専門コラム「指揮官の決断」
第474回コロナ禍に学ぶ危機管理の発想法 その8
承前
コロナ禍を例にとって、危機管理上の注目点について語るシリーズを続けます。
本来、当コラムが取り扱うべき論点が山ほど社会には起きているのですが、これまでも、ある試みを始めては、それら社会に生起した論点に触れているうちに、その試みに戻ることができなかったので、今回は、様々な論点に目をつぶってシリーズを続けています。
今回は、いよいよ、専門的知識がなくても、それなりに対応できたであろう論点に触れていきます。
前回取り上げた、人の接触を8割減らすという議論は、分子の接触理論などを持ち出したので、やや専門的になりましたが、例として出した、二人しか社員のいない会社では、一人に自宅待機を命ずれば、つまり、50%の人出で、接触を100%削減できるという理屈を思い出して頂ければ、専門的な話でもないことをご理解頂けるものと存じます。
専門家でなくても分かる話
さて、いよいよ本来すべき議論に入ります。
PCR検査についての議論がおかしいことは、前回までに述べましたし、当コラムでもコロナ禍中に、やたらとやってはならないという発表をしています。
最初の緊急事態宣言において、飲食店の営業が午後八時までの営業自粛を申し渡されました。
この結果、何が起こったか?
飲み会の開始時間が早まっただけでした。午後7時頃の居酒屋に行ったことがあります。
あるセミナーの講師として、終了後、来ていた生徒さんたちと食事に行ったのです。
夕食後に、個別の問題に対する相談を受ける約束になっていました。
広い店内で、筆者たちが8人でしたので、10人くらい座れるテーブル席に案内されました。
ところがです、となりのテーブルで一見して分かる会社員グループが飲んでいました。皆さんスーツでした。
この連中の盛り上がりがすごく、こちらのテーブルでは、正面の人の話も聞こえないくらいでした。
店員を呼んで、席を代えるか、隣のテーブルを静かにさせるかを頼みましたが、マネジャーらしき人物が出てきて、時短の影響で、短期決戦で酔わなければならないので、皆さんに我慢して頂いていますということでした。
口角泡を飛ばして怒鳴りあう飲み会があちらこちらで開かれていれば、空気感染する感染症はすぐに流行るでしょう。
夜に食事ができない
この後、休業要請が強まり、多くの店舗が臨時休業やテイクアウト専門に変わっていきました。
これも不思議な話です。
最近は、年間交通事故死者数は3000人以下に抑えられていますが、かつては、1万人を超えていた頃がありました。
毎年1万人以上が亡くなっているのに、自動車の販売自粛やガソリンスタンドの営業時短などは行われませんでした。
コロナ感染症は、食中毒と異なり、客が持ち込むウィルスが原因です。
店は、店員を危険に晒しながらサービスを提供しています。つまり、規制すべきは、店ではなく、そこに出入りする無神経な客たちのはずです。
時短営業のため、午後8時を超えると食事ができなくなります。つまり、深夜に仕事が終わる職業についている人たちが食事ができませんでした。
夜勤を終えて、一人で帰宅する途中、ラーメン屋に寄ったり、牛丼屋に寄ったりして夜食を済ませることができない人が多数できました。
一人でカウンターで、ラーメンや牛丼を食べて、どうやって感染を広めることができるのでしょうか。
ハッピーアワーとカラオケ
一方、時短を受けて、早い時間から客を集めるため、ハッピーアワーを始める店が多くなりました。
しかし、いくらなんでも午後3時から飲んでいる会社員は少ないので、集まるのは引退した人が中心でした。
問題は、その後彼らがどこに行くかです。ハッピーアワーが終わってカラオケに行った人たちが多く、データによれば、5時からの3時間と8時以降の3時間の売り上げが、この時期逆転しているそうです。
その結果、カラオケ店で感染して亡くなった高齢者が多数います。
何故、対角線で座らされたのか
また、この時期、カフェなどに二人で行くと、四人用テーブルで対角線上に座らされたことをご記憶の方も多いかと思います。
テーブルの上には、パーティションが置かれています。
筆者は、これが感染を拡大したと考えています。
対角線上に座らされたのは、小さなテーブルの上で、距離を取るための苦肉の策だったかもしれません。しかし、根底にあるのは、国立感染症研究所の研究結果です。
同研究所は、ある感染事例を取りあげて、8人で飲み会を開いた結果、感染源と見做される個人が座っていた場所から、対角線上にいた一人以外がすべてPCR検査で陽性になったことを突き止め、距離が重要だったかもしれないという結論を出しました。
これを見たメディアが一斉に対角線上に座るべきという論調を取ったためにこのようなムーブメントになりました。
筆者たちに言わせれば、この一例をもって結論を出すのは、間違いです。
参加者の体調、基本的に持っている免疫、店内の空調の状況とそれによって作られた空気の流れ、テーブルを囲む空気の流れなどを総合的に調査し、それだけ変数が多いと、数多くの事例を検討する必要があります。国立感染症研究所の研究は、単なる事例研究であり、一般原則を導き出すものではありません。
しかし、メディアには、そんな知恵はありません。対角線上に座らせるのが感染防止上好ましいと主張したのです。そこで、カフェ等では、十字のパーティションが置かれ、客は対角線上に座らされました。
筆者たちが、これが感染を拡大させたと考える理由は次のとおりです。
カフェに二人で訪れる仲の人たちはどういう人たちでしょうか。
恋人同士、夫婦、兄弟、仕事仲間などいろいろあるでしょう。その人たちが、カフェに行く前に、マスクをして話をしていたのでしょうか。
ビジネス上の付き合いの人たち以外の多くは、同じ車や家で、普通に暮らしていたのかもしれません。
その人たちが、カフェに入ったら、対角線上に座らされ、パーティション越しに話をするのです。
パーティションは、天井までの高さがあるわけではありません。
パーティション越しに対角線で話しをするので、声を大きくしなければ会話にはなりません。隣のテーブルも同様です。したがって、ただでさえ話が聞きづらいのに、隣の声も大きくて、余計に大声で話さなければなりません。
このような悪循環が広がり、店内全体がやかましくなります。つまり、話している人たちの飛沫がたくさん飛ぶのです。
パーティションは天井までの高さがないので、上昇した空気が店内全体に広がります。これが、かえって感染を広める結果になります。
メディアの言うことを聞いた結果がそれです。
遺体は呼吸をするのか?
さらには、新型コロナウィルスに感染して亡くなった方は、遺族が遺体に面会することすらできず、火葬されて骨になって戻った方も大勢いらっしゃいます。女優の岡江久美子さんがそうでした。
この頃、感染症は飛沫感染であることが分かっていました。飛沫感染ということは、飛沫がついた電車のつり革やドアノブなどを介して感染することも十分あり得ます。
したがって、帰宅してすぐに手を洗うということは重要でした。
しかし、遺体は呼吸をしません。遺体そのものに接触すると、付着していたウィルスが移る可能性はありますが、触りさえしなければ感染はしません。防護服を着ていれば、触っても大丈夫です。
したがって、病院で亡くなって、遺体と対面させずに火葬してしまうというのは、間違っています。
そんなことは、誰にでも分かるはずなのに、テレビに出てきた感染症専門家たちの誰一人、そのような指摘はしませんでした。
とにかく、メディアに煽られた結果、新型コロナは怖ろしい病気であり、専門家の言うことをよく聞かなければならないと社会全体が信じた結果です。
メディアに煽られて、社会が恐怖に陥れられた結末
たしかに、社会にとっては、初めて襲われるウィルスであり、免疫が獲得されていませんでした。この時期、顔見知りの女性のジャーナリストの御主人が、取材先で感染し、発病しました。ご主人は、肺全体が石灰化して機能しなくなり、呼吸不全で亡くなりました。
確かに、普通の風邪でそういう症状が出ることは聞いたことがありませんが、専門家によれば、インフルエンザでは、そういう症状もまったくないわけではないということで、症例報告も出ているそうです。
ウィルスが新型なので、発症して出てくる症状も様々なのかもしれません。筆者たちは、それこそ専門外で症例報告も読んでいないので、よく分かりません。
しかし、今回ご紹介した例だけ見ても、専門家でなくてもおかしいなと気付けるはずです。 社会全体がメディアの煽りに載せられて、やたらと怖がって、ことの本質が見えなくなっていたということでしょう。
