専門コラム「指揮官の決断」
第415回GDPって何?
はじめに
かねてお伝えしていたとおり、マクロ経済の基礎的な知識についての説明を始めます。
当コラムは経済学を専門とする専門コラムではありませんので、深く言及することはありません。また、経済学の教科書を書こうとしているものでもありませんので、最初から順番に読んでいただく必要もありません。
毎回、特定のトピックを取り上げて説明しますので、その都度、一話完結で読んでいただければ結構です。
選ぶテーマは、マニアックなものではなく、当コラムを読んで頂くために必要な最低限のものに絞っていきます。
レベルも高校生が読んでも分かる程度に抑えますので、大学で入門的な講義を受講された方は読み飛ばしていただいて結構です。
ただ、時々アップする予定のこれらマクロ経済に関する記事を読んで頂いていると、新聞やテレビで出てくる経済関連のニュースの意味がよく分かるようになっていくはずです。
メディアでは、それほどレベルの高い経済理論が交わされているわけではありません。(記者たちは、そんな高度な議論はできませんからね。)
それでも多くの国会議員たちよりもまともなマクロ経済の常識を身につけることができるはずです。
今回は、GDPを取り上げます。安全保障関連予算が対GDP比2%に増額されたというニュースが飛び交いましたが、現在その財源を巡る議論が盛んになりつつあります。
この財源を巡る議論も重要ですが、そもそもGDP が何を示しているのかを理解していないと、それがどういう意味なのかを理解することができません。GDPの正体を知ることから議論が始まります。
GDPとは何か
GDP(国内総生産)とは、ある国が一定期間(通常は1年間)に生産したモノやサービスの総額を数値で表したものです。いわば、その国の経済活動の規模を示すバロメーターのようなものです。
国民の人口が数千万人の国と、十億人を超える国のGDPを直接比較すると、さすがに十億人を超える国のGDPは大きくなりますが、経済的な効率を比較すると、必ずしもGDPが大きい国が裕福に見えるということでもないことがわかります。そのような場合には、GDPを人口で割って、一人当たりGDPを算出すると比較しやすくなります。
GDPがなぜ重要なのか
GDPは、まるで人間の健康診断のようなものです。
数値が高いほど、その国経済が活発で、国民の生活水準が高いと一般的に考えられます。
政策決定の指針: 政府はGDPの推移を参考に、景気刺激策や緊縮財政といった経済政策を決定します。
各国のGDPを比較することで、その国の経済力や国際的な地位を測ることができます。
GDPの計算方法
GDPは、大きく分けて以下の3つの方法で計算できます。
生産側からのアプローチ:
国内の全ての企業が生産した付加価値の合計を計算します。付加価値とは、製品の販売価格から原材料費や中間財の費用を差し引いたものです。
所得側からのアプローチ:
国内の全ての経済主体(企業、家計、政府など)が得た所得の合計を計算します。賃金、利子、地代、そして企業の利益などが含まれます。
支出側からのアプローチ:
国内の全ての経済主体が消費、投資、政府支出、そして純輸出(輸出から輸入を引いたもの)に充てた金額の合計を計算します。
いずれの計算方法をとっても結果は同じになります。
ただ、それぞれの計算要素のデータが微妙にことなるため、完全一致にはなりませんが、違いは誤差の範囲です。
GDPの注意点
GDPを見るときには、注意しなければならないポイントがいくつかあります。
その代表的ないくつかをあげておきます。
・モノだけでなくサービスも含まれる:
GDPは、モノだけでなく、美容サービスや金融サービスなど、無形のものも含めたサービスの価値も計上します。
・中間財は含まれない:
自動車を作るときに必要な鉄鋼などは、自動車の最終的な価格にその価値が含まれるため、GDPの計算では二重計上を避けるために、中間財の価値は含まれません。
・非正規経済は含まれない: 家事労働やボランティア活動など、お金のやり取りが伴わない活動は、GDPには計上されません。
・幸福度とは異なる:
GDPが高いからといって、必ずしも国民の幸福度が高いとは限りません。環境汚染や格差の拡大など、GDPには反映されない側面も考慮する必要があります。
・名目GDPと実質GDP
GDPには、名目GDPと実質GDPの2種類があります。
名目GDP: 物価変動の影響を受けたGDPです。物価が上昇すれば、名目GDPも上昇します。
実質GDP: 物価変動の影響を除いたGDPです。経済成長の程度を正確に把握するために、実質GDPが用いられます。
GDPの限界とその他の指標
GDPは、経済全体の規模を測る上で非常に重要な指標ですが、万能ではありません。
例えば環境問題です。
GDPの成長は、必ずしも持続可能な成長を意味するわけではありません。環境汚染や資源の枯渇といった問題を考慮する必要があります。
また、所得格差が見えません。GDPが上昇しても、その恩恵が一部の富裕層に集中し、貧富の差が広がる可能性もあります。
さらに、GDPは、国民の幸福度を直接測る指標ではありません。
今回のマクロ経済解説はここで閉めます。あまり長くなると、皆様読む気を失いますし、経済論なんてつまらないですからね。
ただ、今回の内容をしっかりとご理解いただければ、国の経済についてのニュースをかなり理解していただけるかと思います。
特に、GDPがどうやって計算されるかをご理解いただければ、財務省の嘘やその御用学者たちの無能さ、政治家の不勉強なこと、テレビや新聞で公然と言われている嘘が理解できるようになるかもしれません。
GDPがどのようなものかをご理解いただいたうえで、そこから何が読み解けるのかという話は、ちょっと込み入っていますので、別の回に改めます。