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専門コラム「指揮官の決断」

第443回 

陰謀論をどう考えるか その4

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承 前

前回まで、弊社が陰謀論や都市伝説とどう向き合うかという話をしてきました。

抽象的なレベルだと分かりにくいので、日航123便の事故を取り上げて、その陰謀論を弊社がどう取り扱うかについて解説します。

故森永卓郎氏の主張

日航123便の事故に関しては、その犠牲の大きさや起こったことの異常さが際立ち、様々な陰謀論が飛び交っています。

その中で筆者の注意をひいたのは、青山透子という元日航のパーサーだったという人が書いた書物と、その書物を絶賛する故森永卓郎氏の主張でした。

森永氏は青山氏の書籍をそのまま何の疑いもなく受け入れ、123便の陰謀論を展開していました。

その主張を要約すると、自衛隊は長距離のミサイルを開発中で、日本海側で試射をしたところ好成績だったので、今度は実際の飛行機を標的にして試験をしようとして、相模湾に護衛艦「まつゆき」を出動させ、日航123便を狙ってミサイルを撃った、ということのようです。彼女の本によってその書きぶりが違い、赤い練習用ミサイルで撃ったと書いてある本もあります。

とにかく、海上自衛隊の「まつゆき」が発射したミサイルが命中し、123便はまともなフライトができなくなり、迷走を続けることとなったため、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進して追いつき、ミサイルで撃ち落とし、同機は御巣鷹山に墜落した。米空軍のC-130という輸送機が捜索して墜落機を発見して、米海兵隊の救難ヘリを誘導したが、救助を始める前に帰還を命ぜられ、そのような作業をしていたことは口外してはならないと命ぜられたということが、それから10年たってカリフォルニアのローカル新聞に、そのC-130に乗っていたというマイケル・アントヌッチという元空軍中尉が手記を投稿して明らかになった。

現場には厚木(森永氏はラジオでは横須賀と言ったこともあります。)の海兵隊がヘリで現場に急行し、まさにヘリから降下しようとしているときに日本政府の要請で引き上げざるを得なかった。

山梨県あたりの小学生が、赤いミサイルを機体にめり込ませたまま低空を飛ぶ日航機とそのすぐそばを飛ぶ航空自衛隊の戦闘機を目撃して、それを文集にしている。大勢の小学生の目撃証言があり、それが事実であることは間違いない。

現場では、自衛隊が撃墜したという証拠を残さないために、陸上自衛隊の特殊部隊が出動して、生存者もろとも火炎放射器で焼き払った、ということだそうです。

森永氏は、この事故の原因をボーイングに負わせることで米国に大きな借りができて、その結果プラザ合意を結ばせられることになった、という説明をしています。

陰謀説の根拠を疑う

青山氏は、123便の機長が海上自衛隊出身であり、海上自衛隊がそのような実験をすることをあらかじめ知っており、古巣のことで文句も言えず、関連のメモなどが制服のポケットなどに入っているとまずいので、発見された機長の遺体から制服をはぎ取ったということまで主張しています。機長のご遺体は、たしか顎の骨しか発見されていないはずですから、この主張はでたらめです。

森永氏は、青山氏がこの事件を解明するために東京大学の大学院博士課程まで出て勉強しただけあって、その著作は事実の積み上げで、極めて論理的に説明されていると絶賛していますが、筆者の感想としては、論理性など微塵もなく、事実の積み重ねではなく妄想の塊としか思えません。

陰謀説には、航空力学などの基礎的素養がないと評価できないものなどもありますが、弊社にはその素養がないので、それらに言及するつもりはありません。

筆者の知識・経験や弊社の情報収集能力の及ぶ範囲での議論としてまいります。

「まつゆき」のミサイル発射

まず、海上自衛隊の護衛艦「まつゆき」がミサイルで撃墜したという主張ですが、これはあり得ないということを立証することは簡単です。

123便が最初に尾部に異常を生じた高度が約7000mでした。

まつゆき搭載のミサイルはシースパローという短距離の個艦防御用の対空ミサイルで、高度7000mを飛行中の航空機を狙えるミサイルではありません。

そもそも青山氏は、海上自衛隊の赤い練習用ミサイルという表現をしていますが、赤いミサイルというのは海上自衛隊にはありません。

また、前日に日本海側で試射をしてうまくいったから、相模湾で実機を対象に射撃を行うというようなスケジュールで研究開発が行われると思ったら大間違いなのですが、それは部外者にはいくら説明しても分からないでしょうし、自衛隊は事実を隠蔽していると言われるだけなのですが、彼女が海上自衛隊に取材していないことは明白です。海上自衛隊に取材していたら、「練習用」とは言わず「訓練用」と言っているはずです。海上自衛隊では「練習」と「訓練」は意味が異なりますし、赤いのは対空射撃訓練に使用する標的機です。だから、もし試射がうまくいって、対空目標を狙う実験をしたいのであれば、何もわざわざ日本人の乗客の乗っている旅客機を狙わなくても標的機で十分対応できるし、むしろそちらを使った方が様々なデータを取れるので、評価用にはふさわしいのですが、そんなことも青山氏は知りません。海上自衛隊に取材していないからです。

また、そもそも海上自衛隊の護衛艦「まつゆき」と言っていますが、「まつゆき」という船は、その日はまだ海上自衛隊の船ではありませんでした。

石川島播磨重工東京造船所で建造され、翌年3月に防衛省に納入される予定で、各種の試験を行っている段階でした。初代乗り組み予定の艦長や乗員は乗ってはいましたが、艤装員という肩書で、指揮を執っていたのは造船所の船長ですし、運航に当たっていたのも造船所の職員です。そして、造船所の技師や下請け会社の社員も大勢乗って試験を行うのです。

しかも最近になって筆者は知ったのですが、当日、「まつゆき」は出航しておらず、東京工場の岸壁に横付けしていたそうです。これは浦賀水道の航行記録などを海上保安庁に問い合わせれば分かるはずです。

筆者は別の船に乗り組んでおり、その週はIHIが「まつゆき」の試験を相模湾で行っているという情報を持っていただけでした。

そもそも民間の技術者をたくさん乗せた海上自衛隊の船でもない船が、民間の旅客機を撃つなどいうことがあるのかどうか、ちょっと考えれば分かるはずです。まして、相模湾の中央で日没時にミサイルなど発射しようものなら、周囲の船から丸見えになります。赤い炎を上げて飛んでいくミサイルが見えたはずですが、その目撃者はいまだに一人もいません。

つまり、「まつゆき」がミサイルで123便を撃ったということはまったく客観的な証拠がありませんし、技術的にも不可能です。

小学生の文集の真偽

また、森永氏は多くの小学生が、赤いミサイルが機体にめりこんだ状況で旅客機が低空を飛び、航空自衛隊の戦闘機がそのすぐ近くを飛んでいたことを目撃して文集に残していることを根拠にしていますが、これは航空自衛隊の飛行記録と辻褄が合いません。そんなことは陰謀論者にとっては意味がないのですが、しかし、その時間に赤いミサイルがめり込んでいる飛行機が飛んでいたことが目視で分かるのかどうかは陰謀論者が立証すべきです。日没を過ぎた時間で、赤いものが見えるのかどうかというポイントです。

飛行機には衝突防止灯が装備されているので、それの見誤りではないかと思われますが、小学生たちが見誤っていたということを証拠立てることはできません。

しかし、森永氏が多くの小学生の証言があるので、これは事実だと主張していることには反論があります。

米国のカリフォルニア州マクマーティンという街で1980年代半ばに大きな事件が起こりました。

ある託児施設で児童が性的被害にあったと訴えたのがきっかけでした。調査の結果、300人以上の児童が被害にあっていたことが分かりましたが、調査を続けると、おかしな点がいくつも発見され、その結果、全面的に調査が再度行われ、結果的に最初に調査に入ったカウンセラーの質問の仕方に問題があったため、児童の記憶が書き換えられたことが分かりました。これは社会心理学上のエポックメーキングとなる事件で、多くの小学生が証言しているから真実であるということにはなりません。

筆者は、小学生たちが嘘をついていると主張しているのではありません。

大勢の小学生の目撃証言があるから、これは事実だという森永卓郎氏の主張が社会科学の常識ではないと主張しているにすぎません。

マイケル・アントヌッチ元空軍中尉の投稿

さらに、マイケル・アントヌッチ元空軍中尉の投稿について、米国のスターズ&ストライプ紙が在日第五空軍司令部に事実の照会をしたところ、「そのような記録はない。」という返答だったそうです。これは、そういう事実はないということを必ずしも意味せず、古いことなので記録が残っていないということかもしれません。しかし、いずれにせよ、この元空軍中尉の手記のファクトチェックはできていないのです。それが事実であることを証明するのは青山氏の責任でしょう。

もともと筆者は、この元空軍中尉という存在そのものを疑っていますが、それは筆者の経験からの推察にすぎず、その推察が正しいことを立証できないので、本稿では取り上げません。

無かったことを証明することは難しいですが、本当にあったことなら証明できるはずです。

詳しくはかつて4回連載で発表した当コラムの中に記載しています。

海兵隊の出動

厚木または横須賀から海兵隊のヘリが飛んで、現場でまさに降下しようとしているときに帰還命令が出たということですが、これは明らかな嘘です。厚木や横須賀には当時も現在も海兵隊の部隊はいますが、彼らは基地警備を専門とする部隊で、ヘリから降下して、航空事故の遭難者を救出できるような部隊ではありませんし、ヘリコプターも装備していません。通常の戦闘任務に出すにしても再錬成をしなければならない部隊です。
海兵隊と言うと何でもできる部隊だと思っている方が多いのでしょうが、たしかに世界最強の地上戦力かもしれませんが、それぞれに専門があり、基地警備の専門部隊は基地警備に関してはプロでしょうが、航空救難はできません。

したがって、この話は作り話であり、海兵隊への取材などはまったく行っていないと断言できます。

陸自特殊部隊の火炎放射器使用

最後に、陸上自衛隊の特殊部隊が出動して生存者もろとも証拠を火炎放射器で焼き払ったという説ですが、筆者が登壇したシンポジウムを主催した岡部元陸上幕僚長や西部方面総監を務められた小川元陸将に話を聞きましたが、その件については彼らも怒り心頭というところでしょう。ただし、彼らがいくらそんなことはやっていないと主張しても、陰謀論者には通じません。彼らを黙らせるのは、科学的な証拠を見せつけるしかありません。

森永氏は航空燃料には含まれず、火炎放射器の燃料には含まれるベンゼン環が現場で大量に検出しているということを証拠としてあげていますが、ベンゼン環などは旅客機の内装には大量に含まれるので、現場で検出されても何の不思議もなく、火炎放射器が使用されたという証拠にはなりません。

森永氏は犠牲者の遺体が通常の航空機事故の遺体とは異なり、胸も背中も完全に焼かれていて異常だったと検死に当たった医療関係者が証言していると述べていますが、筆者は280体ほどの検死報告を実際に観たことがありますが、検死報告書にそのような記述はまったくありません。また。様々な医療関係者の団体のウェブサイトでもそのような記述をしているサイトは観たことがありません。
陰謀論者は、検死報告書はメイキングされたものだと言うでしょうが、それは航空事故の現場でどうやって検視報告書が書かれるのかを知らない者の妄想でしかありません。
遺体に不審な点があったと証言している医療関係者が一人でもいるなら、その方の証言を聞きたいものです。

プラザ合意

森永氏は、責任をボーイングに負わせることによって米国に大きな借りを作ったので、プラザ合意を結ばせられたというのですが、これも証拠がありませんし、当時の日本の経済情勢を考えれば、合意以前の円安で世界が納得するはずもなく、プラザ合意は必然だったはずです。

いわゆる双子の赤字に悩む米国に対して、1ドル365円の超円安状態で高度成長を謳歌していた日本を見逃すはずはありません。

森永氏は自分で経済アナリストと名乗っていましたが、こと経済に関する限り、業績は「ザイム真理教」という言葉を作ったことと、森永康平という息子さんを世に送ったことくらいしかなく、彼の経済分析はまったく参考にはなりません。せっかく緊縮財政が誤りであることに気付いていながら、理論的に説明できないので、藤巻健史ごときに簡単に論破されています。この男は、過去10年間、日本経済は破綻するという本を毎年2冊ずつ書いていますが、このまま国債の発行を続けると国債の価値が暴落して円が紙くずになり、ハイパーインフレーションがおき、日銀が倒産するという訳の分からないことをわめき続けています。声が大きいので、一見して正しいように見えますが、財政や金融のド素人であることはその主張から明白です。日銀がどうやったら倒産するのか理解できませんし、ハイパーインフレーションにどうやったらなるのかも理解できません。なぜ、理解できないかというと、言っている本人が理解していないからです。まともな説明がその著書にはないのです。
そんな奴に論破される森永氏というのも経済の専門家とは言えないでしょう。経済学を理解していないので、反論できないのです。

この事件への彼の対応を見ていると、彼の経済分析が参考にならない理由が分かります。彼は社会科学の方法論を全く知らないのです。

青山透子さんという人も東京大学大学院の博士課程を出ていると言われますが、その書物を読む限り、論理性など微塵もありませんし、事実の積み上げどころか、妄想の積み上げでしかありません。とても大学院で社会科学の訓練を受けているとは思えません。

東京大学の大学院というのはその程度なんでしょう。

他の領域については関知していませんが、少なくとも経済学と筆者の専門であった組織論に関しては、東京大学は三流校です。教員が三流ですから、一流の学生が育つはずはありません。東大で勉強した財務省の役人や官房長官などが経済の現状を見る能力がまったくないことを見ても分かります。

現日銀総裁も東大経済学部の教授でしたが、現在の日本の経済状況をインフレと認定し、利上げを図ろうというしているあたり、普通の大学の経済学部1年生でもそんなことは考えないという答案です。この状態をスタグフレーションと言うんだという経済学の常識が理解されていません。いったい東大で何を教えていたのか疑いたくなります。どんなに優秀な学生が集まっても、この類の教員しかいなければろくな卒業生が出ないのは仕方ないのでしょう。
まして財務省は経済学部ではなく法学部の牙城です。経済など何も分からない連中が仕切っているのです。

とにかく、森永卓郎氏の主張は、プラザ合意を強引に結ばされたことを説明するために、海上自衛隊の護衛艦が日航機を撃ち、その尻拭いをボーイングに負わせる代償としてプラザ合意になったと考えるとすっきりするというに過ぎず、何一つ事実の証明をしていません。自分の説を根拠づけるためだけに、陸・海・空自衛隊の名誉を傷つけ、必死になって捜索救難に当たった隊員たちを侮辱する態度は許されません。
捜索に当たった元陸上幕僚長の岡部三尉(当時)は、隊に戻って一カ月間、毎晩、隊舎の窓に自分が収容した遺体の霊が現れるという経験をしたそうです。そのような思いまでして捜索救難に当たった隊員たちを殺人者扱いする森永という人物を筆者は許す気にはなりません。

彼は故人であり、故人を鞭打ちたいと思っているわけではありませんが、この主張だけは許容するつもりはありません。なんせ、彼が遺言として残した内容ですからね。遺言を残した者を許さないというのは当然だと思っています。そんな遺言を許容していると、事実が捻じ曲げられてしまいます。

前回の繰り返しになりますが、弊社としては陰謀論や都市伝説をまったく否定するという態度はとっていません。ただ、その論拠になるものに疑問がある場合に、その疑問を提示しているだけです。

日航123便の事故に関し、何らかの疑惑はあるかもしれませんし、それをすべて否定するつもりはありません。ただ、青山透子氏が主張し、森永卓郎氏が絶賛する陰謀論は噴飯もののあり得ない妄想に過ぎない、と言っているだけです。

こう主張すると、陰謀論者は、筆者が疑問を呈している事実には応えず、元自衛官のいうことなど信じられない。本当のことを言うと家族が殺されるから。と反論してきます。

この類の低能には付きあうつもりはありません。
ちなみに、今回のサムネイルの画像は、京大の経済レジリエンスという会合で森永卓郎氏が登壇したことを要約するYouTubeのサムネイル写真を借用しています。
こんな話をまともに聞いたのであれば、この会合も大したものではないのかもしれません。
ただし、この会合を主催した藤井聡氏というのは、かなりしっかりした人物で、基本的には紳士であり、森永氏の123便に関する主張については、あえて反論せずに「ザイム真理教の話をさせたかったのかもしれません。