専門コラム「指揮官の決断」
第225回危機の迎え撃ち方 ワクチン接種でどうなる?
誰か指摘してくれないかなぁ
いい加減に誰か言い出さないかなと思っているんですが、メディアでは誰も言い出さないようなので、仕方なく当コラムで取り上げることにします。
当コラムは何度も申し上げているとおり、危機管理の専門コラムであって、この度の新型コロナ騒ぎのようなメディアが作り出したような低レベルの話にいつまでも付き合うつもりもないのですが、メディアの存在そのものが危機になりつつあるので致し方ありません。
何を憂いているのか
日本がこのままワクチン接種が始まったら大変なことになるのではないかということです。
当コラムは医療行政や感染症対策などを専門としているわけではないので、この危惧が根拠のないものであることを祈るばかりですが、5月以降、一般の方々にワクチン接種が始まったら、今度は本当に医療崩壊が起きるかと心配しています。
何故か?
まず、現状がどうなっているのかを眺めます。
普通の病気では、人は体調が悪くなって尋常ではないと思うようになると病院に行って診察を受けます。そして診察を受けた人で診断を分類して、その病気に罹患している人数を計算します。
病気の原因の検査も症状のある人に対して行います。例外はかつての結核予防法により小学校で行われていたツベルクリン反応検査でした。
これは全児童対象に結核菌の検査を行い、陰性であると結核に感染して重篤化する怖れがあるのでBCG接種ということが行われました。しかし、結核予防法の改正によりこれも行われなくなりました。
PCR検査の結果の理解が間違い
しかし新型コロナウイルスについては、当初は発症して医師が診断して疑わしいと判断した患者に対してPCR検査を行っていたのですが、これをやたら増やすべきだという世論に屈して症状のない人にも検査をしています。
このことがPCR検査の精度を考えた場合、ほとんど意味がなく、また受け入れ側の医療体制を考慮するとむしろやってはならないと当コラムが極めて簡単な数式を用いて指摘したのは昨年の4月上旬でした。(専門コラム「指揮官の決断」第184回 論理性の問題:PCR検査を無駄に行ってはならない理由 https://aegis-cms.co.jp/1947 )
そのPCR検査の結果の理解にも大きな問題があります。
感染症の常識でありますが、「感染」というのは菌またはウイルスが体内に入り込んで、ターゲットになる臓器にたどり着き、そこで寄生・増殖が始まっている状態を指します。
ところがPCR検査ではこの感染が始まっているかどうかは分かりません。のどの粘膜や唾液などから採取した検体を培養して新型コロナと同じ配列の遺伝子を持ったウイルスがほんの少しでも発見されれば「陽性」と判定しますが、それだけです。ウイルスの残骸のようなものがへばりついていただけでも陽性です。
人は基本的に免疫作用を持っていますので、少量のウイルスは排除されて感染に至りません。つまり陽性と感染はまったく異なる状態なのに、これをテレビは感染と表現するのです。普通には病気と認定されない人々を病人に仕立てているのです。
それだけでもテレビ報道が異常であることが分かります。
PCR検査の方法自体が異常
さらにそのPCR検査自体も日本では異常な方法で行われています。
検体にある温度を与えて培養するプロセスを何度か繰り返して検査を行うのですが、そのサイクル数をCt値と呼びます。
感染を抑え込んでいると評価されている台湾の検査におけるCt値は35だと言われています。世界的には適正値は30~34だという論文が多いようです。この値が大きくなればなるほど検出されるウイルス数は膨大なものになりますので、陽性判定者数を比較する場合には本来はこのCt値を考慮しなければなりません。最近の論文では35以上は無意味とするものが多いそうです。
日本はというと実に45というサイクル数を使用しています。これを台湾並みに35に設定すれば、直感的に陽性判定者数は40%くらい減るのではないかと思います。
このCt値を28くらいまでに小さくすれば、本当に感染力のあるウイルスのみが検出されてくるのですが、大きくすると残骸でも検出して陽性と判定してしまいます。不安を煽りたいメディアにとっては好都合です。
さらに問題なのは、この陽性判定者が増えることを社会的免疫が獲得されつつあると解釈せずに他人に感染させる恐れのある人が増えていると考えることです。
結核で毎年3000人の方が亡くなっているのに社会は結核に怯えもせず自粛もしないのは、社会的な免疫が獲得されているからです。結核菌の検査を実施すれば、日本国民の6割以上は陽性判定されるはずです。この場合、コロナと同じ解釈をしたら、今の規則体系では7000万人が隔離されることになります。
インフルエンザでは毎年1000万人くらいの患者が出ると言われます。これは発症して病院に診察に訪れた人の数ですから、自宅で解熱剤などを服用して直してしまった人を含みません。感染しても発症しなかった人数、陽性となっても感染に至らなかった人数を加えると実に3000万人程度がインフルエンザのウイルスを体内に持つと言われていますが、インフルエンザでの緊急事態宣言など出されたことはありません。しかし、今回は30万人の陽性判定者で宣言が出されているのです。
死亡者もインフルエンザでは毎年3000人、多い年では1万人を超える死者が出ています。これは医師がインフルエンザで死亡したと診断した人数です。ところが新型コロナの場合は亡くなった時にウイルスが検出されるとコロナ死とカウントされます。
これは巷間言われている「超過死亡」ですらありません。「超過死亡」数というのであれば、コロナウイルスに感染して発症し、それが原因でもともと持っていた基礎疾患が悪化して亡くなったということが言えなければなりませんが、現在のコロナ死亡者の判定は末期癌で亡くなったのが明らかであっても、ウイルスが検出されていればコロナ死とカウントしています。
つまり、重症者数・死亡者数ともにコロナが飛びぬけて恐ろしい感染症であるということを示すものは何もありません。
テレビが感染者数として発表する陽性判定者数で比べれば結核の数百分の一ですし、発症する人の数で比べれば例年のインフルエンザの100分の1以下です。死亡者数はインフルエンザが大流行した年の半分以下です。いずれも自粛などしていません。
ワクチン接種で医療が崩壊する理由
これが現在の日本における新型コロナ騒動の実態です。
それではなぜ5月以降に一般人のワクチン接種が始まると医療が崩壊すると考えているのでしょうか。
ワクチンの接種が行われたら緊急事態宣言を出して自粛を要請できなくなるでしょう。
社会ももう自粛しないでいいと認識するはずです。
ところが日本で接種される予定のワクチンは発症を防ぐタイプのワクチンです。つまり感染を防ぐワクチンではなく、感染しても発症させないワクチンであり、これはインフルエンザワクチンと同様です。
つまり、ワクチンを接種することにより人は発症しなくなり、重篤化も死に至ることも防ぐことができるのですが、感染を防ぐことができるわけではありません。まして陽性判定をされなくなるわけでもありません。
むしろ経済活動が活発化することにより陽性判定を受ける人数は増加するでしょう。
しかし今の規則のままであれば、それらの人々は隔離されなければなりません。しかも2類のままであれば、専用病棟が大量に必要になります。
コロナ病床数のトリック
問題はその病床数です。
昨年の11月頃から医療崩壊の危機がテレビで騒がれ始めました。
当時、コロナ専用病床の使用率は50%を上回り始めていました。
私は恥ずかしながら最初にこの事態を誤って認識していました。
感染者の拡大に歯止めがかからないというテレビ報道にもかかわらず専用病床の使用率が50%を上回る程度であれば、せっかく専用病床を準備した病院の経営は大変だろうな、このままでは確かに崩壊せざるを得ないのかもしれないなという認識だったのです。
まともな経営者であれば予定した売り上げの50%しか達成しなければ危機感を抱くのは当然です。
もし航空会社であれば、座席が50%強しか埋まらない路線なら廃止を検討するでしょう。ホテルだって客室の稼働率が50%で成り立つのは、バンケットで儲けることのできるシティホテルだけでしょう。
ところがテレビが騒いでいるのはベッド数が足りないということだったのです。耳を疑いました。「50%の使用で不足するって何だ?」
私は神奈川県民なので神奈川県の対策について関心を持っていました。
神奈川県知事は公約として未病という概念を取り上げた人です。
つまり医療にはとりわけ関心のある知事であることが売りなのです。
神奈川県知事は早々にもし大規模災害が神奈川県を襲ったら大変ということで、避難所での感染を防ぐためのパーティションなどを早々に準備して記者に公開していました。
そして専用病床も〇×床準備し、逐次増やしていくと記者会見していました。さすがだなと思っていました。
ところが最近、その病床がひっ迫しているとことあるごとに泣き言を述べ、1月4日はテレビで辛坊治郎氏から神奈川県の全部のベッド数とコロナに使われているベッド数を尋ねられて即答できず、「ベッドの数ではなく、医療スタッフの数もあり・・・」と逃げを打ったのですが追及され、ついに全ベッド数は把握していないと白状してしまいました。
もしさらに訊かれたらベッド数だけでなく医療スタッフの数も知らなかったでしょう。
つまり、ベッドがいくつあるのかも知らず「医療崩壊」だとわめいていたのです。
びっくりするのはそれだけではありません。
知事はコロナで準備したベッド数の30%を超えたところだが、即応のベッド数で言えば70%を超えており、現場の声は悲痛だと言い始めたのです。
私に言わせれば稼働率70%で悲鳴を上げるというのが、どういうことなのかまったく理解できません。採算が取れないというならまだ理解のしようもあります。確か、国産初の旅客機であるYS11は70%の乗客では採算が取れなかったはずです。
そして私はコロナ病床に準備した病床数と即応病床数という二つの数え方があることを初めて知りました。
要するに医療スタッフも待機していて即受け入れが可能な病床数とコロナ専用病床数というのは実は違うというのです。私たち県民は騙されていたということです。
航空会社が新型機を100機調達して、パイロットや整備員を30機分しか準備していなかったら社長は株主総会で吊るしあげられるはずです。
医師会の説明ではコロナ専用ベッドが常に受け入れ可能ということではないと平気な顔です。
この連中の他人事のようなもの言いには腹が立ちます。この事態を真剣に何が何でも乗り切ろうという気概が全く見えません。
ベッドを買い足して別の病室に運び込んだだけで準備した数にカウントして報告していたのです。「仏作って魂入れず」というのはこのことです。
彼らが医療崩壊を叫ぶのも更なる補助金欲しさでしかないのでしょう。
コロナ騒ぎの実態は
つまり構図はこうです。
テレビは病気でも何でもない人々を病人扱いすることにより不安を煽って視聴率を稼ぎ、自治体や医師会は必死に準備しているように見せかけながらなにもせずに責任をGoToトラベルと飲食業に転嫁し、返す刀で国からの補助金を得ようとしているということです。
それがワクチン接種で拍車がかかるということです。
唯一救われそうな要因は、一般人の接種開始が5月になる予定ということです。この頃は黙っていても陽性判定者は少なくなります。暖かくなってウイルスの感染力が弱くなるからです。昨年の緊急事態宣言が出された後、急激に感染者が減っていったのは、宣言によって外出者が大幅に減少したことにもよりますが、宣言など出さなくてもこの時期は減少したはずです。実際に宣言を出した日はピークアウトを過ぎており、減少が始まっていたことが分かっています。
しかし、ワクチン接種で人々が自省的な行動を取らなくなった場合の影響は無視できません。陽性判定者が増えるということは社会が免疫を獲得しているということなので本当は問題ないのですが、またテレビに大騒ぎする材料を与えかねないのが心配です。
医療崩壊を防ぐには
テレビが感染者と陽性判定者の違いを理解して報道し、現在の感染症の分類を2類を5塁に変更し、Ct値を35に改めたうえ、このウイルスを正しく怖れることにより騒ぎを急速に終息させることができるはずです。つまり、ウイルスを根絶するというウイルス学上不可能な試みを行うのではなく、例年のインフルエンザや結核のように正しく怖れる態勢とすることが必要です。
しかし必要なのはそれだけです。考え方を変えるだけでいいはずです。
全ての議論は、そのようなまともな議論ができる態勢をとって始めないといびつなまま進んでしまいます。