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専門コラム「指揮官の決断」

第467回 

自衛隊差別発言について その1

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嫌なんですが

本当は触れたくない話題ですが、自衛隊のある後輩から、「先輩、この件についての先輩の御見解をお聞かせください」というメールを二回に渡ってもらい、また、自衛隊と関係のない、ビジネス上のお付き合いの方からも、「OBとして、どう考えるの?」と訊かれ、逃げるわけにいかないということで、今回嫌々ながら筆を執っています。

後輩のメールの裏には、筆者の先輩の影もチラついています。

「あいつなら、何て言うかな?」ということでしょう。

ことの経緯

ネット上では、この議論は大炎上中で聞き飽きておられる方も多いかと存じますが、地上波テレビでは、まず取り上げられないので、ネットをご覧にならない方々はご存じないかもしれないので、ここで事案の経緯を簡単に説明しておきます。

6月15日の参議院決算委員会で、立憲民主党の小学校教員出身の古賀千景議員が質問に立ち、児童・生徒向けに自衛隊の活動などを解説した冊子「まるわかり!日本の防衛」について質問し、ウクライナ戦争や北朝鮮の弾道ミサイル発射、中国の海洋進出に関する記述を取り上げ、小学校にはロシア、北朝鮮、中国の子供たちも通っている、そのような子供たちに対して配慮が足らないのではないかと詰め寄り、その中で特に議論をする必要もないのに、「私にも教え子がいっぱい自衛隊にいます。いっぱい苦しんでいる。でも、分かって欲しいのは、自衛達に行く子供たちって、経済的に厳しい子どもたちが行くんですよ。豊かな子どもたち自衛隊とかなりませんよ」と持論を展開し、議場がざわついたので、すかさず「すいません、失礼しました。訂正します」と釈明し、「でも本当にそこでね、生活の厳しい子供たちが生きていると、安定した職だということ、そこは分かって欲しい。苦しんでいるところで・・・。そのことはまず申し上げます」と続けました。

これを受けた小泉進次郎防衛相の、ロシア、北朝鮮、中国の子が学校に通っているので、そういう子供たちへ配慮がどうかという質問だったが、自衛官の子供だって通っている、そういう子供への配慮がないのではないか、という抗議を受け、「申し訳ない。撤回します」と陳謝しました。

言っていることが支離滅裂なので、実際の発言を聞いていただきたいのですが、こちらでご覧になれます。

筆者もたまたまPCに向かって仕事中で、この直後からネット上で大炎上しているのに気づきました。

筆者は、この発言を聞いた瞬間、ついに参議院立憲民主党は墓穴を掘ったなとは思いましたが、その後の展開には幾分の驚きを隠せずにいます。

この発言に関して、古館伊知郎は「これはイカンですよ。いけないに決まってるんですよ」と断言し、そのうえで「経済的に厳しい中で自衛隊員になる人もいれば、そうじゃない人もいる。一概に決めつけてはダメ」「これは失言だと思います」と批判しています。その一方で、日教組出身という古賀氏の思想的背景にも触れ、「保守系の人とは正反対のことを言う。その気持ちもわかる」との一定の理解のもとに、「切り取られたところだけでギャーギャー言わずに、全体の問題を話し合っていくことが急務」とコメントしました。

ネット炎上

この件に関し、ネット上の炎上は、筆者がかつて見たことのないほどの凄まじさで、未だに収まっていません。

この炎上騒ぎに油を注いだのは、立憲民主党の対応でした。

斎藤嘉隆国会対策委員長は、「極めて遺憾であり、自衛官や家族のみなさんの心情に著しく配慮を欠き、国民の誤解を招く結果にもなっている」と述べ、田名部幹事長が古賀議員に対し、厳重注意処分とし、文教科学委の筆頭理事の職を解く処分とし、なお、処分はしたが、この責任は非常に重いと考えるとして沈痛な顔をしてみせましたが、それがネット上では炎上に油を注いだ形になりました。「それで幕引きを図ろうというのか」ということです。

この党の重鎮であった、蓮舫氏が他党議員の発言について「撤回すれば済むという問題ではない」と発言していたり、その党自体が、他党議員の発言に対し、執拗に辞職を求めていた経緯があるからです。

自民党の萩生田光一幹事長代行が「耳を疑う発言だった。自衛隊員に対しても、その家族に対しても、非常に無礼な発言だと思う」と指摘し、国民民主党の玉木雄一郎代表は「自衛隊、家族のみなさんへの侮辱。あってはならない発言だ」と述べるとともに、榛葉幹事長が、別の委員会での質問に先立ち、異例の批難を展開しました。

その他にも、元自衛官の地方議員が連名で、立憲民主党に対し、内容証明付きの質問状を出したり、元外交官だった方や、評論家、芸能人などネット上の保守系の論客たちが一斉に凄まじい批難を繰り広げています。

皆さんの主張は概ね同様で、まず、古賀議員の発言自体が前代未聞の差別発言であり、それに対する党の処分が甘すぎる、立憲民主党は自民党議員に対しては、「撤回すれば済むという話ではない、辞職すべきだ」と言い続けてきたではないか、という議論です。

この勢いは、古賀議員が議員辞職を言い出さない限り収まらないのかもしれません・

イージス窟翁の見解

それでは、弊社の見解を披瀝しましょう。

筆者は、かつて自分自身も自衛隊員であり、かつ、父親が海上自衛官でした。

古賀議員が指摘するごとく、経済的に厳しい家庭出身であり、裕福な家庭の育ちではなかったのかもしれません。

そのような背景を持ちつつ、新入隊員の教育を担当する部隊指揮官も経験していますので、この問題に無関心ではありません。

ただ、あまりにも馬鹿馬鹿しくて、まともに議論する気分になれなかったというのが正直な気持ちです。

馬鹿馬鹿しいのですが、かつて新入隊員の教育担当部隊の配置経験もあり、お伝えしなければならないことは、一言で済むようなものでもないので、二回に分けてお伝えします。

以下は、弊社の公式コラムの見解だけでなく、執筆者個人の見解も入っていますが、それぞれに、公式の見解か、執筆者個人の見解かが分かるように表現しています。

立憲民主党の日教組代表議員に何を期待していたのか

まず、ネットを賑わせている皆様は、日教組出身の立憲民主党の参議院議員に何を期待しているのでしょうか。

この連中が、この程度の発言しかできないことは、あらかじめ分かっていたでしょう。

どうせ、支持率2%以下の党です。何を期待していたのでしょうか。

自民党の萩生田幹事長代行に至っては、「耳を疑う発言だった。」と述べています。

この政治家の能力については、かつて彼が文科相大臣だった際に、コロナ禍におけるオリンピック開催に関し、富岳のシミュレーション結果について、開会式を執行しても大丈夫だということが科学的に証明された、と発言したことについて、コンピュータシミュレーションと科学的証明の違いが分からぬ男が文科相大臣を務めていると批判したことがありますが、今度は幹事長代行として、古賀議員の発言について、「耳を疑う」と述べています。この男が何年議員をやっているのか知りませんが、立憲民主党の日教組出身議員の能力について、何の見識もなかったのでしょうか。そんな奴がよく他の役職ならともかく、幹事長代行などという役職につけたなと思います。

国民民主党の玉木代表の、こういう発言が野党の側の正しい安全保障政策を進めていく妨げになってきたことが象徴的に現れているのかなと思う、というコメントはもっとも当を得た発言だと思います。

ネット上の炎上の言い分の多くは、立憲民主党の処分が甘すぎるというものですが、筆者は、そうは考えていません。理由は後に述べますが、国会議員が院内で行った発言について、責められるのは議会民主制の本旨に反します。議員の発言は、それだけ重いはずです。軽々しく、ことの勢いで発言してしまうなどということがあっていいはずはありません。

ただ、立憲民主党の斎藤嘉隆国会対策委員長が「極めて遺憾であり、自衛官や家族のみなさんの心情に著しく配慮を欠き、国民の誤解を招く結果にもなっている」と述べているのが理解できません。

国民は誤解していません。立憲民主党、日教組、古賀議員本人が自衛隊をどう見ているのかを正しく理解しています。誤解を与えたというのなら、本来はどう表現すべきだったのかを党として示す必要があります。また、日教組も、公式にこの件に関する組織としての見解を出していませんが、ということは、彼女の発言は日教組としては関知しないというのか、あるいは、まったく同感だというのかのどちらかです。

国会議員の議院における発言について

ネットを見ていると、炎上は第二段階に入ったように思えます。当初、とんでもない発言だ、ということでありましたが、ここ数日は、議員たる資格はないので辞職すべきという発言が多くなってきているように思います。

自衛隊時代の後輩からメールが来たのもこのタイミングであり、前回、この問題に触れず、トゥキディデスの罠などに言及していたのが、彼の琴線に触れたのかもしれません。そんな歴史の話をしている場合ではないだろう、ということでしょう。

弊社としての見解を申し上げれば、結論としては、国会議員は国会における、自分の信念に基づく発言のために辞職させられることがあってはならないと考えます。

国会外で、個人的に破廉恥行為があったりした場合は別ですが、国会においての発言で、それが信念に基づくものであれば、それはそのような意見を持つ有権者の代表としての発言としてとらえるべきであり、断罪されるようなものではありません。

かつて、社民党代表が「自衛隊は国民を守らない」と発言し、令和しんせん組代表は自衛隊の装備品を「人殺しの道具」と表現したことがありましたが、元閣僚だった社民党代表が自衛隊にそのような認識を持っていたこと自体、あるいは防衛装備品を人殺しの武器と表現するするようなことは、今回の問題よりも断罪されるべきかと思料します。しかし、そのような発言の評価は、次の選挙で示されるべきものです。それが、日本の民主主義です。

「訂正」と「撤回」

問題は、この古賀議員は「訂正します」と言っておきながら、訂正をしていないということです。先のURLで古賀議員の発言をご確認ください。

不適切だと考える発言は「訂正」と「撤回」のいずれかの方法により、適切な発言とすることができます。

「訂正」というのは、どの部分が不適切だったのかを明示して、その部分をどのように修正するのかを示す必要がありますが、上記の古賀発言ではその訂正はされていません。

彼女が行ったのは「でも本当にそこでね、生活の厳しい子供たちが生きていると、安定した職だということ、そこは分かって欲しい。苦しんでいるところで。そのことはまず申し上げます」という発言です。自衛隊に行く子は貧しい家庭の子、豊かな家庭の子は自衛官になんかならない、という発言については、まったく触れておらず、むしろ、補強しています。また、何を苦しんでいるのか、まったく説明がありません。

小泉防衛大臣の反撃を受けて、「すみません、撤回します」として、訂正はしないまま撤回してしまいました。つまり、自分の発言はなかったことにして欲しいということです。

古舘伊知郎のコメントの浅はかさ

古舘伊知郎は、YouTube番組で、「切り取られたところだけでギャーギャー言わずに、全体の問題を話し合っていくことが急務」とコメントしていますが、この男は報道の世界に長くいたにも関わらず、基本的なことを理解していないようです。

切り取られたところだけでギャーギャー言わずに、と言っていますが、メディアにおいて問題となる「切り取り」がどのようなものなかを彼は理解していません。

問題となる「切り取り」というのは、「Aに関して、Bという前提で申し上げれば、Cということになる」という発言の「Bという前提で申し上げれば」という部分を抜いて、「Aに関して、Cということになる」と記事にすることであり、古賀議員の発言に関して、URLを記載した動画を観て頂ければ分かりますが、「切り取り」ではありません。

ネット上の多くのコメントが「訂正」されていないことに言及していないだけです。

次回に引き継ぎます

さて、長くなりますので、それでは自衛隊に入隊してくる若者たちというのは、どういう連中なのかと議論は次回展開することにします。

今回は、これまで述べてきたとおり、立憲民主党古賀議員の発言そのものの論理的問題及び、その発言に対するコメントについて述べてきました。

筆者は、国会議員を国会内における発言で辞職に追い込むことには反対ですが、それには理由が二つあります。

今回は、その一方にだけ軽く触れていますが、それらを含めて、次回、改めて言及します。