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専門コラム「指揮官の決断」

第128回 

No.128 プロトコールと危機管理の関係

カテゴリ:コラム

プロトコールとは?

 当コラムでは危機管理の三本柱として「意思決定」「リーダーシップ」そして「プロトコール」を掲げています。
 この中でちょっと分かりにくいのがプロトコールかもしれません。当コラムでは何故プロトコールが危機管理において重要な役割を演ずるのかを何度か説明しておりますが、私の文章力の限界もあり、ご理解頂くのが難しいようです。従いまして、これからも折に触れてこのプロトコールの問題を取り上げて、ご理解を賜る努力を続けていきたいと思っています。
 まず、イージスクライシスマネジメントにおけるプロトコールとは何なのかを説明しなければなりません。
 もともとプロトコールとは「議定書」「儀礼」「儀典」などを意味する外交用語でした。最近ではIT関係の技術者がデータの受け渡しのフォーマットなどを確認する際にプロトコールという用語を使いますが、もとは外交用語です。
 当イージスクライシスマネジメントでは、このプロトコールという言葉を、組織と外部の関係のすべてを指す用語として使用しています。具体的には、会社にお出でになったお客様への接遇要領に始まり、国際的な会議の開催要領などおよそすべての組織の外部との関わりをいかに完璧なものにしていくかという問題を取り扱います。

なぜ危機管理にプロトコールが重要なのか

 何故これが危機管理に重要なのかという理由はいくつかあるのですが、その中で最も私が重要視しているのは、プロトコールが完璧な組織は危機管理も完璧に行うことができるからという理由です。つまり、危機管理をしっかりとしようと思うならば、プロトコールに関心を持たなければならないというのが大きな理由だからです。

 具体的に説明します。

 どこから見ても隙のないおもてなしができるホテル、レストラン、株主総会などでいかなるハプニングにもしっかりと柔軟できる会社などを思い浮かべて頂ければわかりますが、これらの組織はあらゆる角度から自分たちを点検し完璧を目指しています。そして、あらゆる場面を想定してどうすればいいのかを常に考えています。実はこれは危機管理そのものです。
 ちょっとした汚れや調度品の乱れなどを見逃さず、また、株主がいかなる態度に出ようとうろたえない、そのような組織は自ら危機を招くようなヘマはせず、また、組織の外部環境に起きつつあるわずかな変化の兆候を見逃さないはずです。その結果、いち早く危機を感じ取り、速やかな対応ができるはずです。
 つまり、完璧なプロトコールができる組織は危機管理にも強いという単純なことがお分かりいただけるかと思います。

どうすればいいのだろうか

 それではどうすれば完璧なプロトコールを身に付けることができるかということが問題となります。
 このプロトコールに関して教科書はありませんし、何ができればOKという基準もありません。感性の問題だからです。
 逆に申し上げると、プロトコールにおける感性を磨いていく過程で危機管理に関する感性も磨かれていきます。
 感性の問題だからと言ってあきらめる必要はありません。芸術的センスと異なり、この感性は気付きさえあれば誰でも磨くことのできるものです。その気付きを得ることも難しくはありません。自分の組織のプロトコールを完璧なものにしようとする気持ちさえあればいいのです。完璧なおもてなしをする旅館の女将は何をしているのか、居心地のいいホテルの従業員は自分にどのように接したか、またそのホテルの何が良かったのかなどあらゆる機会にプロトコールについて考えることができます。
 そのようにしていろいろなものを見ていくと、その感性は自動的に磨かれていき、感度が高くなっていきます。つまりスパイラルに感性が高くなっていくのです。

 つまり、そのような目で社会を見るのかどうかという問題に過ぎません。チコちゃんが怒るように「ボーッと生きている」と感性はいつまでたっても磨かれませんが、ちょっとそのような視点で世の中を見てみると、様々な気付きを得ることができます。そうなれば後は自動的安静が磨かれ、些細なことからも様々な気付きを得て、その感性は雪だるまのように成長していきます。そのような人材を多数抱える組織が、危機に強い組織に成長できるのです。

 感性の問題をおろそかにせず、プロトコールを磨いて頂きたいと思います。それが危機管理に強い組織を作る一番の近道です。