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専門コラム「指揮官の決断」

第218回 

第3波襲来???

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感染拡大がそんなにうれしいのかなぁ?

テレビがまたうれしそうに「感染の拡大に歯止めがかかりません!」と騒いでいます。これを受けて政府もつられて「感染拡大地域へのGoToトラベルの運用停止」などの方針を打ち出しました。

これは日本医師会会長が「経過や感染者が増えたタイミングなどを考えると、間違いなく十分に関与している」とGoToトラベルと最近の陽性判定者の増加の関係について言及したこと、またそれを受けて都医師会会長が「Go Toトラベルについて、国には中断するという決断をしていただきたい。医療サイドから一度止めたほうがいいと呼びかけたい」と述べたことなどに影響されたものと思います。

この医学界の代表者たちがこの類の発言をするとテレビは飛び上がって喜びますが、私たちはこれらの数字をどう解釈すればよいのでしょうか。

本当に拡大しているのか?

テレビが言う「感染者」とはPCR検査における陽性判定者であり、本来の意味の感染者ではないということは何度もお伝えしてきました。その陽性判定者ですが、たしかに11月4日現在の陽性判定者の移動平均が607人で、11月15日以降移動平均が1500人を超えています。しかし、PCR検査数も2万1千件から4万1千件に増えています。その結果、入院治療等を要する人数も増えていますが、これは日本の現在の規則では陽性判定されると原則的には隔離療養が求められるためです。そして重篤化する人数も日によってかなりデコボコしますので移動平均を取ると1日10名くらいだったのが20名近くに増えました。死亡者もデコボコしているので移動平均を取ると右肩上がりで、20人くらいになりました。

しかし、病院での死亡者を検査してコロナウイルスの陽性判定がされるとそれはコロナでの死亡者にカウントされるので、末期がんや心筋梗塞などの死者も相当数カウントされてしまっています。コロナウイルス感染による発症があったかどうかに関係なくコロナによる死亡とカウントされるのです。健常者がコロナウイルスのためだけで亡くなる場合、その原因は肺炎であるのが普通であり、発症していたのであればその他の基礎疾患の進行をコロナウイルスが早めた可能性はありますが、本来はガンや心筋梗塞の死亡者にカウントされるはずなのです。

医師会会長はグラフすら読むことができない

私は感染症の専門家ではないので数字しか解釈できませんが、日本医師会会長は簡単なグラフを見ることすらできないようです。「時期を経過や感染者が増えたタイミングなどを考えると、間違いなく十分に関与している」との発言ですが、このイベントは7月に始まり、すでに3000万人が利用しています。7月下旬に始まって以来、毎日の新規陽性判定者は9月初旬まで減り続けました。そしてそれ以後10月下旬まで横ばいを続けました。経過やタイミングを考えるならば、GoToトラベルが陽性判定者の減少に寄与したと考えるのが普通でしょう。相関関係からは明らかにそのように認めることができます。ただ、感染症の専門家ではない当オフィスでは因果関係は特定できません。

相関関係からタイミングを勘案するのであれば11月1日以降の中国等からの入国拒否を解除したことを指摘すべきでしょう。実際に北海道では中国人の陽性判定者が増えています。訪問先などを明記した活動計画書の提出などをすれば、2週間の待機が免除されることを考えれば、こちらを原因と考える方が自然かと考えます。

医師会会長は学者ではなく、医師としての手腕で就く地位でもなく、もっぱら政治的手腕で就任する地位でしょうから理論的な問題には関心が無いのかもしれませんが、政治的手腕によって就いた地位であれば、その社会的影響力の大きさを考えて発言すべきです。

東京都医師会長の発言も私には理解不能です。ニューヨーク州ではすでに60万人が感染し、3万4千人が亡くなっています。ピーク時には2万人が入院していました。一時小康状態を保ったニューヨークですが、最近はやはり増加傾向にあります。

東京都はニューヨーク州に比べると人口は三分の一ですが、これまでの死亡者は500人に達しておらず、重症者も12月1日現在で70人程度です。ニューヨークとは桁が二つ違うのです。もし、この勢いで来週には東京が医療崩壊するというのであれば、3月以降、東京都医師会はどのような対策を取ってきたのかが疑われるということになります。

さらに一人の感染者が何人に感染させるかを示す実効再生産数は11月14日以降下がり続け、12月1日現在全国で1.1、東京では1.0となっています。この数字が1を下回ると感染者は黙っていても縮減していきます。ちなみに4月7日にはこの数字は2.37でした。

メディアはこの数字については一切報道しませんので、統計学的な関心をもって情報を収集している者以外は知りません。

昨年のインフルエンザがどうなっていたのかメディアは知らないのだろうか

死亡者数も12月1日には全国で33人となっていますが、昨年1月頃のインフルエンザの死亡者は平均で毎日50人を超えていたはずです。この時、1月だけで1685人の方が亡くなりました。しかもこれはコロナ禍の死亡者とは異なり、医師がインフルエンザが直接の死因と認定した数字であり、インフルエンザが基礎疾患のある患者の病状の進行を早めて死に至った数字は入っていません。

しかし、昨年の正月から春にかけて、日本の社会は自粛などで大騒ぎしていたでしょうか。新しい年号が何になるのかで騒いでいたはずです。これもメディアは論及しません。

一方、平成15年に3万4千人強であった自殺者は年々減少していましたが、今年は7月以降増加を続け、11月には月間2000人を超えました。1か月でこのコロナ禍の全死亡者に並ぶ数となったのです。失業率と自殺者数のグラフは見事な相関関係を示すことは知られていますが、コロナ禍による失業によりもたらされる自殺者の方が遥かに重篤化の挙句亡くなる人数より多いのであり、重視すべきはこちらであるはずです。

医師会の怠慢でしょうが

もともと冬になればコロナはぶり返すおそれが高いと言われ続けてきたはずです。さらにはインフルエンザと一緒に流行したら大変なことになると歴史的事実を無視した指摘もされてきたはずです。それを都道府県知事や医師会会長が医療崩壊の危険を訴えるというのはどういうことなのでしょうか。この半年間、彼らは何もしてこなかったということなのでしょう。

インフルエンザと一緒に流行したらということが歴史的事実を無視したと述べたことには根拠があります。歴史的に二種類のパンデミックが同時に発生したことはほとんどありません。疑わしい事例がないわけではありませんが、二種類の強烈な感染力を持つウイルスが一緒に威力を発揮した事例は探すのが大変です。

ちなみに、今年11月のインフルエンザの患者は全国で50人でした。昨年の11月には1万5千人の患者が発生しています。今年のインフルエンザ患者数は去年の300分の1に過ぎないのです。

しかし、メディアや医師会は冬になれば感染症は勢いを取り戻すと警告を続け、かつインフルエンザと一緒に流行になったら大変だと騒ぎ続けていました。

それを警告し続けてきた医師会は、インフルエンザが流行していないにも関わらず医療崩壊の危機を訴えています。彼らはこの冬の危機を迎え撃つのに何の準備をしてきたのでしょうか。

さらには、9月10月頃の小康状態を保っていた頃、医師会が叫んでいたのは、コロナ専門病床を準備した病院の経営が大変だということです。コロナ専門病床に一般の患者を受け入れることができず、しかし、コロナ専用病床が利用されないので、そのために準備した設備や看護師の経費の負担が馬鹿にならないのだそうです。

ということであれば、重傷者が増えつつある現在、彼らはテレビカメラが見ていないところでは笑いが止まらないはずです。

にもかかわらず医療崩壊の危険を訴えているのは、更なる特別な奨励金や診療報酬を得たいからとしか思えません。

当コラムで申し上げたいのはたった一言です。

「つべこべ泣き言を言わず、淡々と自分の責任を果たせ。」