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専門コラム「指揮官の決断」

第404回 

南海トラフ地震 巨大地震注意情報発表 今こそ、危機管理を

カテゴリ:危機管理

巨大地震注意情報

8月8日、午後4時半すぎ、日向灘の深さ31キロを震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、気象庁は専門家による調査を行い、南海トラフ地震臨時情報を発表し、「巨大地震注意」を呼びかけています。

この南海トラフ地震臨時情報というのは、南海トラフ地震想定震源域においてM6.8以上の地震があったり、プレートで異常なスリップなどの現象を観測した場合、気象庁内で検討が行われ、臨時情報の発表がなされます。

最初に行われる発表は、「調査中」であり、その後に臨時情報が出されることを示唆します。その後、「警戒」「注意」「調査終了」のいずれかが発表されることになります。

注意情報をどうとらえるか

それでは、その「巨大地震注意」の臨時情報を得た私たちはどうすべきなのでしょうか。

南海トラフ地震の生起確率が向こう30年間で70~80%と言われて久しくなります。

この意味は、向こう30年間に南海トラフ地震と呼ばれる地震が生起する確率が非常に高いということです。

問題は、それがいつなのか、どの程度の規模なのかということですが、それは分かっていません。

明日かもしれないし、50年後かもしれないのです。また、東日本大震災のような大きな津波を引き起こす程度の地震になるのか、あるいはそのような大被害を出さないレベルに留まるのかも分かりません。

そう言われると、どのような備えをすればいいのか分からなくなりますよね。

非常用の食料などの備えについては、防災の専門家がテレビや雑誌、あるいはネット上で様々な発言をしていますので、自分たちにとって手を付けやすいヒントから実践していくことをお勧めします。

それはリスクマネジメントの世界であり、危機管理の世界とは異なるテーマを扱っています。

リスクマネジメントだけでは対応できない

リスクマネジメントは、予想される最悪の事態にいかに対応していくかが課題です。できるだけ正確に事態を予想し、その事態に直面してもしっかりと個人や組織を守り切ることがリスクマネジメントのテーマです。

一方の危機管理は、想定外の事態に直面した場合にもどう対応していくかが課題となります。

そうです。リスクマネジメントと危機管理は別物なのです。

リスクマネジメントは重要です。これをしっかりとしておかなければ、企業はいとも簡単に倒産に追い込まれてしまいます。

しかし、リスクマネジメントは、リスクを想定して対応するマネジメントですので、想定外の事態に対応することができません。

リスクは「危険性」であり、ある程度は覚悟しなければなりません。「ノーリスク」は「ノーリターン」だからです。何らかの利益を得ようとしたならば、ある程度のリスクは許容する必要があります。

しかし、「危険性」と「危機」は別物です。「危機」は取ってはなりません。

「危険性」はある程度想定して備えるべきものですが、「危機」は「いつ、どこで、何が」起きるかなかなか想定できません。

2019年に翌年がコロナ禍に襲われる年となることを想定した人はほとんどいないかと思います。

つまり、想定外の事態に対応しようとするのは「リスクマネジメント」ではなく、「クライシスマネジメント:危機管理」なのです。

この危機管理の考え方に近いのが「レジリエンス」という考え方です。この概念は少し分かりにくいかもしれませんが、究極的には「打たれ強さ」を鍛えておこうということになります。この考え方は極めて重要です。

興味のある方は、一般社団法人レジリエンス協会のウェブをご確認ください。

https://resilience-japan.org/

危機管理とは

当コラムは危機管理の専門コラムですので、「リスク:危険性」ではなく、「クライシス:危機」について議論します。

弊社では、危機管理とは「想定外の事態に毅然と対応し、危機の中に機会を見出して事業を躍進させるマネジメント」であると考えています。

「危機を機会に」「ピンチをチャンスに」というのは言い古された言い回しだとお考えの方もいらっしゃるでしょうし、多くの方は、「それができれば結構なことだけど、どうやったらできるの?」とお考えかと拝察いたします。

しかし、そのようなマネジメントを可能にするのが危機管理なのです。

リーマンショックや東日本大震災などの大きな経済変動を伴う事件では、多くの企業が倒産したり、先のコロナ禍でも多くの企業が苦しみました。

ここで、冷静にお考え下さい。

これらは社会全体を覆う大きな災害だったり、世界的な経済変動だったりします。

これを、「自分たちではどうあがいてもどうしようもない事態」と考えてしまうと、津波に呑み込まれるのを座して待つのと変わりなくなります。

「危機管理経:クライシスマネジメント」では、そのような事態を経営環境の変化ととらえます。

経営環境が変化したら、そこには危機もあれば機会もあるはずであるということは経験豊かな経営者の皆様には自明の理です。

危機管理を実践した事例

弊社のクライアントのレストランをご紹介しましょう。

このレストラン(2店を出店されていました。)の社長は、コロナ禍の初年度において従業員を解雇せずに別の業態の事業を始めて収益を何とか維持しました。そのため、持続化給付金をもらえなかったのですが、2年目にはその新たな事業も軌道に乗って収益を拡大できました。コロナ禍という情勢を冷静に分析した結果です。

そして、コロナ禍が終わった昨年からは、元のレストランサービスをコロナ禍以前と同様に再開しました。多くの競合が従業員の確保に苦戦する中、従業員を解雇しなかったのでレストランサービスのノウハウがそのまま残っていたのです。

さらに、コロナ禍で経営を支えていた新たな事業には、新人を採用して収益をさらに拡大させたため、結果的に昨年1年間の収益は、コロナ禍以前の2019年の2.3倍になったとのことです。

つまり、危機を機会に変えて事業を躍進させたのです。

この社長は、弊社のコンサルティングを5年前に受けておられ、コロナ禍が始まったときに、自分やスタッフたちはこの災害を乗り切れるはずという自信を持っていたとおっしゃっていました。

この社長は、見事に事態に毅然と対応され、危機の中に機会を見出し、事業を躍進させました。

特別なことはしていないそうです。弊社のコンサルティングで得た知見を基に、当たり前にやるべきことを淡々とやっていただけだとおっしゃっています。

本来なすべきことを淡々と行うのが危機管理

そうなんです。危機管理とは当たり前のことを淡々とやっていくことなのです。

その当たり前のことが、日常の業務の中でいつしか忘れ去られ、本来のマネジメントが問われる事態に直面して呆然としてしまっているのが現実です。

何から手を付けるべきか、戸惑っていらっしゃる経営者の方々は弊社にご相談ください。

弊社のウェブサイトには、モデルケースとしていくつかのコンサルティング・パッケージを準備しておりますが、それぞれの会社様の実情に合わせたコンサルティングを手作りしてまいります。

コロナ禍が明けてホッとしている経営者の皆様に襲い掛かる次の危機に対し、少しでも多くの企業に平然と乗り越えて、痛めつけられている日本経済の再建にご尽力いただきたいと願っています。