専門コラム「指揮官の決断」
第433回試練の時

触れたくもないことども
先週、ある仕事をしていたので、弊社コラムの掲載やメールマガジンの配信のペースがまた乱れてしまいました。
1週間に渡り早朝から夜までほとんど立ちっぱなしで、連日1万数千歩のステップ数を記録しました。こういう時のために書き貯めてある記事もあるのですが、それらを掲載するのも躊躇われ、専門コラムの掲載ができませんでした。
専門コラムが掲載されない以上、その更新をお知らせしているメールマガジンも配信できず、ついに先週は掲載・配信ができませんでした。
専門コラムの掲載を躊躇ったのには理由があります。
危機管理の専門コラムなのに、この国が滅多にない最大級の危機に見舞われている事態に眼をつぶっているということに大きな葛藤があったのです。
言うまでなく、その危機の元凶は現政権トップですが、この件に触れることも汚らわしいので、じっくりと執筆する気になれないのです。
この社会は、コロナ禍以上の試練の時を迎えています。
唾棄すべきトップ
筆者は海上自衛隊に30年ほど在職しました。多くの指揮官に仕え、多くの先輩が指揮官として部隊の采配を取っているのを見てきました。
指揮官にはいろいろなタイプがあり、リーダーシップのあり方はいろいろだということを知りました。しかし、これほど恥知らずな国のリーダーを見たことがありません。
能力が低くても一生懸命な人は応援をしたいと思いますし、そのような指揮官にはそのような仕え方をしてきました。
人にはそれぞれ専門があり、指揮官に専門家の立場からサポートをするのが幕僚の任務です。
自分が指揮官配置にある時は、多くの部下に支えられてきました。
ところが、〇×(差別用語ということなので伏字とします。)なだけではなく、自分の利益しか考えないリーダーには手の差し伸べようがありません。
筆者が生きてきた世界では(どこでもそうだと思いますが。)、責任を取らない奴、自分の利益しか考えない奴、困難から逃げる奴、前言を平気で翻す奴は評価されませんし、筆者はそのような指揮官に仕えたことはありません。
ところが、現政権のトップに座っている男は、絵に描いたように、それを全部やってくれます。
衆議院の解散について、憲法69条による以外の解散は認められていないと主張し続けたのに、自分が総裁選で選ばれた瞬間に、まだ首相に指名されていない時点で、「信を問う」として解散をほのめかし、冗談だろうと思っていたら、能登半島の復興支援の補正予算の審議もせずに解散し、信を失っていることが明らかになったのに辞職もせず、トランプ大統領に会いに行っても、別れの握手すらしてもらえずに30分で追い返され、外交デビューのはずのG20で、積極的に各国首脳に話しかけずスマホで遊び、就任の祝意を表して近付いてきた他国首脳との握手は椅子に座ったままという態度です。
外交センスの欠如
さらにはローマ教皇の葬儀に参列しませんでした。彼は外交の世界でローマ教皇がどのように扱われているのかを理解していないのでしょう。
米国、ドイツ、フランス、イタリア、ウクライナ、ブラジル、インドは大統領が参列、、スペインは国王、EUは委員長、国連は事務総長が参列する儀典的な意味合いの深い儀式です。日本の存在感を示す絶好の機会だったはずですが、なんとハノイなどに出かけていました。もっともあの男が社交上の儀式に参列すると、大変な失礼をして世界中に恥をさらしたかもしれないので、行かなかった方が正解だったのかもしれません。なにせ、拉致被害者国民大集会の檀上で、横田早紀江さんの訴えを聞きながら居眠りをする男です。
しかし、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が二人だけで座って、額を寄せ合って話をしているところを後ろから写した写真はインパクトがありました。
教皇の葬儀というのは、そういう舞台であるということを知らないようです。
つまり、この男には外交センスがまったくないのです。
虚偽答弁
さらには、国会において、消費減税を求められると、「日本の財政派、ギリシャよりもひどい。」と公言しています。
一国のトップが、自国の経済状況について、国会で「ひどい」と公言するという神経が理解不能です。
しかも、ギリシャよりもひどいとする根拠が政府の債務だけを比べてギリシャよりもひどいと言っているだけなので、呆れて物も言いたくありません。債務残高とGDPの比が200%を超えているという従来からの財務省の説明や、池上彰氏の解説のとおりです。
財務省の主張は嘘ですし、池上彰氏は経済の基本を全く理解していないので、この連中の主張を鵜呑みにすること自体、首相の経済に関する見識がまったくないことを示しています。
マクロ経済に関しては、経済学部の1年生以下のオツムしかないことが分かります。まぁ、マクロ経済に関して少しでも認識のある自民党議員は極めて少数なので、仕方ないのかもしれません。
マクロ経済の基本を分からなくてもいいのですが、自国通貨を発行できる日本と、ユーロ経済圏にあるギリシャを比べるときには、単にある数字だけ見て比べていいわけではないということくらいは理解してもらいたいと思いますし、一国の首相が議会で「この国の経済はギリシャよりもひどい。」と公言することがどういうことなのか、政治家としての常識すらないのでしょう。
会社の社長が、株主総会で「自社の財務状況は極めて悪い。」と発言したら、株価は暴落してしまいます。この男にはそんな常識もないのでしょう。
単に首相の椅子に座りたくて5回も挑戦した結果掴んだ地位なので、どうしてもしがみつきたいのでしょう。
しがみつきたいのはいいのですが、国会で野党議員の質問に答えて首相として答弁していますから、議事録に残る政府答弁であり、それが虚偽答弁であるとなると問題は看過できません。省庁の局長や次官の虚偽答弁であれば首が飛びます。
この男の首相としての虚偽答弁はこれだけではありません。
消費税を撤廃するためには対応に1年かかるという議論です。
多分実際に、1年くらいはかかるでしょう。法改正が必要で、公布から施行には日数をおかなければ社会が対応できませんから。
しかし、首相が国会で答弁したのは、コンビニやスーパーのレジの話でした。
それを「私はいろいろな人に聞いてきました。」と言って、対応に1年かかるからやらないというのは虚偽答弁です。立法から公布・施行の話ではありませんでした。
システム改修に時間がかかるからやらないというのなら、これまでの消費税アップは何だったのでしょう。
しかも、大切な社会保障予算の財源を考えなければ無責任だということだそうですので、消費税が財源だと思い込んでいる大〇×野郎です。
このモンスター級の〇×は、この国の議会制民主主義の手続きから選ばれました。
つまり、このモンスターを誕生させたのは、この社会なのであり、責任は私たちにあります。
現在の民主制の下では、社会の民度以上の指導者は生まれてきません。
つまり、このモンスターは私たちの民度を映し出している鏡なのかもしれません。
そんなことを考えているうちに気分が悪くなってコラムの執筆の筆が止まりました。と言って、ほかに何をテーマにしようかと考えた際、これ以上の危機はないので、何をテーマにしても薄っぺらなコラムしか書けず、仕方なくこのモンスターの話題に戻ってきた次第です。
このモンスターが君臨している限り、この状態が続くかもしれません。
筆者の政治家嫌いは筋金入りで、その連中の話題に触れるのは嫌なのですが、危機管理の専門コラムである以上、この国最大の危機を目の前にして避けて通るわけにもいかず、連日大きなジレンマと戦う日々です。