専門コラム「指揮官の決断」
第447回政治家の言葉

虚しさの論戦
自民党の総裁選が告示され、論戦が始まったようです。
「始まったようです。」というあいまいな言葉を使っているのは、筆者がこの総裁選に何ら関心がないからです。
誰が総裁になっても、この国が良くなるという展望が見えないし、そもそも自民党というのは、公約を掲げて当選したら、その公約を実行しますということをやったことがないそうですから、論戦などに関心の持ちようがありません。現総裁がそう言っていましたからね。
つまり、政治家の言葉など信じないでくれ、ということなんでしょう。
もともと筆者は政治家が大嫌いで、彼ら言葉の軽さを侮蔑していました。
昭和の時代の選挙では、「皆さまのため、命がけで戦ってまいります。」と絶叫する候補者は珍しくありませんでしたが、しかし、公約を守れずに自決した政治家をこの国の憲政史上一人も知りません。この連中の公約なんてそんなものです。
軍人には、自らが指揮を執る船が沈むときに船と一緒に沈んだ指揮官や、部隊が壊滅して連隊旗を焼いて自決した指揮官などほ数えきれないほどいますが、政治家の責任感なんて議論するだけ虚しいと言わざるを得ません。
したがって、政治家の言葉について議論するのも空虚なのですが、この数年、この連中は覚悟がないだけでなく、日本語を知らないのではと思う事象が多々あり、ついにコラムで取り上げることにしました。
何故メールマガジンではなく、専門コラムで取り上げるかというと、言葉というのは意思決定において極めて重要な役割を果たしますし、リーダーシップにおいても、指揮官の発する言葉とメンバーの受け取り方が異なると問題を生じます。また、言葉が外向けに発せられた場合にはプロトコールの問題となります。つまり弊社が掲げる危機管理の重要な三要素にすべて関わっているからです。
政治家の言葉使い
政治家の出鱈目な言葉使いについては、思うところがたくさんあります。
独断専行という言葉の意味を正しく理解している政治家は極めて少数です。
メディアが理解していないので、新聞を読んで勉強だと思っている低知能の政治家に分からないのは無理もありません。
コンプライアンスも法令遵守だと思っている輩がたくさんいます。これは読売新聞がコンプライアンスと書くたびに、かっこ書きで法令遵守と入れたため、一般の方々も誤解されている方が多いのでしょう。
そもそも危機管理とリスクマネジメントの違いをいまだに理解していない政治家は珍しくありません。どころか、両者が異なる概念を持つことを理解している政治家がいると、思わず姿勢を正したくなるくらいです。
それらの話をしだすと、怖ろしく長いコラムになりますが、〇×な政治家のためにそれほど時間を割くつもりもありませんので、皆様がよく聞かれる言葉についての話にしたいと思います。
「適切に判断する」って何?
今回取り上げるのは、国会での答弁や官房長官の記者会見などでよく聞かれる「適切に対応していくつもりです。」という言葉です。
この言葉を聞くたびにうんざりします。
質問者は「どうするんだ?」と訊いているんです。それに対する回答が「適切に対応する。」ですから、質問に答えていないことを回答者は理解していないのかと思います。
適切だったかどうかは、結果として第三者が判断するのであって、対応する者が事前に判断すべきものではありません。
ものによっては、どう対応するのかという手の内を見せられないという案件もあるでしょう。それなら、そう言えばいいだけのことです。
ほとんどの場合は、まだどう対応していいか分からないから、「適切に判断する」という言い方になるのでしょう。
「適切に判断するつもり。」というのはあまりにも当たり前すぎて答えになっていません。誰も不適切な判断をしてほしいと思っていないからです。
国会では野党も政治記者もそれなりの考え方を持っていないので、大臣や官房長官が「適切に判断していく。」と答えると、それ以上の質問は出しません。
もし、それなりの考え方があるのであれば、「適切にどう対応するのか。」という質問が出るはずです。
答弁資料を作るのは、国会対応の役人の仕事ですが、この連中の能力の著しい低下のため、
国会での政府答弁がかなりいい加減になっています。
この「適切に対応してまいる。」という言い方も、どこかの省庁で使ったのを見て、あいまいに答えるときの常套句として定着してしまったのでしょう。
この官僚の劣化は、皆さまもお気づきかと存じますが、びっくりするほどの劣化です。
外務省にいたっては、ついに外務大臣に「尖閣は日本が実効支配している。」などと答弁させる始末です。
この外務大臣は、中国に媚びるあまり、わが国固有の領土であり、そこに領土問題は存在しないという従来の立場を覆してしまったのですが、そのような大臣発言の原稿を書いた官僚がいるのでしょう。この発言をしたときの外務大臣は、原稿を読んでいましたからね。
政治家の言葉を取り上げ始めるときりがありませんので、今回はここで筆をおきます。
この言葉も時代にマッチしなくなりました。正しくは、データをセーブして、ワードプロセッサーを終了させます、という言い方になります。
味気ないですね。
(追補)
今回の表題に用いた写真は首相官邸ホームページが掲載したものです。平気な顔をして日章旗の右前に座り込んでいます。
国賊ですね。