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専門コラム「指揮官の決断」

第200回 

第2波襲来!・・・?

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本当は200回記念特別号になるはずだったのだけど・・・

新型コロナの話はもう避けようと思っていましたが、先週から再び騒ぎが大きくなってきていますので、この問題から目をそらすことが当コラムにとって正しい道かどうかを考えると、何も触れないのはいかがかとも思い、再びこの問題を取り上げます。ただし、当コラムは感染症の専門的知見を有さず、ただ単に統計学的な見方から見るとどう見えるかという域に留まることをご了解ください。

今回はこれまで何回かに渡って掲載してきた論点も整理したいと思います。

まず、感染者の増加に歯止めがかからず、第2波が襲来している、このままでは東京はミラノやニューヨークのようになると言われていることについての問題点を考えます。

感染者数が増えているわけではない

感染者の増加に歯止めがかからないというのは正確ではありません。

全国の感染者数は誰にも分かっていません。

分かっているのは、検査を受けて陽性と判定された人の数です。

陽性であるということと感染しているということは全く別の問題です。

PCR検査では、喉や鼻の奥から粘膜への付着物を削ぎ取って、これを試験器で培養して観察します。そこで新型コロナウイルス独特の遺伝子配列を持ったウイルスが観察されると陽性と判定されます。

ウイルスの場合の感染とは、生体内で定着・増殖し、寄生の状態になった場合を指しています。

一方の陽性の判断は、特有の遺伝子を持ったウイルスが観測されることにより行われます。つまり、ウイルスの場合、生きている死んでいるという言い方が正しいかどうか微妙なところではありますが、一般的な表現として、すでにその人が感染して症状が出ないうちに体内のウイルスが全滅し、その残骸が検査の結果見つかっても陽性となります。

このところ世間を騒がせているテレビが感染者数と言っているのは間違いであり、検査の結果陽性が判明した人の数が増えているにすぎません。

しかも社会全体の陽性者ではなく、検査を受けた人の中で陽性だった人の数が増えているにすぎません。

検査を受けた人の中の陽性判定者の数から、社会全体の陽性者の数を推測することはできないことはありません。そのためには検査する対象を偏りなく選び、かつそれなりの数の検査を行わなければ正しく推測することはできません。

しかし、当たらずとは言えども遠からない計算をしようと思えばできないことはありません。

4月上旬、検査で陽性が判明した人が700名ほどだったのが最大値でした。最近は1000名前後となっています。

しかし、その母集団である検査数が全く違います。当時の3倍から4倍の検査数です。それだけ検査数が増えていて陽性と判定される人数は1.5倍です。

この結果の評価は慎重でなければなりませんが、この数字からはどこから考えても社会全体の陽性者数が増えているという結論を導き出すことはできません。

まして、感染者が増えているということはできません。

この事実をどう解釈すると感染者が激増してミラノのようになりつつあると言えるのでしょうか。

4月頃の検査が4日以上の発熱が続いた人などを対象にやっていたことも見逃すことはできません。当時は症状のない人は検査を受けていませんでしたから分からなかっただけで、陽性なのに症状が出ていなかった人はもっと多かったはずです。

当コラムが注目するのは重篤者数です。4月の頃は連日10名以上で5月には200人の重篤患者が出た日もありました。

このところ5名以内がほとんどでしたが、徐々に増えはじめ、29日は最大となりました。しかし81人です。この増え方はかなり日によって異なるのですが、7日ごとの移動平均を取ってみると、急激な右肩上がりではないことが分かります。

一日の死者も5月に49名を数えた日がありましたが、このところは多い日で4名です。

論点を整理しましょう

ここまでをまとめます。

検査の結果陽性判定される人数が、一番多かった4月上旬の700名に比べて一日1000人を超えるようになりましたが、検査数そのものが4倍近くになっているので、陽性判定者そのものが増えていることを証明できません。

また、検査でわかるのは陽性者数であり、感染者数ではありません。

陽性確認された人の数が増えているのに重篤者や死亡者が減っているのは、陽性者の多くが感染していないか、感染していても体の抵抗力で抑え込むことができているからであることを示しています。後者は他人に感染させる危険がありますが、前者はそうではありません。しかし現在の規則では、前者も含めて入院措置となってしまいます。

これらを総合して統計学の観点から見るならば、私たちの社会は4月にピークアウトして、それ以降、着実に免疫を獲得しつつあるということです。

入院者が増えていますが、これは現在の規則で感染症の第2類に分類され、コレラやチフスよりも警戒すべき病気とされているために陽性の判定を受けるとまったく無症状であるにもかかわらず入院しなければならないからです。

そのような人たちは病院ではなくホテルに収容されるのではないのか?と思う方が多いかと思いますが、実はそうではありません。

新型コロナ対策の病室を準備した病院は、その病室に盲腸の患者などを入室させることができないので、経営を圧迫してしまいます。そこで、症状が出ていなくとも陽性判定された人を入院させているのです。つまり、完全防護した医師、看護師がまったく無症状で元気いっぱいのお兄ちゃんたちと付き合っているという妙な構図が生まれています。

テレビに登場する医者の中には、現場は大変なことになっている、都も国も現場を見ていないと憤慨する方もいますが、たしかに大変な思いをしている医療機関はありましたし、4月から5月にかけては大変だったはずです。現在も凄まじい緊張感の中で医療を行っている医療機関があることも事実です。

しかし、反面、上記のような事情が生じていることも事実であり、これは規則を変える必要があるはずです。

つまり、私たちの社会は感染拡大が止まらずに破滅に向かっているのではなく、着実に社会的な免疫を獲得しつつあると言って差支えないはずです。

ここで重篤者数が指数関数的に激増するとか死亡者が若年層に移り数が増え始めるということになるとウイルスの変異を考えなければならないのかもしれませんが、歴史的にウイルスは弱毒化するのが普通だそうです。

何故新型コロナだけを怖がるのか

何回も指摘していますが、毎年インフルエンザでは3千人から1万人の方が亡くなっています。結核で亡くなる方も毎年3千人にのぼります。これは空気感染します。

それらを怖れて自粛要請など出ないのに、この度は何をうろたえているのでしょうか。

GoToトラベルを感染者が増えている状況で見切り発車したことは許せないという識者もいますが、陽性と判定された人が増えているだけで感染者数が増えているということにはならないのに、何を根拠にしているのでしょうか。

世論調査によると80%以上の人々が緊急事態宣言を再度発令すべきと考えているようですが、この人々は毎年3000人以上が亡くなっている交通事故をどう考えているのでしょうか。公共交通機関と物資輸送に従事するトラック以外の自家用車の運行は一律禁止にすべきと何故言わないでしょうか。同じく毎年3000人が亡くなっている結核は怖くないのでしょうか。毎年1千万人近い人々が感染し(陽性ではなく感染です。)、1万人近くの人が亡くなるインフルエンザに何故ロックアウトの議論が出ないのでしょうか。

旅行・観光業界はこの夏が勝負かもしれません。春とGWの観光シーズンで営業できなかった業界は夏に賭けているはずです。ここで勝負できないと秋を迎えることができずに潰れてしまう業者も多数出るはずです。死んでしまってからカンフル剤を打っても効き目はありません。

数字の読み方を知ってものを言っているのか?

そもそも今発表されている数字で感染者が増えていると断言するメディアの人々の頭を疑います。彼らは数字の読み方を全く知りません。

かつて彼らを試したことがあるのですが、1万人に一人が亡くなるかもしれないというとたいしたことはないと彼らは判断します。一方で東京都で1200人が亡くなる恐れがあるというと大騒ぎになります。私は同じことを言っただけなのです。

また、彼らは相関関係と因果関係が異なることも理解できません。

米国で、有名な社会調査があります。

横軸にアイスキャンディの売り上げを取り、縦軸に水難事故死者数を取ったグラフを作ることができます。たしかにアイスキャンディがよく売れるときに水難事故死が増えています。

つまり、相関関係は認めることはできそうです。

ところが因果関係を証明することが困難です。アイスキャンディがよく売れる暑い日には水難事故が起きやすいという程度の説明はできますが、それは因果関係ではありません。

アイスキャンディを販売禁止にしても水難は減らないだろうからです。

しかし、メディアはそのような関係性を見つけると狂喜して強引に理屈をつけて説明するのが得意です。

当オフィスは感染症を専門としているものではないので、軽々に結論を出すつもりはなく、特にこの先、重症化する人数や死亡者数に大きな変化が見られた場合には解釈を変える必要があると考えていますが、一方で、現在、日本の社会が破滅に向かいつつあると警鐘を鳴らす学者や評論家たちの議論を検証しても、それを裏付けることはできていません。

強いてやるとすれば、恐ろしく単純化した計算をしないと彼らの結論を裏付けられないのです。

どういうことかと言うと、陽性判定者の数を感染者数と見做し、任意の期間におけるその増加率を算出し、そこから一日当たりの平均増加率を導き、連日その掛け算を続けると日本がニューヨークやミラノのようになるという計算もできないわけではありません。

東京都である日一人の感染者が亡くなり、次の日に二人亡くなったら毎日の死亡者が2倍になっていると計算するのがこのやり方ですが、しかし、統計学はそのような考え方をしません。1200万人という人口を考えた時に、さすがに一週間で1000人が亡くなり、次の1週間で2000人が亡くなったら、1週間で致死率が2倍になったと判断してもよさそうですが、一人が二人になったからと言って2倍と考えることは普通はしないのです。データのバラツキを見るからです。

しかしこの程度のことを平気でやるのがテレビです。

もちろん、この場合、テリー伊藤さんがバラエティ番組で「このままならすぐに数万人、数十万人に拡がりますよ。」などとコメントしているのを相手にしているわけではありません。医者や学者でその程度のコメントをする人が多いのでうんざりなのです。

ちなみに、ある日の死亡者が1人で、翌日2人になって、これをテレビ局の解釈のように死者が2倍になっていくと考えると、日本人全員が死に絶えるのに28日しかかかりません。そして34日後には地球上には人類はいなくなります。

実は彼らはその程度の呆れかえるような議論を平気でしているのです。

私たちはどう対応すればいいのでしょうか

それでは当オフィスの仮説が正しいとして、私たちはどのように対応すればいいのでしょうか。

感染して発症するとかなりつらい思いをするウイルスですので、なるべく感染しないに越したことはありませんし、ご自宅に高齢の方がいたり、基礎疾患のある方などが同居している場合には、何としても感染を防がなければなりません。

しかし、これはちょっとした心がけで防ぐことができます。

これも先に述べておりますが、繰り返します。

飛沫感染と接触感染を避ければよいということです。

飛沫感染を防ぐためには、カラオケやライブハウスなどをしばらく我慢する、夜の社交場には行かない、友人たちとの宴会も自粛する、会食も二人で静かにというのはともかく、三人以上での会食は控えるということです。

電車の通勤などで飛沫感染は起こりません。千か一万に一人くらいそういう感染を拾う人がいるかもしれませんが、そのような方は是非サマージャンボ宝くじを買ってください。

接触感染は手をマメに消毒することにより防ぐことができます。ウイルスを100%除去する必要はありません。体内に入って増殖しないレベルに減少させればいいのであって、それは水道の流水で10秒程度手を洗うことでも達成できるそうです。ウェットティッシュで指を拭っても達成でき、アルコール除菌のティッシュであればなおさら効果的だそうです。

医療従事者のようにそもそも感染リスクの高い職場で勤務でもしていない限り、以上の対策で感染する理由はありません。

ただし、家族に陽性ではなく感染した人がいる場合及び誰かが外出先でウイルスを付着させたまま帰宅して、手をしっかりと洗わずに家の中を歩き回ったりした場合などは話は別です。つまり、帰宅時の手の消毒と外部からの持ち込み品への注意は是非必要です。

それ以外は怖れる必要はなく、家族での旅行などはGoToトラベルの予算があるうちに行っておく方がいいかもしれません。

宿は待ち構えていて大歓迎してくれるはずですし、混んでもいないでしょう。往復は自家用車を使うと接触感染のリスクを大きく減らすことができます。

途中で食事に寄ったり、土産物を買ったりする際に気を付ければ、都内の居酒屋などよりはリスクが小さいかもしれませんよ。

一番いいのはアウトドアです。