専門コラム「指揮官の決断」
第438回どこまで○×なんだろう

申し訳ございません
今回はシビリアンコントロールの逆機能について、さらに深堀するというお約束を前回いたしましたが、参議院議員選挙前という特殊事情により、急遽内容を変えてお送りいたします。
かなり政治的内容になってしまい、徹底的に政治嫌いな筆者のお送りしたい内容ではありませんが、危機管理の専門コラムとして黙して語らないこともできかねると考えて内容を変更させて頂きました。
シビリアンコントロールの逆機能に関しては近日中にお送りします。
どこまで○×なのだろうか
現首相のある討論番組での発言です。
「消費税と所得税、法人税の違いは、景気の上がり下がりに左右されない、安定的な財源ということなのであってね、これを下げるということは当面考えておりません。」
財政学の授業を聴かれたことのある皆様には自明の理なのですが、大学の財政学の試験でこの論旨で答案を書いたら単位はもらえません。消費税は、ヒートアップした景気に水を差し、落ち込んでいる景気に活力を与える調整を担う税であり、景気の上がり下がりに左右されないのではなく、景気の極端な上がり下がりを抑える調整役として重要な税なのです。これを財源だと思っているのは大○×野郎です。
筆者は大学で教える原理原則がそのまま実社会での原理原則になると考えるほど初心ではありません。(若い方は字を知らないかもしれませんが、「うぶ」と読みます。)
経済学は専門ではありませんが、統計は必要あって少し勉強しましたので、グラフを見て、なんとなく全体のトレンドを理解するくらいはできます。(もちろんできない場合もあります。)その程度の知識でも、消費税を3%から5%、続いて8%、10%の増税を行った結果、この国のGDPがどうなったかを理解することはできます。
東日本大震災で当時の民主党政権が復興財源にするためと言って3%から5%への60%以上の大増税をやってこの国の経済成長にストップをかけ、引き続きデフレの最中に自民党が8%、さらに10%への増税を行い、さらにコロナ禍明けにも適切な投資を行わずに緊縮財政を標榜し続けたため、G7国最低の経済状況になったことくらいは、まともにグラフを見る眼があればよほどの○×でなければ分かります。この30年間、景気が悪くなると消費税率を上げるという愚かな政策を繰り返してきたのは、この財政学の基本を理解できない○×が政権を担当してきたからです。この誤りに気付いて素直に国民に謝罪したのは橋本龍太郎元首相だけです。
現政権のトップは前述のような議論を平気でしますし、現政権政党の幹事長の耄碌老人は消費税は守り抜くとして、消費税さえ守れれば日本は潰れても構わぬ覚悟で、中国詣でをしてはパンダを送ってくれと頼みこんでいます。
官房長官もこの簡単な理屈を全くできずにいます。(ちなみに、筆者と官房長官は苗字は一緒ですが、筆者のルーツは土佐であり、官房長官は長州で、まったくの偶然の一致にすぎません。少なくともわが一族は薄汚い政治家を輩出するような一族ではありません。)
なぜ、財政学の基本中の基本である簡単な事実を理解できないのか、この連中の○×さ加減は底が知れません。
ちなみに、現日銀総裁は東京大学経済学部の教授だったそうですが、税の役割は理解していると見えて、インフレの時には利上げをするんだということだけは分かっているようです。ところが、現状をデフレを克服してインフレになったと理解しているあたりに、彼に経済学を教わった東大出身者が経済を理解できないでいる理由がありそうです。こういう状態を経済学では「スタグフレーション」と呼ぶことは1年生でも理解しているはずなのですが、東京大学ではそのように教えていないのでしょう。
「ギリシャより酷い」はある意味で正しい
たしかにこの首相は「日本の財政は酷い、ギリシャより悪い。」と発言し物議を呼びました。当コラムでも、この○×は経済の基礎がまったく分かっていないと批判していますが、奴がギリシャより悪いと言った根拠としては国債の政府債務残高とGDPの比率を比べるという財政学的には何の意味もないものだったのですが、しかし、経済学的議論から離れると、この政権代表が言ったことはある意味で正しいことも事実です。
ギリシャはデフォルトの危機から必死に立て直しを図っています。何もしておらず、というよりも必死にGDPの成長を抑え込む政策を取り続ける日本の方が酷いことは事実です。現首相がそのような意味で「ギリシャよりも酷い。」と発言したなら立派なのですが・・・。自分の経済政策がギリシャよりも酷いということですからね。
首相の見上げた覚悟
7月1日、岩屋外相はルビオ米国務長官との会談で、トランプ政権が同盟国の防衛費増額を求めていることに関し、「日本自身の判断で防衛力の抜本的強化を進めていく」と伝達したと明らかにしています。米国はNATOには5% 日本には3.5%を要求しています。
中国に媚びへつらう外務大臣としては、対中配慮でこう発言しなければならなかったのでしょう。
ところが、首相は与野党党首討論で、「日本の防衛費は誰かに言われて決めるものではなく、日本自身が決める」と発言しました。
その挙句、参院選挙の応援演説で、日米の関税問題に関し、「国益を懸けた戦いだ。なめられてたまるか」と述べ、安易に妥協しない姿勢を強調しました。そして「たとえ同盟国であっても、言うべきことは正々堂々と言う。」と述べました。
今回のコラムの表題は、この発言に対して捧げるものですが、一国の首相として堂々たる覚悟ではあります。
一方で・・・
ところが、現首相にはトランプ大統領にこれを直接言う度胸はありません。遠吠えしかできない小心者です。ローカルで強気に吼えることはできても、直接会うことすら避けています。
自分で交渉に行く代わりに太鼓持ちのような担当大臣を8回も送り、送られた担当大臣もがアポも取れず、米国に行っても会ってもらえなくて電話で会談して帰ってくるような始末です。
言うべき時はしっかりと言う、たとえ同盟国であっても正々堂々と戦うということは、やるべき時は、仮想敵国とは、決死の覚悟で戦う覚悟があるということですから、尖閣有事に際しては、寄せ来る敵と自衛隊だけで戦う覚悟があるものと見えます。
「日本の防衛費は誰かに言われて決めるものではなく、日本自身が決める」「舐められてたまるか。」という発言を、筆者がトランプ大統領なら、あっさりと「じゃぁ日本の防衛は日本が独自にやるんだね。」と言って安保条約破棄を通告します。
現政権なら「それじゃ、中国と同盟国になろう」と言い出しかねません。
この国を中国に差し出すことにより、自分が傀儡政権のトップになることができれば、このまま座して政権を失うよりもいいと考えるような奴らが首脳陣ですからね。
自衛隊は日本の代わりに米国が日本を守ってくれると信じるほど○×な集団ではありません。米国が動き出すためには時間もかかるし、それなりの理由が必要です。
ウクライナに核兵器を放棄させるためにアメリカ・イギリス・ロシアとの間で取り交わしたブタペスト覚書をロシアが踏みにじったことにアメリカは動かなかったことを知っています。筆者は、自衛隊の高級幹部たちが、ウクライナ戦争への米国の態度を見て、ある覚悟を固めたことを知っています。
彼らは米国海兵隊に血を流させるためには、まず自分たちが相当量の出血をしなければならないことを熟知しています。
であるから、長崎県相浦駐屯地で壮絶な訓練を続けている水陸起動団は自分たちが先兵として全滅する覚悟もしているでしょうし、筆者が司令部幕僚として勤務していた佐世保を母港とする第二護衛隊群も自分たちがまず海上自衛隊部隊の先陣として飛び出すという覚悟をしていました。
どの部隊も、米軍が来援の必要性を感じて、来援に来るまでなんとか自衛隊だけで持ちこたえようとして猛訓練に明け暮れているのです。
ところが、その自衛隊の最高指揮官が、米国に「舐めるな。自分たちで決める。」と言い切ったのです。つまり、自衛隊は米国の来援なしに戦い続けなければなりません。
隊員たちは鍛えられていますし、政権トップのような○×はいませんので耐えるでしょう。
問題は継戦能力です。弾やミサイルの在庫、修理用の部品の在庫が極端に少ないのです。
GDP比で1%だったのが2%に引き上げられたのはいいのですが、これも米国からの買い物を強要されただけのことで、後方支援に充てられたのはほんのわずかです。
自衛隊が戦うために最も必要としているのは、武器弾薬、燃料、修理用部品と人です。
なぜか小さい政府がいいという幻想にとらわれたこの国は、公務員の削減に必死に取り組んできました。竹中平蔵の暗示に見事に引っかかったのです。
その結果、本来公務員がやるべき仕事を派遣職員にやらせ、彼が経営する人材派遣会社に大儲けさせました。そして、人を一番たくさん必要としていた自衛隊に眼が付けられ、海上自衛隊に関しては、船は大型化するのに定員はそれに応じて増えしてもらえず、ガランとした船ばかりになりました。
「言うべきことは、たとえ同盟国であっても、正々堂々と言う」というのは、よほどの覚悟がなければ言えないはずでが、こいつにそんな覚悟があるはずはありません。
米国の支援なしに戦うことの困難さを理解しているNATO各国は5%の要求を呑みました。しかし、それがどういうことか理解できない男が3.5%の要求を蹴ったのです。
あるのは対中配慮だけでしょう。米国には「舐めるな」と言いつつ、中国の足の裏は舐めているのです。
政権トップが船橋で吼えたのは関税の25%の要求についてですが、これが対中包囲網に入ってこない国に対する仕打ちであることを理解したくないからでしょうが、何らかの弱みを握られているんだろうと思うのは邪推でしょうか。当初24%だったのが、8回の子供の使いで1%利上げになっています。
断末魔の雄叫び
政権与党には自分たちの命運が尽きかけているという自覚はあるのかもしれません。
選挙を三連休の中日に選ぶというとんでもない決定をしたことからも明らかです。
投票率が上がると不利なので、夏休み最初の連休を狙い撃ちにしています。
ちなみに、6つのAIを使って、投票日が三連休の中日であった国政選挙の歴史を探させたのですが、見つかりませんでした。
つまり、恥も外聞もなく、とにかく投票率を下げたいという魂胆だけなのです。
これほど政権が恥知らずになったのは、もう末期症状を自覚しているからかもしれません。
筆者は、非改選参議院議員数を足しても与党は半数割れするかもしれないと考えています。
しかし、残念ながら、現政権は退陣せずに居座るでしょう。恥という概念のまったくない集団ですからね。
半数割れになったら、最大野党との連立が模索されるはずです。最大野党はその気満々です。その証拠に、前国会で内閣不信任案を出しませんでした。出したら通るおそれがあったからです。現政権を救ってやって、自分も連立に加わるというのが連中の戦略でしょう。
東日本大震災でこれから復興に向かわなければならないときに消費大増税をやってのけだだけでなく、復興特別税なるものまで創り出した財務省の飼い犬が政権の主要人物になるのです。考えただけでもゾッとする社会になります。
つまり、この選挙は与党が勝っても負けても碌な結果にはなりません。
ノストラダムスの予言は四半世紀遅れて成就するのでしょう。
ちなみに、
今回もまた大変失礼なYouTubeのサムネイルを発見したので、タイトルに使わせていただいています。
投稿者の名誉のために、チャンネル名を公表することは控えますが、このチャンネルを運営しているYouTuberの常識の無さには呆れます。
このサムネイルは二つの意味で失礼極まるものです。
一つは、米国の言いなりにならず、わが国の防衛は自分で考える、言うべきことは言って同盟国であろうと正々堂々と戦うという見事な覚悟を示したわが国リーダーに対して失礼だということです。
もう一つは、前回も申し上げましたが、ブタは、高度な知能を持っているということです。実験では、自分の名前を認識できるし、迷路を間違わずに通り抜け、3年前に会った人の顔を識別できたそうです。また、我々には「ブヒブヒ」としか聞こえませんが、それでしっかりと他の個体とコミュニケーションを取っているということです。
そのような高度の知能を持ったブタと現政権トップを比べること自体がブタに対してとてつもなく失礼なことです。
ものを知らないにもほどがあり、だからSNSが玉石混合だと言われ、メディアリテラシー云々という題材になるのです。
こういう連中がYouTubeをやっているから、その質がいつまで経っても向上していかないのです。
一国のリーダーの質を云々する前に、自分の頭のレベルを考えよと申し上げて筆を置くことにします。
本稿を投稿する翌日は、参議院の普通選挙です。与党が非改選を合わせても半数割れするだろうと予測されています。
しかし、現政権のトップにいる下品な恥知らずは、最大野党との連立を画策し、政権に居座るつもりでしょう。憲法3条の解散は認められないと言っていたにもかかわらず、信を問うためと言って天皇の解散権を利用し、信任されていないことが明らかになっても、「国難の最中だから。」という理由で辞任しなかった恥知らずです。最大の国難が彼の首相在任だということが分からない〇✕ですからね。
参院選挙がどうなっても社会はあまり変わらないのでしょう。
私たち有権者の責任です。