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専門コラム「指揮官の決断」

第308回 

確率の話の続き

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またまた確率の話です

このところ、統計学の話が時々出て来ています。

統計学は当コラムの専門ではありませんが、弊社が世の中を理解するために重要視している数理社会学的手法の有力な武器ですので、筆者としても関心を持っているところです。

一方、この2年半にわたってメディアを煽っている感染症の専門家たちが、致死率の計算すらまともにできないという実態を目の当たりにし、いくら専門外であっても彼等よりはましな分析ができるはずであり、その程度の専門家に世の中が惑わされているとすれば、何とかしなければならないという思いもあります。

カジノの話

当コラムでは、新型コロナ感染症のある諮問委員会のメンバーである感染症の専門家が、代数の法則を理解せず、サイコロの各目が出る確率が1/6であると言いつつ、そのサイコロを6回振って何故すべての目が出揃わないのかという問題に明確な回答が出来なかったことについて触れています。

この専門家と会食中に、彼がかつてラスベガスで遊んだことがあると言い出したので、そのような話題になっていったのですが、この人はその場でさらに面白いことを言い出しています。

彼はある晩にホテルの地下のカジノに出かけたのだそうです。生まれて初めて足を踏み入れ、しばらくはあたりを見て回っていたそうです。

入場料を払って入ると、中でバニーガールがトレイに載せて歩いているシャンパンやワイン、サンドウィッチなどは自由に手に取ることが出来るそうです。

「そうです。」という表現を取っているのは、筆者はカジノに足を踏み入れたことが無いのでよく分からないからです。二度の米国駐在経験を持っていますが、ラスベガスは上空を飛んだだけで、降りたことがなく、そのカジノにも行ったことがありません。

米国発のクルーズ船に乗ると、領海を出たところで船内のカジノが店開きしますが、筆者は子供連れで乗っていたので、やはりそこには行きませんでした。

日本国内でも、横須賀の米海軍基地のオフィサーズクラブにはスロットマシンが置いてあり、遊ぼうと思えば遊ぶことが出来ます。筆者は若い頃、横須賀の米海軍の補給部隊で研修のために勤務していたことがあり、オフィサーズクラブには昼食を食べに行っていましたし、知人と夕食を食べたり、パーティーがあったりでそのオフィサーズクラブにはよく行きましたが、そのスロットマシンで遊んでいる士官を見たことがありません。

下士官用のクラブは事情が違うのかもしれませんが、行ったことが無いのでよく分かりません。

とにかく、その感染症の専門家は、しばらくシャンパングラスを片手にいろいろなギャンブルを見て歩いていたのだそうです。その結果、ルーレットが一番馴染みやすいと考え、ルーレットのテーブルに座ったのだそうです。

ルーレットでの確率をどう考えるか

彼は学者らしく、いきなり勝負に出ずにしばらく観察したのだそうです。そこで、もっとも単純な赤か黒に賭けることにしたのだそうですが、彼が観察していると、4回連続して赤となったのだそうです。

そこで彼は5回連続赤になる確率は極めて低いと判断して、所持金の3分の1を黒に賭けたのだそうです。

ところが残念なことに5回目も赤が出て負けてしまいました。

そこで彼は掛け金を2倍にして再度黒に賭けたのだそうです。

この手法はギャンブラーがよく使う手です。俗に「マーチンゲール」法といい、負けるとその倍額をかけて、一挙に負けを取り返しつつ、収益を得るという方法です。

その結果、また赤が出て、彼はその場で持っていた全財産を2回の勝負で失ったそうです。最初に3分の1を賭け、次に2倍の3分の2を賭けて負けたのですから、全財産を失ったことになります。

もうちょっと勉強しておけばよかったのに

彼は4回続けた後に5回目も赤が出る確率を計算したそうです。その確率は3.125%であり、さらに6回目も赤になる確率は1.563%だそうです。それほど小さな確率だったにも関わらず連続して負けて全財産を失ったと回想していました。

筆者は彼の回想を聞いていて思いました。

「この程度のオツムでは負けるのも仕方ない。」

確かに5回や6回同じ色になる確率は極めて低いのですが、しかし、5回目や6回目にどちらかの色が出る確率は、それぞれ1/2であることを理解していないのです。

ルーレットの結果は、前回の結果に影響を受けないからです。

これは確率論の世界では「ギャンブラーの誤謬」と呼ばれる有名な問題です。

この国の感染症対策が右往左往するわけ

この程度の頭脳がある大きな自治体で感染症対策の諮問に応えているのですから、世の中が混乱するのも無理はありません。

本当にくどいようですが、彼らはこの新型コロナウイルス感染症の致死率さえまともに計算できないのです。