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専門コラム「指揮官の決断」

第454回 

教訓を生かせ:コロナ禍から何を学ぶか その3

カテゴリ:危機管理

承前

新年にあたり、コロナ禍の事例から、危機管理と言うのはどうとらえればいいのか、その教訓を導き出そうという試みを続けています。

したがって今回も、コロナ禍を例にとって、教訓の導き出し方について考えます。

前回は、コロナ禍において、ほぼ連日テレビに出ていた専門家と称する連中の素質に言及しました。

本来、前代未聞の感染症が流行して、緊急事態宣言などが出され、飲食店に営業自粛が要請されるなどという事態において、感染症の専門家というのは火を噴いているはずなのに、ほぼ連日のようにテレビに出続けていた専門家たちがいたことに筆者は疑問を抱き、彼らが致死率すら満足に計算できない素人であることに触れました。

彼らが何で連日テレビに出演していたかと言えば、視聴率を稼ぎたいテレビが、視聴者の不安を煽るために必要な見解を出してくれるからです。

実は、筆者のところにも取材がありました。

曰く、「こういう質問をしますから、こういう方向でお答えください。それを裏付ける資料をご準備ください。」というものでした。

方向性が違うので、そのような答えはできない旨応えると、「せっかくテレビに出してやろうとしているのに、何なんだその態度は。」という捨て台詞です。

テレビに出続けた専門家たちは、そのようなメディアの要請にしっかりと応えた専門家なのでしょう。

つまり、テレビに出てくる専門家というのは、そういう連中が多いことも含んで観る必要があります。それがメディアリタラシーというものでしょう。

全てがそうだと言っているのではない、しかし・・・

かつてNHKが富士山噴火についての番組を作った際、NHKは富士山が噴火したらどれだけ酷い被害が出るかについての解説を行ったあげく、しかし、富士山の噴火には前兆があるので、今パニックになる必要はないと結んだのですが、この時対応した当時の噴火予知連絡会の代表は、その直後に、「噴火に前兆はない、と散々言ったのに・・・」と怒っていました。

つまり、メディアは専門家からしっかりと意見を聴取していても、それを歪曲したり、切り取って反対の見解にしたりすることは常套手段として行っているのでしょう。

メディアに出てくる専門家の見解と言うのは、そういうものだと理解しておくことが必要です。

専門家のように見えるがそうでない人たち

一方で、専門家ではないものの、その道の権威者に見える人たちもいます。

コロナ禍においては、日本医師会長がそうでした。

GoToトラベル事業が始まった頃、東京大学の研究者チームが、この制度を利用した人としなかった人の新型コロナウィルスのPCR検査結果について研究して論文をアップしたことがあります。

これを共同通信が掴んで、GoToトラベルを利用した人の感染率が高いことが統計学的に証明されたと配信し、新聞・テレビが一斉に報じたことがあります。

中川医師会長はそれを受けて、GoToトラベル事業とコロナ感染の時期的に言ってもその因果関係は明らかだとしてGoToトラベル事業の中止を訴えました。

その結果、同事業は中止となりました。

筆者たちは、その前の西浦教授の8割人出を減らさないと数十万人が死亡するという論文が、医学論文ではあっても、ある程度理解できたことから、この論文も読んでみようと思い立ち、探してみました。結局、エール大学の健康科学に関する査読前の論文がアップされているサイトにあることが分かり、ダウンロードしてみました。

その結果分かったのは、共同通信の誤報であったということです。

統計学的に証明するためには、因果関係と相関関係が立証される必要があるのですが、この論文では相関関係だけは説明されていますが、因果関係が証明されていませんでした。研究者チームもそのことを自覚しており、論文中で統計学的に証明したと言っていないのです。だから、表題も「関連性」という表現になっていました。

この論文は、相関関係を説明しており、それなりに価値のある論文だったと思っています。しかし、因果関係が証明されていないので、GoToトラベル事業を中止する根拠とはならないはずなのです。

共同通信の記者は、英語も読めず、統計学の基本も知らずにこの記事を書いたものと観られます。また新聞やテレビは、この論文の原文をチェックもせずに、コピー&ペーストで報道したようです。

筆者たちがこの論文をチェックすることを思い立ったのは、このGoToトラベル事業がPCR検査結果に大きな影響を与えるとは考えていなかったからです。

万全の準備をして、参加資格を認定されたホテルや旅館に、家族や恋人同士で泊まりに行って、彼等だけで行動し、往復も車かマスクをした鉄道などでの移動ですから、感染の広がりようが無いだろうと思っていたのです。

その中止を主張した中川医師会長はホテルで自民党議員の政治資金パーティを開いていました。記者から質問された会長は、「我々医師はワクチンを摂取しているし、会場のホテルは万全の態勢を準備していた。」と言い訳したのですが、医療関係者に優先的にワクチン接種をさせたのは政治資金パーティーを開かせるためではないし、GoToトラベル参加ホテル・旅館は全て多額の費用をかけて準備していたのです。

医師会長も新聞記事に躍らせられただけだったのでしょう。

中止の結果どうなったのでしょうか。

GoToトラベルは中止になりましたが、GoToイートが中止にならなかったため、旅行に行けなくなった人々が飲みに出かけ、結果的に感染者は増えることになりました。

医師会長というのは、医学的な能力で選任されるのではなく、政治力で選任されるのであり、感染症の推移を見守る能力は極めて低かったとしか考えられません。論文を読む能力がなかったのでしょう。

したがって、このような一見専門家に見える人たちの言うことを真に受けてはならないということです。この当時の医師会長などは、感染症に関して、その知識や能力が一般人よりも低かったのですから。

メディアを観たら、嘘つきと思え

テレビで観る専門家も、その発言には何らかの裏があることを考える必要があります。どこかの利益を代表していたり、個人的にテレビに出続けたいので局の言いなりに主張していたりするからです。

それを見極めるのは非常に難しいのですが、信じる前に立ち止まって自分の頭で考えるという態度が必要です。

筆者は、テレビの報道は基本的に信じず、まず疑うことから入る習慣が身についています。これは不幸なことです。素直に番組を観て、感動したりすることができないからです。

しかし、平成・令和のテレビや新聞の出鱈目さ加減を見てきたので、この連中は噓つきだという思いしか浮かんできません。

感動的なシーンは「やらせ」で作られ、データはメイキングですし、ファクトチェックは行われず、ディレクターの言いなりになるコメンテーターしか起用されません。

そんなテレビを信じろという方が無理だと思っています。