専門コラム「指揮官の決断」
第428回日航123便墜落事故に関するシンポジウム

はじめに
今回のタイトルを見て、「またか」と思っておられる方も多いかと拝察いたします。
当コラムでは、この問題を4回連続で取り上げ、巷に溢れる陰謀論に対抗しようとしました。
そのコラムに眼をつけたのが、YouTuberのワタナベケンタロウさんでした。
YouTubeへの出演依頼
彼から、自分のYouTube番組に出演して欲しいという依頼がありましたが、その頃、あるプロジェクトに取り組んでおり、対応できるのがいつになるか分からないけれど、コラムの引用なら構わないし、質問があればいつでも受ける旨を伝えておきました。
筆者の認識では、ワタナベケンタロウさんという人は、123便事故の陰謀論のリーダー格のYouTuberでした。
元日本航空のパーサーであった青山透子さんが出版された書物にインスパイアされたのか、その説に従った陰謀論の動画を次々にアップしているYouTuberという認識でおりました。
その陰謀論者が弊社のコラムに関心を持って、YouTubeに出演して欲しいというのは、動画に引きずり出して、元海上自衛官としての証言の矛盾を突いて、陰謀説を強化しようという意図があるのでは?と勘繰り、別に取り組んでいたことがあったこともあり、当初は積極的ではありませんでした。
ところが、彼は、途中で青山さんの主張がおかしいことに気付き、海上自衛隊がミサイルを123便に命中させたという説に信ぴょう性がないことを見抜き、それでは何が原因であの事故が起きたのかを追及して、そもそも747-SRという機体の設計に問題があったのではないか、事故機が過去に起こしている尻もち事故後の整備が問題ではないかという論点で深堀をしているところでした。
つまり、安易な陰謀論によりかかるのではなく、真摯に航空工学に関わる困難な問題に挑戦しているということが分かりました。
一方、弊社のコラムの立場はどうであったかというと、弊社には航空工学の基礎知識がないことから、そこへの論及はせず、筆者が個人的に経験したこと、弊社の知見が及ぶ専門領域に限定して議論しています。
これは、弊社の基本的立場でもあります。
つまり、専門領域の話として堂々と語れる部分と、専門外であって、伝聞推定の形を取らなければ表現できない内容とに分けた執筆となっています。
そこへ、元々メディア嫌いの筆者への出演依頼ですので、そもそもあまり気乗りがしていないということもありました。
しかし、筆者はこのワタナベケンタロウさんのYouTuberとしての態度に好感を持ちました。自分の過ちを認めるというのは、なかなか出来ることではありません。現に、ワタナベケンタロウさんの動画では、かつて彼を支持していた陰謀論者から酷評のコメントが寄せられていますし、YouTubeからは伺い知れませんが、様々な方面からの嫌がらせが続いているようです。
筆者は、彼が真相解明を出来るとは簡単には思えないのですが、しかし、真相を解明するムーブメントを作る役割を果たしてくれるのでは、という期待を持ちました。
そこで、弊社コラムの内容の引用なら構わないし、質問があれば受け付ける旨を伝え、真相解明に協力するスタンスを取りました。
陰謀論に立つ人々
123便の陰謀論については、コロナ禍において、一時静かになったように見受けられましたが、最近また喧しくなってきたようです。
一方で、やはり、この問題の陰謀説を苦々しく思っている人も多いようで、ワタナベケンタロウさんのYouTubeを観て、弊社コラムの存在を知り、そこに連載されたコラムを読んだ方からメールを頂くこともありました。
どうも陰謀論者には三種類の方々がいて、SNSなどで積極的に発言している人、その発言等を聴いたり観たりして、そう信じている人、陰謀論の立場に立つが、SNSなどは相手にせず、ひそかに検討を重ねている人などがいるようです。
最初の分類の人びとがどういう人たちなのかは、ワタナベケンタロウさんの動画に弊社コラムの要約がアップされたときに分かりました。
その動画に寄せられたコメントから類推するに、陰謀論の立場に立ってSNSで積極的に発言している人々は、批判を覚悟で申し上げれば、知的レベルが低すぎるように感じます。
まったくの無知ゆえに疑問を出してくる人はまだいい方です。
例えば、筆者が事故当時、三宅島近海を横須賀に向けて航海中の護衛艦に乗っていたとする記事で、三宅島の近くにいたのに、なぜ「まつゆき」が伊豆大島近くの海面にいたことを知っていたのか、というレベルです。少しでも海上自衛隊の艦艇運航について知っていたら、その程度の情報を持っていることは常識的に理解できますが、素人には理解できないのでしょう。このレベルの人たちに一々説明していたらとんでもないことになります。
始末が悪いのは、例えば当時「まつゆき」は海上自衛隊の艦艇ではなく、石川島播磨重工が翌年3月に納入・引き渡しをするための最後の確認を行っていた段階で、指揮を執っていたのは造船所の船長で、運航は造船所スタッフによって行われていたという事実を伝えても、そのことには触れず、「海上自衛官の証言なんか信用できない。本当のことを言ったら、家族が殺されるから。」などと発言する連中です。誰の証言なら信用するのでしょうか。この連中は、まず実名で投稿してきません。ハンドルネームです。
この連中のコメントで、動画のコメント欄がやかましくなっています。
ワタナベケンタロウさんはよく耐えているなと感心します。
もっとも恐ろしいのは、そのような軽々しい発言をせず、様々な調査をしてある程度実態を理解して、しかし、陰謀論に立っている人たちです。この人たちがどのようなことを考えているのか、またどのような影響力を持っているのかが分からないのです。
シンポジウム開催
いずれにせよ、最近再び喧しくなってきた陰謀論に業を煮やしたある団体が立ち上がりました。
そして参議院議員会館で、シンポジウムを開くことになりました。
メインは、元陸上幕僚長の岡部俊哉氏で、彼は事故直後、陸上自衛隊の一隊を率いて現場に駆けつけて救難活動を行った経歴を持っています。
それがどう伝わったのか、真っ先に事故現場に突っ込んで、火炎放射器で生存者もろとも焼き払って証拠隠滅を図ったということになっているようです。
そのシンポジウムに筆者も、海上自衛隊のOBとして証人として出席してくれという依頼があり、引き受けることにしました。
当日は、佐藤正久参議院議員が最初の挨拶をされるようです。
当初、10分ほどで何かしゃべってくれというような内容の依頼だったようで、少々気が重かったのですが、主催者側から、何人かの基調講演の後、ファシリテータの質問に答えるという方向での参加ということなので、気が楽になりました。
当コラムをお読みの方も参加できますので、興味のある方は是非お立ち寄りください。
散会後は小生もご挨拶に伺います。
4月10日に、佐藤正久議員が外交委員会で、この問題に関連して質問を行った様子がYouTubeにアップされていましたので、URLを付記しておきます。
また、ご案内のパンフレットを添付しておきますので、ご覧ください。
もし、当日お出でになる方は、個々にお出でいただいても入場できますが、できれば事前にお知らせいただければ、会場でお目にかかることもできるかと思いますので、弊社宛メール、筆者あてメール、Facebookへのメールなど何でも構いませんのでお知らせいただければ幸いです。
佐藤議員質問
ご案内パンフレット
https://twitter.com/tokyo_goyuren/status/1904736988286378343/photo/1