専門コラム「指揮官の決断」
第444回国家よりも党が大切な政党

危機管理におけるプロトコールの問題
当コラムは危機管理の専門コラムであり、弊社の危機管理が「意思決定」「リーダーシップ」そして「プロトコール」を中心に議論されるため、コラムもその三つの論点から語ることが多くなっています。
かつて、岸田元首相の国民向けのメッセージで、彼が日章旗の右前に立って話をしていることが多いので、当コラムでそれを批判したことがあります。
国旗の右前に立って話をすることができるのは、日本では天皇だけであり、首相ごときがやっていいことではありませんし、世界の常識にも反します。
お疑いであれば、ウェブサイトで、例えば米国ホワイトハウスの大統領執務室の写真を見てください。どこの首脳もその机の左後ろに国旗があるはずです。つまり、国旗の左前で仕事をしているということです。
プロトコールにおいて、右側が上位なのは常識なのです。
したがってステージ上に日章旗が置かれる場合、それは常に観客から見て左側、つまりステージの右側に置かれます。
外国の賓客をお招きして、その国旗に敬意を表する場合には、その国旗を日章旗の右側、つまり見ている方からは左側に置きます。
それが世界の常識なのですが、岸田元首相は国旗の右前に立って国民向けのメッセージを度々発していました。
筆者はその無神経さが気に入らず、首相官邸にはその程度のことに気付くスタッフがいないのかとイライラしていました。
当コラムをよく読んでくださっている方々にはご理解いただいているかと思いますが、弊社では危機管理の主な要素として「プロトコール」を掲げています。
弊社に言わせれば、その程度のことに気付かない奴に危機管理はできない、ということです。
そもそも岸田という男は、「危機管理の要諦は、最悪の事態を想定して、それに備えること。」というとんでもない誤解をしている奴なので、そもそもこの男に危機管理は任せられません。
実は岸田だけじゃなかった
ただ、最近、ある写真を見ていて、単に岸田元首相とそのスタッフに常識が無かったというだけではなかったことが分かりました。
これが自民党という政党の基本的な体質なのです。
自民党総裁の執務室の写真を見た筆者は仰天しました。
何と、現トップがしがみついている総裁の椅子と机の左後ろに、日章旗と自民党旗が一緒に置かれているのです。
しかも、二本の短い旗竿に支えられた国旗と自民党旗のうち、自民党旗が前に置かれています。
自民党総裁が自民党旗の右前にいるのは別に構いません。
しかし、自民党総裁ごときが日章旗の右前で仕事をするのは許容できませんし、さらには自民党旗の後ろに置かれているというのは我慢できません。
毎朝8時、全国の自衛隊の基地、駐屯地では国旗が掲揚されます。そこに勤務している自衛官は当直員以外はすべて整列して国歌に合わせて日章旗が掲揚されていくのを敬礼をして見守ります。
その日章旗が、あの恥知らずで卑怯な生き物の後ろに、しかもその生き物がトップの座にしがみついているグループの旗の後ろに置かれているのです。
そんな状況を、自衛隊OBである筆者が許容できるはずはありません。
あの恥知らずには危機管理はできない
弊社では「意思決定」「リーダーシップ」「プロトコール」を危機管理の三大要素と位置付け、同じ重みをおいています。
筆者は社会科学の原則に忠実に議論をしていますので、論理的な根拠なしに断言することはあまりないのですが、今回はあえて断言します。
様々な状況から考えて、現政権トップに危機管理はできません。
元々、岸田氏が総裁において、「危機管理の要諦は、最悪の事態を想定して、それに備えること。」という政治家らしい論理を打ち出しました。つまり、想定外の事態は、自分の責任ではないと宣言しています。現トップは、この元首相と同様の考え方である旨表明していますが、最悪の事態の想定もしていないのでしょう。能登半島の惨状を見ていながら、補正予算を組まずに「信を問う。」と言って解散し、大敗しても、その座にしがみついているところを見ると、この生き物の眼には能登半島の惨状が映っていないのでしょう。
現トップは政権に居座る理由として、安全保障環境の悪化や大規模自然災害の恐れなどを上げていますが、もしそれが真の理由なら、サッサと交代してもらわないといけません。
自衛隊の制服組からこれほど嫌われている政治家もそういないはずですし、危機管理に関しては絶望的です。
現トップの居座り自体が最大の国難なのです。