専門コラム「指揮官の決断」
第228回ワクチン接種後に襲い掛かってくるコロナ禍最大の危機
感染者が減った理由は・・・
当コラムがテレビをはじめとするマスメディアの質の低下を指摘するのは初めてではなく、過去に何回も指摘し続けてきています。
本日2021年2月10日現在、テレビが発表する「感染者」(正しくはPCR検査陽性判定者)の数は緊急事態宣言発令時に比べると著しく少なくなっています。
テレビは相変わらず「依然として予断を許さない」などと不安を煽り続けていますが、彼らは肝心な論点に気が付いていません。
陽性判定者は確かに右肩下がりで減っているのですが、PCR検査数そのものが1月中旬の半数以下に減少しているのです。検査している数が半分になっているのですから、陽性判定者数が減るのは当たり前なのです。
そもそも、このPCR検査自体が陽性判定者の追跡調査のために行われているのであって、国民の感染状況を調査するために行われているのではないため、社会全体の感染状況を伺い知るために必要な統計学的に意味のあるサンプリングがなされていません。つまり、この増減によって騒ぐこと自体に意味がありません。
また、陽性判定者の追跡調査も、「マスクをどこで外しましたか?」という質問で行っていること自体が不適切です。現在、普通の人がマスクを外すのは自宅と飲食店での飲食時だけでしょう。その結果、「家庭内感染と飲食店での感染が増大しています。」という報道になり、飲食店が悪者扱いされてしまうのです。問題は飲食店でどのような騒ぎ方をしたかなのに、それはカテゴライズせず、「どこで」しか訊かないのです。
テレビはそのような実態を知らずに飲食店で感染者が増えたと騒ぎ、GoToトラベルでは陽性判定者はほとんどいないのにこれを中止に追い込み、飲食店を時短営業に追い込み、返す刀でそれらの経営がどれほど厳しくなっているかを取材して往復ビンタで視聴率を稼ごうとしているのです。
さらに、その程度でしかないPCR検査の結果の陽性判定者数の増加をもって緊急事態宣言を発令し、減少をもって解除を検討している政府などは国民を愚弄しているとしか思えません。政権にも行政官庁の公務員にも緊急事態宣言によって生計の途を絶たれる者などいないので、この宣言の持つ重みを理解できないのでしょう。他人事なのです。
コロナ禍最大の危機がやって来る
これまでは「テレビのレベルが低いね」でおしまいにできたのですが、今度はそうはいかない事情があります。
テレビがこのコロナ禍最大の危機を引き起こす恐れが大であり、私たちはそれを覚悟しなければならないからです。
ワクチン接種が具体的になってきており、当初の予定よりも後ろ倒しになってはいますが、医療従事者への接種は2月中にも開始され、65歳以上の高齢者への接種も4月には始まるようです。
日本には65歳以上の高齢者が3600万人います。
この3600万人への2回の接種がどの程度時間がかかるのかは分かりません。
私は私の地元の市役所の管理能力を知っていますので相当な混乱を覚悟していますが、一方で選挙は大した混乱もなく行われているので、そこで培ったノウハウを生かせばスムーズにすすむのかという期待も持っています。
しかし問題はこの接種を取り上げるテレビをはじめとするメディアです。
最近の日本では毎年130万人くらいが死亡し、90万人程度が生まれています。人口が減少するわけです。
亡くなる130万人はすべてが高齢で老衰で亡くなるということではありません。若くして病に倒れる人はいますし、不幸なことに自ら命を絶つ人も増えています。事故で亡くなるという悲劇も起きています。しかし、大半の方々は高齢になって、様々な病気に勝てずに亡くなっていきます。
ここで頭の整理がしやすいように、毎年65歳以上で亡くなる人数を100万人としましょう。実際はもっと多いかと思います。そうでなければ平均寿命が84歳にはなりません。
ただ、話を簡単にするために100万人と仮置きします。
100万人の高齢者が1年間で亡くなるということは、月平均で8万3千人が亡くなるということです。
4月にコロナワクチンの接種が始まり、半年で最初の1回をすべての高齢者が接種し終わると仮定すると、その半年で50万人くらいの高齢者が亡くなります。これは新型コロナに感染しようとしまいと亡くなる人数です。
最初の月に亡くなる8万3千人の高齢者にどれだけワクチン接種後の人が含まれるのかは不明ですが、月を追うにつれて死亡者の中にワクチン接種者の含まれる率は高くなります。そして半年後、すべて高齢者が少なくとも第1回目のワクチン接種を終えた時点では亡くなるすべての高齢者がワクチン接種者ということになります。
これをテレビがどう取り上げるかは目に見えるようです。
「ワクチンを接種した後の高齢者が次々に亡くなっています。」
その数は数万人から数十万人になるでしょう。
これでこの国はパニックになります。
現に、数日前のテレビ番組で、当コラムでもかつて取り上げた医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師(専門コラム「指揮官の決断」第203回 不都合な真実 その2 https://aegis-cms.co.jp/2132)が「ファイザー社のワクチン接種を行うとある一定の数の高齢者が亡くなります。」とコメントしていました。
これはノルウェーで始まった予防接種後に高齢者が亡くなっていることを報じたニュースを受けたコメントです。
同じ番組に出演していた感染症の専門家が慌ててその見方には根拠がないことを指摘していましたが、たしかに現時点で因果関係は明らかになっていません。亡くなったのはかなり重篤な基礎疾患を持った高齢者が中心であり、同施設のワクチン未接種者の死亡率なども合わせて調査しているノルウェーの保健当局は特に心配する事態ではないとの見解を出しています。
上昌広氏はテレビで時々見かけるところを見ると、テレビ局好みのコメントをする専門家なのでしょう。そのような専門家が、まだ何も根拠がない現時点ですでにその程度のコメントをするのです。
もっともこの医師は上記のコラムでも指摘していますが、東大医学部で教鞭をとった経験もある医師であるにも関わらず、簡単なグラフに相関関係があるかどうかも分からない人なのです。しかし、肩書があって、そのようなテレビ好みのコメントを述べるためによく登場してきます。
テレビに登場する専門家と称する人がそういう発言をするので、専門家はみなそう見ていると視聴者が勘違いすることが恐ろしい結果を生みます。
日本で接種が本格的に始まった後のこの国を襲う惨状は目に余るものがあるでしょう。
問題はそれだけではない
ワクチン接種には他にも問題があります。
すでに当コラムで指摘していますが、ワクチンには感染を予防するワクチンと発症を防ぐワクチンがあります。
このたび開発されているのはいずれも発症を防ぐワクチンです。
つまり、接種をしても感染はします。
これがどういうことかというと、ワクチン接種が終わって感染しても発症するおそれがほとんどなくなった人々が街を歩き回り、その結果PCR検査で陽性になる人が多発します。
しかし感染により重篤化するおそれのある高齢者への接種がある一定以上進んだところで、緊急事態宣言や時短要請などは解除せざるを得なくなります。
ある番組のコメンテーターが執拗にPCR検査の拡充を主張し続けた結果、世論はPCR検査をもっと行うべきと思い込み、その結果統計学的にはほとんど意味のない検査が行われ、それを社会全体の感染状況の指標だと社会全体が勘違いした結果、政権はその空気に反応して緊急事態を宣言して飲食業界や旅行業界を死滅に追い込もうとしています。
しかし、予防接種が広く行われるにつれて、街は陽性判定者であふれかえることになるのです。
今の制度を変えない限り、これら陽性判定者は発症もしていないのに病院に収容され、拒否すると過料となります。そのような事態になったら、たとえ医師会がしっかりと対応していたところで医療は崩壊するでしょう。
コロナはゼロにはできない
コロナウイルスを地上から撲滅するということは不可能です。
強毒の天然痘が撲滅できたのは例外です。強毒性で多くの他人に知らないうちに感染させる前に死亡してしまい、また、罹患した人には顕著な症状が現れるため隔離しやすいなどの条件が揃っていたのです。しかし、これを例外に撲滅できたウイルスはありません。
コロナは弱毒性で顕著な外見的な症状がないために感染力が強く、これを撲滅することは不可能です。私たちが毎年冬になると風邪をひくのはこのためです。
ということであれば、社会が免疫を獲得しなければコロナ禍は終わりません。社会に免疫を獲得させるという作業はウイルスを撲滅する作業と反対のものになります。
つまり陽性判定者が増えることを望ましいことであると評価しなければならないのです。
当コラムは当初からこの立場に立っていますので、むやみにPCR検査はやってはならないと昨年の4月初旬から主張してきました。
立憲民主党の枝野代表が主張するゼロコロナというのはコロナウイルスというものについて全く何の知識もない者だけが見る幻想にすぎません。
この国を破滅させる張本人は・・・
ワクチン接種開始でこの国を襲う混乱は目に見えるようです。
街に陽性判定者があふれ、医療機関が本当に機能不全になります。しかし緊急事態宣言はもう発令できません。
一方で、ワクチンを接種しようがしまいが亡くなるはずの高齢者がワクチンを接種してから亡くなるとテレビが視聴率稼ぎに大騒ぎを始めます。そうなると65歳以下の人々の接種に大混乱が生じます。それもテレビにとっては格好のネタになります。
ワクチン接種の準備を整えるということは、そのようなメディアへの対策も含まれなければなりません。
当コラムでは、戦前に満州への進出や国際連盟脱退を煽り、ついには対米英開戦やむなしという空気を醸成した新聞について指摘しています。
近い将来、この国をもう一度破滅させるのはテレビでしょう。
この国を亡ぼすのは戦前も令和の現在もメディアです。