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専門コラム「指揮官の決断」 

No.141 民主主義の危機

危機管理上の問題として取り上げましょうか

 当コラムは危機管理を中心とする専門コラムであり、かつ、筆者が評論家ではなく危機管理のコンサルタントなので、あまり一般的に世の中の話題について論評することは避けたいと考えているところです。
 まして私は政治も政治家も大嫌いなので政治についてコメントするくらいならマムシに頬ずりした方がいいくらいに思っているのですが、しかし、わが国民主主義の危機ですので、危機管理のコンサルタントとしてコラムに取り上げようと思っています。
 
 さて、何をでしょうか?

丸山穂高議員糾弾決議

 先に北方領土に関し「解決するには戦争するしかない。」と発言して物議をかもした丸山穂高議員に対する糾弾決議が全会一致で可決されました。
 
 私はこの議員の主張に対し全く賛成はできません。
 領土を取り戻すための戦争をするなどというのは愚の骨頂であり、バカバカしくて議論する気にもなりません。
 
 しかし、彼の言っていることは国際関係論的には正しく、領土問題が平和的に解決されたことはありません。歴史的事実を指摘したら問責されるというのはどういうことなのでしょうか。
 
 その問題発言の後、北方領土視察における彼の低俗な人間性を示す行動が次々にマスコミをにぎわせましたが、それも糾弾されるようなことではないでしょう。
 品性の卑しさで糾弾されるのであれば、国会議員などほとんどいなくなってしまうはずですし、そもそも糾弾する資格のある国会議員が何人いるのかということになります。
 
 もし戦争云々の発言が憲法との兼ね合いで問題であるということで糾弾されるのであれば、これこそ民主主義の危機と言わねばなりません。

民主主義とは何だろう

 民主主義は多数決を正義とする政治体制ではありません。少数者の意見が尊重される政治体制です。
 少数者の意見に最大限の配慮を尽くし、徹底的に議論するからこそ多数意見の妥当性が確認されるのであって、少数者の見解を門前払いし、一刀両断に切り捨てるのは民主主義ではありません。
 たとえそれがどんなに極端な意見であったとしてもです。

 そもそもそれが極端な意見であるかどうかを決めるのもそれぞれの議員たちの主観であり、客観的基準があるわけではありません。
 私に言わせれば、今回の丸山議員の発言は確かに極めて危険な発言であり、この国を危うくしかねない主張ですが、しかし、同じように危険でこの国を危うくしかねない政治的見解が昭和の時代は堂々と国会で論議されていました。

 自衛隊違憲論です。

 非武装中立などという絵空事でこの国の将来を危うくしかねない議論が堂々とまかり通っていたことを思えば、丸山議員だけが糾弾されるのはいかがなものなのかです。
 
 当時、国会で非武装中立論を唱えた政治家の多くがその主張の根拠としたのがカントが『永遠平和のために』で主張した常備軍の廃止ですが、多分、これらの政治家はカントが常備軍の廃止を主張したことだけは聞きかじっていたのでしょうが、その常備軍の意味するところを理解しておらず、また同じ『永遠平和のために』のなかで自衛のための軍隊を持って訓練をすることは当然の権利であると明言していることを知らないのでしょう。

 つまり彼らはカントを読んでいないのです。
 
 それだけいい加減な主張が国会で堂々と論議され、この国の防衛力整備が極めていびつにならざるを得なくなっていったにもかかわらず、彼等が糾弾されないのはなぜでしょうか。

 きわめていびつで不毛な防衛論議が延々と繰り返され、与党ですら空母は持たないと言っていたにもかかわらず、最近ではニュースで「事実上の空母化」などと平気で報道されています。
 マスコミはなぜ反旗を掲げないのか、国会でなぜこれが議論されないのか、この国の民主主義とは何なのかを問いたいと思います。

憲法論だったとしたら

 
 話を丸山議員の問題に戻します。

 彼の主張はなぜ少数者の主張として扱われないのでしょうか。
 たとえ戦争に訴えてでも領土を取り戻すべきだ、それが主権国家というものだという主張が憲法に抵触するというのであれば、憲法を改正すべきだという議論は国会ではしてはならないということになりかねません。
 
 ちなみにドイツでは憲法に反対する自由は認められていません。
 実はドイツには憲法という名の基本法典がありません。
 東西に分裂したドイツがいずれ統一されたときに憲法典を作ろうという思いで、旧西ドイツが持っていた基本法典は「ボン基本法」と呼ばれ、統一ドイツができて数十年たつのにいまだにドイツ憲法は作られていないのですが、とにかくドイツではこの基本法典に反対する自由は認められていません。
 ナチスの台頭に対する反省からです。
 
 日本はそのような国家ではなく、どのような政治的主張でも言論の自由は保障されているはずです。
 まして国会議員は国民の代表として選挙において支持されて国会議員となったはずであり、それを糾弾できるのは選挙民だけのはずです。
 次回、丸山議員が再度立候補して当選したとすれば、国会は彼の意見を尊重しなければならず、糾弾決議を行ったこと自体が問題となるはずです。

民主主義は至上の価値ではない

 
 民主主義というのは所詮その程度のものです。
 私は当コラムで度々この国の民主主義を信じていないと述べていますが、民主主義というのは唯一絶対の最高の価値ではなく、ほかの体制に比べればましだというにすぎません。 
 あたかもそれが至上の価値であるかの如く民主主義を振りかざす野党議員は多いのですが、民主主義の価値などその程度のものでしかありません。
 
 馬鹿なことをいうなとおっしゃる方がおられれば、世界の歴史を勉強されることをお勧めします。

 ヒトラーは民主的な選挙でドイツ国民の圧倒的な支持を得てその政権を樹立したのです。だれがなんと言おうとそれは事実です。朝鮮労働党の選挙でキム君が満場一致で委員長になっているのとは違うのです。
 
 我が国にも似たような歴史があります。沖縄の基地問題に関し「最低でも県外」などと公言しておきながら、1年後に「結局辺野古しかない。」という結論を出した政党は、その後、中国の漁船に海保の巡視船が体当たりしても処罰もせず、日米の同盟関係は冷え切ってしまい、1000年に1度という大地震で原発が歴史上ない危機を迎えて、現場が火を噴いている最中に素人の首相が乗り込んで現場の邪魔をするという信じられない暴挙を行いました。
 これも極めて民主的な選挙で圧倒的に支持されて政権交代が行われて政権を取った政党でした。
 
 私がこの国の民主主義など信じないと述べ、民主主義の価値などせいぜい他よりはましかもしれない程度にしか認めない理由は以上です。
 
 しかし、そのほかの体制よりはましかもしれない程度の民主主義がこの度は崩壊の危機にあります。

のんびりした議論をしている状況ではないだろうが

 
 そのようなつまらない議論を国会でしている間にも、アジアでは異形の大国が南シナ海で国際法上の領土と主張できない岩を領土だとして埋めたてて人工島を3つ作り、それぞれに3000メートル級の滑走路を建設しています。
 当初、軍事的なものではまったくないと言っていたにもかかわらず、最近は我が国防衛のために必要な措置と平気で主張しています。スリランカに大金を貸し付けて返せないとなった瞬間にその港を他国に対して使わせず、自国の艦船及び商船のみにしか利用させないことを約束させたり、ジブチに港を建設したりしているのをこの国の国会議員はどう見ているのでしょうか。
 
 もっと身近な話では、北海道ではすでに山手線の内側の面積の11倍の土地がその国によって買われており、そこには貴重な水資源があるのを国会議員たちは知っているのでしょうか。
 
 オリンピック担当大臣になってもオリンピック憲章を読んだことがない間抜けな大臣には呆れましたが、しかし、個別の議員ではなく、政治家という存在自体に対する嫌悪感が日に日に強くなっていくのをどうにも止めることができません。

丸山議員糾弾決議文

 最後に問題としている糾弾決議文を記載して終わります。
 これが私たちが国政に送り込んだ代表たちが起案した文章だとすれば情けないくらい拙劣な文書であり、議院としての品格や格調がみじんも伝わってきません。
 まあ、政治家なんてそんなものでしょうか。

 
 議員丸山穂高君は「令和元年度第1回北方四島交流訪問事業」に参加した際、憲法の平和主義に反する発言をはじめ、議員としてあるまじき数々の暴言を繰り返し、事前の注意にも拘わらず、過剰に飲酒し泥酔の上、禁じられた外出を試みて、本件北方四島交流事業の円滑な実施を妨げる威力業務妨害とも言うべき行為を行い、わが国の国益を大きく損ない、本院の権威と品位を著しく失墜させたと言わざるを得ず、院として国会議員としての資格はないと断ぜざるを得ない。
 よって本院は、ここに丸山君を糾弾し、直ちに、自ら進退について判断するよう促すものである。
 右決議する。
 〈理由〉
 去る5月30日の議院運営委員会理事会における政府関係者の説明によれば、議員丸山穂高君は、四島在住ロシア人と日本国民との相互理解の増進を図り、もって領土問題の解決を含む平和条約締結問題の解決に寄与することを目的とする「令和元年度第1回北方四島交流訪問事業」、いわゆるビザなし交流事業に参加し、国後島を訪問した際、事前に事業の趣旨や注意事項について十分に知らされていたにも拘わらず、5月11日に、ホームビジット先のロシア人島民宅で過剰に飲酒し、宿舎である「友好の家」に戻った際、禁じられている外出を強く希望し、そのために、政府同行者に議員が外出しないよう監視させる業務を強いる結果になったほか、食堂内で、コップで机をたたき、大声を張り上げ、団長に対する報道関係者の取材を妨害し、団長に対して「戦争でこの島を取り返すことに賛成か」「戦争しないとどうしようもなくないか」などと信じ難い暴言を吐いた。その後も、他の団員ともみ合いになり、自室に戻った後、再び出て騒いで、職員が戻るように促す、ということを翌日午前1時まで続け、その際、「私は会期中は不逮捕特権で逮捕されない」と述べたり、およそ品位のかけらもない卑猥(ひわい)な言葉を発したりするなどの多大な迷惑行為を行い、翌日には団員たちから、最も重要なロシア人島民の方々との交流会への参加の自粛を求められ、参加しなかったとのことである。
 丸山君の行動は、一歩間違えば日本とロシアの重大な外交問題に発展しかねない問題行動であり、これまで関係者が営々と築き上げてきた北方領土問題の解決に向けた努力を一瞬にして無に帰せしめかねないものであり、国民の悲願である北方領土返還に向けた交渉に多大な影響を及ぼし、わが国の国益を大きく損なうものと言わざるを得ない。また、かかる常軌を逸した言動は、本件北方四島交流事業の円滑な実施を妨げる威力業務妨害とも言うべきものであり、その卑猥な言動に至っては、議員としてというよりも人間としての品位を疑わせるものである。
 本件事業は、内閣府交付金に基づく補助金を受けた北方四島交流北海道推進委員会の費用負担により実施されているものであり、本院から公式に派遣したものではないにせよ、丸山君は、沖縄および北方問題特別委員会の委員であるが故に、優先的に参加することができたものであり、他の団員からは、本院を代表して参加したものと受け止められており、また、その後の報道により、わが国憲法の基本的原則である平和主義の認識を欠き、およそ品位のかけらもない議員の存在を国内外に知らしめ、衝撃を与えた事実は否めず、本院の権威と品位を著しくおとしめる結果となったと言わざるを得ず、院として国会議員としての資格はないと断ぜざるを得ない。
 よって本院は、ここに丸山君を糾弾し、直ちに、自ら進退について判断するよう促すものである。
 以上が、本決議案を提出する理由である。