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専門コラム「指揮官の決断」

第477回 

階級呼称の変更

カテゴリ:危機管理

コラムかメールマガジンか

今回のテーマは、コラムに書くべきか、メールマガジンに書くべきかを悩んだテーマです。

悩んだ挙句、やはり危機管理の問題として捉えることにしました。

何故危機管理の問題とするのかは次回に申し上げます。

閣議決定

4月24日、政府は自衛隊幹部の階級の呼称を変更することを決めたそうです。

各自衛隊の幕僚長は大将、それ以外の将官は中将、少将、佐官は大佐、中佐、少佐、尉官は大尉、中尉、少尉で、准尉以下の階級はそのままだそうです。

理由とは国民から1佐と3尉のどちらが高位なのか分かりにくいということだそうです。

そこで、諸外国の軍隊に準じた国際標準の呼称にするということだそうです。

筆者もかつて海上自衛隊の制服を着ていた際に、ある方に「林1佐です」と自己紹介したら「1佐とはなんだ。君は大佐なんだよ」と言われたことがあります。

この方は議員ではありませんでしたが、当時の自民党議員にはそのような方がたくさんいました。

1等海佐という呼称ではなく、大佐という呼称がワールドスタンダードだというのです。

多分、今回の呼称の変更は、各幕の意見を徴したうえで決定したのでしょうから、現役の諸君がそう思っているのであれば仕方ないことなのですが、筆者は大反対です。

どちらが高位か分からない?

まず、1等海佐と2等海尉のどちらが高位なのか分からぬという奴は大佐と中尉にしても理解できないでしょうから、そんな奴に分からせるための呼称変更は必要ありません。自衛隊の階級制度を理解させればいいだけです。

海上保安官の一等海上保安監と一等海上保安正のどちらが偉いか理解している人の方が少ないでしょうし、消防官の消防司監と消防正監のどちらが偉いかなど、まずお分かりの方はいないかと思います。そんなものです。

ちなみに、現在の自衛隊の階級呼称は世界の軍隊の中では最も分かりやすい呼称です。

米海軍の例を示しましょう。

海軍士官を下から挙げていくと次のようになります。

ドイツ語、フランス語も同様です。

またそれらの国々では陸軍と海軍では階級呼称が違います。

例えば、米海軍で少佐と言われるのは、Lieutenant Commanderですが、米陸軍ではMajorです。

ある時、米国海兵隊の中佐に「海軍の大佐と海兵隊の大尉と君らはどう呼び分けるんだ?」と訊いたことがあります。

彼は「そんなの簡単だ。俺がCaptain, Good morning sirと言ったら、相手は海軍だ。Hey you, captain と呼びつけたら、相手は海兵隊だ」と教えてくれましたが、英語では大中小でも数字でもないので分かりにくいかもしれません。

しかし、米国や英国の人々は、軍人の階級が分からぬ非常識な人々ではないので、問題は生じていません。

まともな文明国で、軍人の階級が分からないのは日本くらいのものでしょう。

階級呼称に国際標準なんかない

確かに、当時の筆者の1等海佐という階級は、旧軍では「海軍大佐」相当でしょう。しかし、その呼称が世界標準だという認識は誤りです。

旧軍がそうであり、日本語で外国の軍人を呼ぶ際に、大佐とか中佐とか言ったり、外国の映画にそのような字幕を付けているにすぎません。

SNSの中には、自衛官が海外で諸外国の軍人と話をする際に、自分の階級を説明するのに苦労していると述べている者がいますが、そのSNSを発信しているのは、海外に行ったことのある自衛官ではなく、その実情をまったく知らない奴です。

少なくとも海上自衛隊では誰も苦労していません。その国の階級呼称や英語の階級呼称を使うからです。

筆者は自衛官として米国駐在経験があり、着任時は一等海尉でした。

名刺の表は1等海尉と印刷していましたが、裏の英文ではLieutenant,と綴っていました。

途中で、3等海佐に昇任したので、名刺はLieutenant Commanderに書き換え、オフィスでは、私を” Lieutenant ” と呼んでいた人たちが、”Commander”と呼ぶようになりました。

米国ではLieutenant Commanderに呼び掛ける時には、他に本当のCommanderがいない時には”Commander” と呼びかけるのが礼儀のようです。

ワールドスタンダードと言いますが、世界中で「大佐」「中佐」「少佐」「大尉」「中尉」「少尉」という階級呼称を用いているのは筆者の知る限り、北朝鮮軍だけです。

なぜ、日本の自衛隊が 北朝鮮軍の階級呼称を用いなければならないのか理解できません。

英語ではCaptain Hayashi と名乗っていましたし、ドイツ海軍ではKapitän Hayashi, Japanische Marine と自己紹介していました。それで何の不都合もありませんでした。

階級呼称に世界標準などありません。

しかも「君は大佐なんだよ」と言った方は「タイサ」と発音されました。これは間違いです。これは陸軍の呼称であり、帝国海軍は「ダイサ」と呼んでいました。海軍では「大尉」も「ダイイ」と發音していました。

大将だけは「タイショウ」と呼ばれました。日本にはありませんでしたが、代将(Commodore)という階級がある国があり、紛らわしいからです。

いずれにせよ、大佐がワールドスタンダードだという認識は誤りで、それは北朝鮮軍の呼称にすぎません。

国会議員には、現実を知らず、ノスタルジーだけで語る人がたくさんいて困ります。

自衛隊を巡る問題は、実はそんなところにはありません。

そこで、この問題をメールマガジンではなく、専門コラムで取り上げた次第です。

この問題は、この国の危機管理の問題と直轄しています。

この問題は大きすぎ、当コラムでは長くなりすぎますので、次回とさせて頂きます。

正直な気持ちとしては、階級呼称など、部外者は余計なことを考えずにそっとしておいてくれ、と思います。