足を取られることもない対応ができることなどです。
これが何故危機管理と関係するのかと思われる方もいらっしゃるかと存じます。
老舗旅館の女将をイメージしてください。
彼女は、旅館内のあらゆる箇所に目を光らせ、わずかな埃、額の歪み、生花の鮮度などを観ています。そして、ちょっとでも気になる点を見つけると、担当者を呼んで修正していきます。普通の人にはまったく気付くことのない細部にも気を使い、妥協することがありません。あるべきものをあるべき姿にしていくことに対する執念のようなものをもっています。
そのような女将は、ちょっとした異変に素早く反応します。つまり、危機を芽のうちに摘んでしまうのです。
かつて、京都のある老舗旅館の女将が筆者の前を歩いていて立ち止まり、小首をかしげていたと思ったら、番頭さんを呼んで何かの指示をしていました。後で番頭さんに尋ねると、筍が芽を出しそうになっているのを彼女が見つけたのだそうです。和服の彼女は草履を履いていたのですが、その草履越しに地面の中にある筍を感じ取り、芽が出てしまうとお客様が躓くおそれがあるので取り除くように指示が出たのだそうです。
まだ芽が地面から顔を出していない時点で彼女は足の裏に異変を感じ取ったのです。
危機を芽のうちに摘んでいるのです。
この写真おかしくないですか?
筆者はこの映像を見て逆上しました。
「こいつは国賊だ。国家をないがしろにするにもほどがある。」
このような政府広報を出した首相官邸のすべてのスタッフも大馬鹿野郎が揃っているに違いありません。
基本中の基本がまったく分かっていません。
その程度が分からないスタッフばかりだから、出てくる政策が出鱈目で、その場しのぎにしかならないのでしょう。
当コラムでは現首相が「検討使キッシー」と呼ばれていることはすでに紹介しました。(専門コラム「指揮官の決断」第285回 検討使500歩後退 https://aegis-cms.co.jp/2648 )
また、会う人ごとに「全力を尽くす。」と公言し、結局何に全力を尽くすのかまったく分からないことにも言及しました。(専門コラム「指揮官の決断」第318回 聞き飽きた https://aegis-cms.co.jp/2823 )
また、そもそも総裁選において「危機管理の要諦は、最悪の事態を想定して備えること。」と述べたことをもって、首相が危機管理を理解していないと断言しています。(専門コラム「指揮官の決断」第261回 「危機管理の要諦は最悪の事態に備えること」? https://aegis-cms.co.jp/2510 )
さらに首相は今年、国会答弁において育休中にリスキリングできるように支援すると述べて炎上しました。
野党の追及は「育休は休みではない。」「家事すらままならないのにどうやって・・・」ということでしたが、これは完全に見当違いの追及です。
首相は様々な状況にあっても主体的に学び直したいという人は支援する、と言ったに過ぎないのです。ただ、そう言ったに過ぎず、これは何の意味もない政策であって、首相の現状認識がいかに貧弱かを露呈したに過ぎません。
育児休業中にまともな勉強などができるかどうか、できるとすれば本来は育児のための休業などは必要がないという環境にある人だけでしょうし、スキルを活かして新たな職務に就いたとしても、職能給の雇用形態が主流である日本では等級や役職が上がらない限り賃金のアップに繋がらないことに気付いていません。ジョブ型雇用はまだ一般的とは言えないからです。
つまり、リスキリングを賃金のアップにつなげようとすると転職しかなく、非正規雇用の人々にしか役に立ちません。
技術者などが時代をリードする新たなスキルを身に付けて産業を活性化していけるような制度ではないということです。つまり、リスキリングすれば賃金が上がるなどと言う誤解を世間に与えただけに過ぎません。
さらに、首相がこの言葉の意味を正確に理解しているかどうか疑わしく思われる節があります。
彼の国会でのリスキリングという言葉の発音です。
首相は「リスキリング」と平坦に発音しますが、もし”reskilling“という意味を理解していたら、リにアクセントが置かれるか、あるいはリ・スキリングと発音するはずです。
お陰で、テレビなどではアナウンサーやコメンテーターが意味を分からずに発音するため、平坦な「リスキリング」という言葉がまかり通ることになってしまいました。ひどい人になると「リス・キリング」と聞こえることすらあります。
さらに筆者の怒りの炎に油を注いだのがこの写真です。
この写真は政府広報の動画のひとこまのスクリーンショットです。
筆者の自衛隊の先輩や同期、あるいは後輩なら瞬間に気が付きます。
国旗の位置が反対です。
国旗は室内においては、その部屋の主人の右側、向かって左側に置かれなければなりません。
執務室であれば机の右後ろです。
それが国旗に対する敬意です。
ところがこの国の首相はその敬意を払っていません。
堂々と国旗の右側にいます。
これは米国においても韓国においても同様です。
この国でその位置が許されるのは「天皇」だけです。コロコロ変わる首相ごときに許されることではありませんが、彼は平気で「天皇」の立ち位置にいます。
この政権に危機管理を任せてはならない
首相の会見等における国旗の扱いなどはプロトコールの基本中の基本であり、それが理解できない首相官邸のスタッフは儀礼に関してド素人であり、その国旗が自分の左後ろにあっても何も感じない首相はそもそも自分が何様であるのかを誤解しているかもしれません。
断言しますが、現在の首相及び官邸スタッフに危機管理を任せてはなりません。
北朝鮮で金総書記の写真を同じように扱ったら、間違いなく高射機関砲で粉々にされて犬の餌になるでしょう。金総書記は実際にそのようにして自分の叔父を処刑しましたからね。