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専門コラム「指揮官の決断」

第457回 

心地よい耳障りのいい言葉と論理のすりかえ

カテゴリ:

政治家の空虚な言葉

衆議院総選挙が終わりました。

中身のない空虚な言葉が飛び交いました。

筆者が最も嫌う政治家たちが、公然と宣伝カーを乗り出し、テレビで散々彼らの論理を振りかざします。

彼らの言葉には、とても心地良く、耳障りのいい言葉が並んでいます。

曰く「平和な世界を作ります」

しかし、どうやって作るかは語られません。

語られると、軍事力ではなく、外交的対話、国際協調主義、経済協力によって国家の安全を確保する総合安全保障によるということです。

国際関係論や安全保障論について考えたことのない人々がそれを聞くと、「もっともだ、素晴らしい」と思うでしょう。対話、協調、協力ですからね。

戦闘機や戦車を持ち出してきて血みどろになるよりも遥かに理知的です。

しかし、それらの意味するところをちょっとでも考えると恐ろしい現実に気づきます。それらの言葉では、世界に起きている現実を説明できないのです。

ウクライナでは何が起きているのか、尖閣諸島を巡った中国の動きは何なのか。

憲法9条があるから日本の平和が守られているという説は本当なのか。

それらを各個に検証していくと虚しくなります。

スローガン

かつて、民主党政権が誕生した時、事業仕分けという政治ショーが行われました。

そこで掲げられたスローガンの一つに、コンクリートから人へ、というものがありました。

この結果、公共投資に対する予算は大幅に削られました。

ダム、橋、道路などの建設予算だけでなく、それらの維持費も削られたのです。緊縮予算を目指す財務省にとっては、削りやすい大きな金づるだったのでしょう。

削られた結果、何が起きたか・・・

維持費が削られているので、防波堤や道路のメンテナンスができません。

豪雨で川が氾濫し、多くの人が亡くなったり、道路が突如陥没し、走行中だったトラックのドライバーの行方が長く突き止められないという事態が発生しました。

東日本大震災では、被災地に多くの重機が乗り捨てられました。動かす燃料が無かったのです。

通常、山の中での工事のために、麓に燃料の備蓄あるはずなのですが、公共事業が発注されないので、その備蓄がなかったのです。

高度成長期を支えた公共事業によって作られた高速道路、高架道路、橋などは太陽命数を過ぎています。予防整備も満足に行われないため、これから様々なところで事故が起こり、貴重な人命が失われていきます。

コンクリートから人へという耳障りのいいスローガンのおかげで、人命がどんどん失われていくのです。

また、当時公共投資予算を絞ったのは、緊縮財政のためでした。その結果、経済活動は活力を失い、緊縮財政のおかげでより貧乏な国になっていきました。

倹約して支出を抑えたら貧乏になったのです。

マクロ経済の入門的なレベルさえ理解していれば、これは自明なのですが、世の中の大半の人々は、お父さんの年収よりたくさんの支出はできないよね、という池上彰の大ウソに騙されてきたのです。

1997年の橋本緊縮財政移行、日本のGDPは全く上昇せず、その伸び率はG7で最低にとどまっているのですが、それが緊縮財政のせいだと、この国の政治家は考えないのです。自分たちの利益のみしか考えない財務官僚の見え透いた嘘を見抜けないのが、この国の間抜けな政治家たちです。

ボディブロー

コンクリートから人へ、という耳障りのいいスローガンの結果、国土強靭化の抜本的対策が打てずに来ました。その結果、日本は災害大国でありながら、災害にきわめて脆弱な国になりました。

災害が起きても、意外に平気そうに見えるのは、日本人の社会秩序を重んじ、お互いに助け合おうとする被災地の住民たちの忍耐力のお陰にすぎません。

実は公共投資の予算がついてもそれを受ける企業が不足しています。長く公共投資予算が削られてきたため、発注がなく、受け皿の企業が人を抱えていけなくなってしまったのです。

現在、現場の作業を見ると、びっくりするくらいの割合で外国人労働者がいます。

受ける側も人材不足ですが、道路の陥没やトンネルの崩落、橋の老朽化による落橋などに際して、迅速に仕様書を書くことのできる人材が各自治体にあまりいないのです。

それはそうでしょう。長く予算が付かなかった部門の仕様書などを書く人材が淘汰されるのは自然です。その代わり、各自治体には介護サービスの仕様書を書ける人材は豊富にいます。

仕様書が書けないとなると、業者のいいなりにならざるを得ず、また、契約も遅々としてしか進みません。

民主党が掲げた「コンクリートから人へ」という耳障りのいいスローガンが、徐々に日本を蝕んでいます。

私たちは、政治家が掲げたスローガンは、その意味をしっかりと考えなければなりません。

どんなに耳障りがよくても、心地よくても、そこに論理のすり替えが行われていないかを考える必要があります。

歴代政権のスローガン

民主党の「コンクリートから人へ」というスローガンは、結果的にこの国の経済にとどめを刺したにとどまらず、ボディブローのように現在も影響を与えれいます。

岸田政権の「新しい資本主義」というスローガンは、筆者には理解できませんでした。成長と分配の好循環ということだったようですが、それはニワトリとタマゴの関係であり、筆者に言わせれば、まず成長させなければ分配できないだろう、成長させて分配が行われれば、好循環が生まれるはずですが、岸田内閣は成長戦略も分配戦略も明確に打ち出しませんでした。戦略を打ち出せば、それが効果を持つ前に市場が反応して、その効果を先取りしていくのですが、打ち出さないために市場は鈍かったのです。

石破政権のスローガンは「日本を守る。成長を力に」でした。そして、守る対象を5つ挙げました。ルールを守る、日本を守る、国民を守る、地方を守る、若者・女性の機会を守る、です。そのうえで、彼が作りたいのは「楽しい日本」でした。

振り返ってみると、何一つ手すらつけずに終わったのが石破政権でした。

彼はルールや約束は決して守らず、能登半島復興の補正予算を組まずに解散して、国民や地方を捨て、岩谷外務大臣は極端な中国優遇策を取り、日本人の雇用を奪い、日本の健康保険制度を利用するためだけの外国人の入国を認めています。

筆者は、外国人に健康保険を適用すべきではないとは考えていません。日本に住み、しっかりと働いて、税金と保険料を納めている外国人は、健康保険で守られるべきですが、日本で歯科治療を受けたいためだけに来日する中国人が多いのです。

また、石破が目指した「楽しい国」はついに実現しませんでした。筆者の印象では、彼が政権を担当した期間の日本は「ジトーっと暗い社会」だったように思います。

もう騙されないぞ

現政権が掲げる「日本列島を強く、豊かに」というスローガンは分かりやすいです。方法論がないのですが、この内閣は同時に「責任ある積極財政」を掲げています。

つまり、これまで30年間続いた緊縮財政を脱し、積極財政に転じるということです。

これなら、日本が強く豊かになるチャンスはあるなぁ、と筆者レベルのマクロ経済の知識では考えます。

さて、お手並み拝見というところです。

ただ、この政権になってから、国会が明るくなったことは事実です。爆笑に包まれることも度々であり、各省庁で行われる大臣の記者会見も、各大臣が前内閣の時とは全く異なり、官僚の作った原稿を読むだけではなく、自分の言葉で語っているようです。

たしかに、これまでの内閣とは違う内閣が成立したようです。

さすがに、私たちも民主党政権がいかなる政権であったかのかを理解し、今回の総選挙では、その後継者たる立憲民主党が壊滅的な打撃を受けています。

もう、ココチ良い耳障りのいいスローガンには騙されないのでしょう。