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専門コラム「指揮官の決断」

第455回 

     物言えば唇寒し秋の風

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はじめに

年が明けたばかりの1月に秋の風というのは季節外れの感があります。

しかし、あえてこのタイトルを今回採用しているのには理由があります。

昨年末、このコラムで安全保障の議論を避けてきた理由について2回ほど言及したことがあります。

そこでは主として、メディアや政治家の不勉強で、まともな議論ができないことを理由として挙げています。

これを総括しようとするのが、今回のタイトルが言おうとしていることです。

著名評論家やメディア、弁護士の理解力

例えば、来栖元統幕議長が「自衛隊が国民の生命、財産を守るための組織であると思っている国民が多いが、それは誤解であり、自衛隊の任務は日本の平和と独立を守ることである。」と発言すると、評論家の佐高信が「自衛隊は国民を守らない、と言っている。だから、そんなものはいらない、災害救助隊に改編すべき。」と主張します。

また、高市総理が予算委員会で立憲民主党の岡田議員にしつこく質問されて、「例えば台湾を完全に中国北京政府の支配下に置く目的で、戦艦や航空機などを用いて武力行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得る。」と発言すると、評論家、コメンテーター、新聞、テレビは一斉に「高市首相の台湾有事が存立危機事態になりうるという発言が中国を刺激している。」と述べます。

また、同じく高市首相が党所属の国会議員を前にしたあいさつで、「全員に働いていただく。馬車馬のように働いていただく。」「私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる。働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく。」などと語ると、すかさず、過労死弁護団は声明で、過労死防止法が2014年に全会一致で成立した後、「健康な職場をつくるために官民一体で努力を続けている。」と指摘し、高市氏の発言は「公務員など働く人々に過重労働・長時間労働を強要することにつながり、政府が進めてきた健康的な職場づくりを否定する。」などと抗議しています。

はっきりと申し上げます。昨年までは当コラムの品位を重んじ、また、誹謗中傷とならないように、これらの方々を〇✕と呼んでいましたが、今年からは、当コラムが記名のコラムであり、社としての発言であることに鑑み、伏字を使わないことにしました。

つまり、〇✕ではなく、馬鹿であるとはっきりと申し上げます。

来栖元統幕議長は「自衛隊は国民を守らない。」とは一言も言っていません。国民の生命、財産は警察、消防、海保が責任を負っている、自衛隊が責任を負うのはこの国の平和と独立であると言っただけなのです。警察は警察法に「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、」と規定され、海上保安庁は「海上の安全及び治安の確保を図る」ことが目的とされ、自衛隊は「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。」と自衛隊法で規定されているので、来栖発言のようになります。自衛隊法に「国民の生命と財産は守らない。」と規定されているわけではありません。佐高信という評論家の頭はその程度の理解力なのです。社民党の福島瑞穂も同様です。

弁護士というのは、法律を読んで、解釈することに関しては専門家だと考えていましたが、彼らの読解力、理解力というのも疑わざるを得なくなりました。高市首相は、自民党所属の代議士に向かって、馬車馬のように働いていただく、と述べたので、国民全体に対して声を掛けたのではありません。少数与党になって人の数が少ないので、これまでよりも各議員が働いてもらわなければ困るという思いなんでしょう。自分自身もワークライフを捨てて頑張るという陣頭に立つという覚悟を示したものです。それをこの弁護団のような解釈をする法律の専門家がいると、自民党総裁として自民党員にものも言えないということになります。

また、台湾有事についての発言は、メディアの完全な無知ぶりをさらけ出したということになります。首相は、台湾有事が存立危機事態になりうると言ったのではなく、台湾有事に際して、海上封鎖に対応するために米軍が来援し、それに対抗して海軍力を用いて武力の行使が行われるようなら、存立危機事態になりうると述べたのです。台湾有事そのものが日本の存立危機事態であり、直ちに自衛隊が武力を行使できると述べたのではありません。これはまともに字を読むことができる頭があればすぐに分かることであり、様々なメディアが、台湾有事が日本の存立危機事態と認定され、自衛隊の武力行使が可能となるという発言であると理解し、そのような主張を繰り広げていますから、その理解力が知れます。存立危機事態について規定しているのは、2015年に制定された「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(いわゆる事態対処法)」(平成15年法律第79号)ですが、メディアはまともにこの法律を読んでいないのでしょう。

大学教員も玉石混交

ある番組で、大学教授だというゲストが喋っているのを偶然見かけました。彼は日米安全保障条約があるからと言って、尖閣に中国が攻めてきたら直ちに米軍が来援すると思ったら大間違いだと述べていました。筆者も同意見なので、この識者の言うことを聞いていました。その後、彼は台湾有事に際しても、現トランプ政権は直ちに軍を派遣することはないので、存立危機事態にはならない、したがって、高市首相は発言を取り消すべきだと言い始めました。彼も理解力が乏しいのでしょう。首相は、米軍が来援し、その米軍に対して、武力攻撃が行われるなら存立危機事態になり得ると言ったのであって、米軍が来ないなら、前提が無くなってしまうので、存立危機事態になり得るということではなくなります。台湾有事がわが国の存立危機事態にならないのかというと、事態の進行状況によってはなり得ると考えますが、この教授は、高市発言の内容を理解できないのでしょう。

こう申し上げると、新聞やテレビを信じている方々は、「そんなバカな。」と思われるかと拝察します。テレビに出てくるような評論家、大学教授などがそんな低能であるはずはない、と思っておられる方が多いのではないでしょうか。

しかし、筆者は既存の新聞やテレビなどのメディアを信じていないので、彼らが理解できていないのではないかと考えています。

理由は明快で、佐高信の理解力を観れば明らかですし、流行語大賞にもなった高市首相の「働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく」という発言に対する弁護士団の反応を見ても、資格を持った法律家がその程度の理解力か、という話です。

現日銀総裁は東京大学の経済学部の教授だったそうですが、現在の日本の経済状況をインフレとして利上げをする暴挙に出ています。インフレーションというのは、需要が供給をうわまってモノの値段が上がっていく状態であり、現在の日本は円安により原材料の価格が上がってしまった結果、モノの値段が上がっているだけなので、コストプッシュインフレと呼ばれ、利上げをしていいインフレではありません。

利上げや消費税のアップは、加熱する景気を冷やすために行うべきであり、せっかく政府が積極財政に転じようとしているときに利上げするのは、アクセルを踏みながらブレーキをかけるようなものです。

また、消費税の減税に一切応じようとしなかった自民党の宮沢洋一前税務調査会長は、東大をトップで卒業して財務省にトップで入省したのかもしれませんが、普通の大学の経済学部1年生のマクロ経済学も理解できていません。

筆者の自宅では、ここ数年「この勢いでいくと」という表現が流行っています。主に使っているのは筆者であり、毎朝体重計に乗って、昨日よりも100グラム増えていると、「この勢いでいくと、1か月後には3キロ増えてしまう。」などとつぶやいています。

この言葉は、2020年7月16日、参議院の予算委員会に参考人として招聘された東京大学先端科学研究所の児玉達彦教授が、コロナウィルスについて、この勢いでいけば東京は来週は大変なことになる、来月には目を覆うようなことになると声を詰まらせ、半ば絶叫に近い形で意見表明をして、メディアは「児玉教授の魂の叫び」などと報道したのですが、実態としては、1か月の間、東京の死者はゼロの日も多く、死亡者が出ても二名が最大でした。東京はミラノかニューヨークのようになると騒いだのもこの男です。

この男は、東大先端研の教授であるにもかかわらず、グラフを移動平均で見るということを知らないようです。

しこたま飲んで、最後に締めで何か食べて帰ったときは、翌朝、体重が1キロ増えていることもあります。そんな時に、筆者は、児玉龍彦の物真似で、「この勢いでいくと、1か月後には体重が30キロ増えちゃう。」などと言ったりして、我が家の司令長官に笑われていますが、児玉龍彦が参議院で参考人として述べたのはそういうことなのです。

ちょっとでも統計学を齧ったことのある人間が見ると呆れかえるような議論です。

つまり、東京大学という大学は、入学するのは難しいけれど、何も学ばず、また、教えているのはとんでもない馬鹿が多いんでしょう。

戦闘機乗りが航空用語に詳しいか

昨年、日航123便の事故に関し、事故原因の究明は筆者の専門外であるものの、当日、相模湾にいた海上自衛隊の護衛艦「まつゆき」が対空ミサイルを撃って日航機に命中させたとする青山透子と、その議論を絶賛する森永卓郎に反論しました。たしかに「まつゆき」という船は存在していましたが、それが海上自衛隊の艦艇となるのは、翌年の3月の話であり、その頃は海上自衛隊への引渡し前の試験を行っていただけであり、初代乗組員になる海上自衛官も艦長予定者以下が乗ってはいたものの、運航は造船所の船長以下の民間の乗組員が行っており、性能試験のために下請け企業の技術者も大勢乗っていたことをコラムで述べました。そのような船が、交通量の多い相模湾の日没時にミサイルなどを撃ったら、多くの船舶から目撃されてしまうだろうということです。

それがあるYouTuberの眼に止まり、その動画に出演してくれとリクエストされたのですが、当時、どうしても予定が合わず、4回連載のコラムをまとめてアップするのはかまわないと伝えたところ、そのYouTuberが見事にまとめてご自分の動画としてアップしてくれました。

それを観た人たちから様々なコメントが寄せられたのですが、元航空自衛隊の戦闘機パイロットだったという者から、筆者のコラムに関して、「ロストポジション」という言葉の解釈が出鱈目だというコメントがありました。

これにはびっくりしました。筆者は米国で操縦資格を取得しており、パイロットとしての教育は英語で受けていました。筆者のこの言葉の使い方はICAO(国際民間機関)の用語集に載っているもののとおりであり、その元航空自衛隊の戦闘機パイロットが理解していないのでしょう。空自の戦闘機パイロットは、とてつもなく優秀な人が多いのですが、脳みそまで筋肉でできている連中も中にはいます。

つまり、元航空自衛隊の戦闘機パイロットであっても、簡単な航空用語を理解していなかったりするのです。もっともこの元パイロットが、そんなことを知らなかったわけはないので、コラムの内容を理解する頭がないのか、一時的に認知症が発症していたのかもしれません。

受け取る側のレベルの低さ

また、あるコメントには「どうせ元自衛官の言うことなんか嘘に決まっている。本当のことを言ったら家族が殺されるから。」というのがありました。三文小説の読み過ぎなんでしょう。

テレビなどで発信する側も酷いのですが、受け取る側もこの程度が多いので、モノを言うのが嫌になります。それが今回の表題になっています。

皆様のご鞭撻を賜りたく存じます

ただ、この専門コラムを辛抱強くお読み頂いている方々には、そのような頭のおかしい方はいらっしゃらないであろうという前提で拙文を綴っています。

モノ言えば唇が寒いのですが、しかし、一人でも多くの方に危機管理の本質をご理解いただきたく、一生懸命に綴ってまいりますので、引き続きお読みください。

また、分かりにくかったところがあれば、ご質問頂き、筆者の誤りがあればご指摘頂き、ご意見などを賜れば、今後の執筆の参考になりますので、ご遠慮なくお寄せください。

海上自衛隊の先輩や大学の先輩たちには、情け容赦のないご意見を送られる方々もいらっしゃいます。海上自衛隊の先輩たちで多いのが、「なんだ、お前、コラムなんかも書いているのか。」というものです。この方々は筆者のメルマガジンしかお読みになっていないのでしょう。それでも、筆者のメールマガジンにご意見を下さる貴重な方々です。

どうか、皆様も忌憚のないご意見をお寄せください。

さらに、筆者はその疑いを裏付ける証拠も持っています。

筆者がまだ海上自衛隊にいたかなり前のことですが、神戸に出張した時のことです。朝早くからの日程が詰まっており、前日に神戸に進出していました。

午後の早い時間に着いたので、ホテル周辺を歩いていました。ホテルのすぐ近くに公会堂のような建物があり、土井たか子さんの講演会があるとの掲示が出ていました。

開演前でしたので、案内に出ていた職員に、予約がないけど入れるかを尋ねると、歓迎だということで、夕食までの暇つぶしのつもりで入ってみました。

講演で土井たか子さんはカンボジアPKOの1年後に現地を視察されたそうです。そしてびっくりしたのは、陸上自衛隊が造ったという道路がボロボロになっており、とてもではないがまともな道路とは呼べない状態だったということです。「あんなに大騒ぎをして派遣したPKOですが、何をやってきたんですかね。」と述べておられました。

土井たか子さんもびっくりされたようですが、その話を聞いてびっくりしたのは小生でした。

たしか土井たか子さんの社会党は、カンボジアPKOに牛歩戦術まで行って反対したはずです。

カンボジアPKOで派遣された陸上自衛隊の部隊は施設部隊が主力であり、彼らの使命は、カンボジアで民主的な選挙が行われるよう、選挙の準備や投票に必要な車両が安全に通行できる道路を造ることでした。つまり、選挙が行われるのに必要な道路を造るのが陸上自衛隊部隊のミッションでした。恒久的なインフラを整備するのではありませんでした。

陸上自衛隊の施設部隊は、恒久的なインフラを造るのは専門ではありません。彼らはとりあえず戦車などの戦闘車両が通ることのできる道を造ったり、それらが川を渡ることのできる橋を架けたりするのが専門です。そのような工作物を速やかに造り、部隊を移動させ、移動させた後は、敵に利用されないようにしなければなりません。

その陸上自衛隊が造った道路を1年後に見に行って、ボロボロだと文句を言うのは、カンボジアPKOの目的を理解していなかった証左です。牛歩戦術まで行っておきながら、法律自体を読んでいなかったのでしょう。

しかも、カンボジアPKOに関する国際平和協力法が成立したのち、彼女は、陸上自衛隊の機関銃2丁を持っていきたいという要望を、「2丁は多いので、1丁にせよ。」と主張しました。憲法の禁ずる武力の行使ととらえられかねないからだそうです。

どこの国が機関銃2丁を威嚇行為ととらえるのでしょうか。彼女は武器の使用と武力の行使の概念の違いを理解していなかったのです。

因みに、機関銃1丁というのは役に立ちません。

機関銃というのは戦争映画のように敵を狙って振り回しながら撃つ兵器ではなく、小隊や中隊が展開する両端に置いて、斜めに撃ち続けるのです。斜め45度に双方から撃てば、正三角形の斜辺のように弾のラインが作られ、中央で交差します。

敵はその弾のラインを突破して突撃してくることができず、それを突撃破砕線と呼びます。

したがって、両端に2丁必要なのです。しかも、機関銃というのは弾詰まりを起こすことがあるので、その場合に速やかに予備銃を発砲する必要があります。したがって2丁の機関銃をまともに使おうとすると予備銃を含めて4丁必要だということになります。

それが軍事における常識なのですが、そういう簡単な常識のない政治家が、ろくに法律案も読まずに牛歩戦術を取ってまで反対したのです。

政治家が法律案を読まずに国会で牛歩まで行って反対行動を行う国です。新聞記者が法律を読んでいなくても何の不思議もありません。

この国では戦争について語ること自体が好戦的であると見做されます。平和を維持しようとすると戦争の本質を見極めなければならず、軍事について素人であることはできないはずなのですが、平和を求める者は軍事について何も知らなくてもいいようです。したがって、社民党の掲げる安全保障政策は、憲法9条がある限り、この国の平和は保たれるという不思議な理論に終始しています。

もの言えば唇寒し、というのはこの国の安全保障に関して当てはまる表現です。