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専門コラム「指揮官の決断」

第435回 

試練の時 その3

カテゴリ:危機管理

大丈夫なのか?

一国の首相が自分の国の財政は明らかにギリシャより悪いとか、消費税の廃止にはレジの改修に1年かかるとか、どう考えてもまともな答弁とは思えず、就任以来の言動を見ていると、正常の精神状況ではないのではないかと疑いたくなります。

ひょっとすると錯乱状態にあるのではないかという疑いさえ持ちます。

ギリシャより酷い発言のもたらすもの

レジの改修に1年かかるというのは、単にものを知らないのにもほどがある、という程度で済ませてもいいかもしれないのですが、日本の財政はギリシャよりも酷いという発言は許容限度を超えています。一国の指導者が絶対に口にしてはならない暴言です。

世界はそれを知っていますから、欧米のメディアでは一斉に非難が起こりました。

ところが、日本のメディアでは、そのような発言があったこと自体を伝えてはいますが、それがどういう意味なのか、どのような影響があるのかについて、まともに伝えていません。

野党第一党もあえて論点とはしていないようです。

したがって、地上波で情報を見ている方々には、それがどれほど深刻な問題なのかを理解されていないかもしれません。

かつて、タイを発信源とする国際的な通貨危機がありました。ご記憶の方も多いかと存じますが、この度の首相の発言は、それを再現させるかもしれないので、米国やヨーロッパのまともな新聞の社説や経済紙では首相発言をボロクソに評価しているのです。

アジア通貨危機

1997年5月のことですが、ヘッジファンド等の機関投資家によるタイ・バーツの大量の空売りがあり、タイ中央銀行はバーツ防衛のために市場に介入しましたが、外貨準備が足らなくなり、バーツのドル相場は急落してしまいました。

通貨の急落は、マレーシア、インドネシア、韓国に波及し、IMF(国際通貨基金)や世界銀行、アジア開発銀行等の支援を受けることになりました。

この時、IMFは韓国への支援に消極的だったのですが、日本政府が頑張って韓国を支援するように働きかけ、ウォンはデフォルトを免れました。

その際の日本の努力を韓国政府も韓国人も覚えていないのか、忘れたふりをしています。

この度の首相の発言は、その再来を惹起しかねない危険な発言です。

しかもアジア通貨危機は、実際にヘッジファンドの動きにタイ政府が必死になって対抗しようとした結果なのですが、この度は単なる首相の〇×が原因です。

日本の大手メディアは、この極めて危険な発言について、チラッとしか触れませんが、実は世界恐慌を引き起こしかねない出鱈目な発言だったのです。

日本の大手メディアが触れないのは、財務省の圧力なのか、あるいは評価する能力がないのかのどちらかでしょうが、欧米のメディアは正しく評価しています。

世界にとって幸運だったのは、金融市場が日本の首相の発言を相手にしなかったことです。CDSの順位が変わらなかったことは前回のコラムで述べました。

自分の発言が、何をもたらすのかについて何の認識も持っていない首相というのは、大〇×野郎というしか表現のしようがありません。

トップがトップなら、部下も部下

この政権は、トップがその程度ですから、閣僚も知れています。

農水大臣が失言で「コメは買ったことはない、支援者からもらっており、売るほどある。」という失言で辞任したのはまだかわいいものですが、米国と交渉にあたっている経済再生担当大臣は、交渉の場にトランプ大統領が現れたら「格下も格下の私に会って頂き・・・」と舞い上がって、この国を代表して交渉に当たっているという自覚を持っておらず、外務大臣は中国への忖度以外の施策を取らず、しかも、尖閣上空を日本の自家用機が飛んだら、海警の船からヘリが上がってきて追い払っただけではなく、「日本の民間機が領空に不法侵入した」と主張しているのに、駐日大使を呼びつけるわけでもなく、「厳重に抗議した。」に留まっています。

海警の船には、無害航行をする権利がありますが、無害であるためには航空機の発着はしてはなりません。また、発艦したヘリコプターは領空侵犯ですから、スクランブルの対象となります。

海警の船は海軍の指揮下にありますから、これは海上における警備行動を発動してもいい事態です。

しかし、外務大臣は国会で尖閣は日本が実効支配していると繰り返しています。実効支配と有効支配の違いすら理解できない男が外務大臣をやっているということです。

東京大学やハーバードで勉強しても、政治家になると〇×ばかり

現政権政党の最近の外務大臣はお粗末な奴ばかりで、前外務大臣は日本のEEZに中国の海洋観測ブイが設置されているのに、国際法上に処分していいという条文がないので処分できないという国際法音痴でした。この女性外務大臣は東京大学で国際関係論を学び、ハーバード大学ケネディスクールに留学していたそうですが、国際法のイロハを理解できなかったようです。この程度の理解力で法務大臣を務め、次の組閣で外務大臣になっていました。恐るべきことです。しかも、自民党総裁選に出馬するという、あわよくば首相にという野望すらのぞかせています。

官房長官も、日銀の利上げによって国債の利払いが高くなるので、歳出予算を圧迫するので要注意だなどと勉強会で説明する始末で、東大法学部、ハーバード・ケネディスクールで何を勉強してきたのかと疑いたくなるようなオツムです。官房長官というのは、予算の政府芸案を国会に提出する際の担当者のはずで、予算書の中身を知らずに予算を提出している無責任な男です。苗字が筆者と同じですが親戚ではありません。日銀が利上げしたのは、政策金利であり、国債の金利ではありません。国債の金利は大半が固定金利です。

また、この政権政党の税制調査会会長は、東京大学法学部やハーバード大学で何を学んできたのか分かりませんが、普通の大学の経済学部で財政学の単位を取った学生なら理解する税金というものの性格をまったく理解できないようです。

筆者の知る東京大学出身で、ハーバードの大学院に留学した人たちは皆、それなりの見識を持つ尊敬すべき人々ですが、これが同じ勉強をしても政治家になってしまうと途端に〇 ×(差別用語だそうですので伏字とします。)になってしまうようです。

筆者が政治が嫌いで、政治家を評価していないのは、どうも政治のそのような、人を〇×にしてしまうメカニズムが好きではないのかもしれません。

人を〇×にするメカニズム

なぜ、若いころにそのように学校の成績が良く、基本的に頭の良い人たちが、政治家になると途端に〇×になるのかは、心理学や社会学の専門家なら面白い研究領域かもしれません。

以下は、それらを専門としない素人の筆者の仮説です。

彼らは多分、中学・高校の成績は良かったのでしょう。

ただ、その多くの人たちが、経済学部の一年生なら当然理解しているはずのマクロ経済すら理解できないのには、理由がありそうです。

彼らが簡単なマクロ経済を理解できないのは、彼らのかけている眼鏡が曇っているからです。

官房長官が、自分が国会に提出している予算の政府原案を理解していないのも、彼の眼鏡が曇っているからです。

外務大臣が国際法を理解できないのも、その眼鏡が曇っているからです。

税制調査会会長が税とは何かという基本問題を理解できないのは、その眼鏡が曇っているからです。

何が彼らの眼鏡を曇らせているかといえば、「私利私欲」です。

「私利私欲」のため、責任は回避すべきものと信じていますし、手柄は横取りすべきものであり、名誉などどうでもよくて名声だけを追い求めます。

そして権謀術策の大家をひたすら目指しています。

筆者が海上自衛隊に入隊する際、服務の宣誓を行わされました。これは強制ではなく、宣誓をしないことも自由でした。ただ、宣誓をしないと自衛隊に入隊できなかっただけです。

その他の公務員も服務の宣誓は行いますが、海保にも警察にも消防にもない文言が自衛隊員の服務の宣誓には含まれています。「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを誓います。」という文言です。

責任を回避することをもって是としている政治家にとっては恐るべき文言です。

「公約を守ることができずに自決した政治家をただの一人も知らない。」と当コラムではよく言ってきました。さすがに、最近の選挙で「命がけで戦ってまいります。」と声を上げている候補者はいなくなったようですが、昭和の時代はそんな奴ばかりでした。

つまり、この連中には命がけで守るものなどなく、自分の利益のためには、何を犠牲にしても構わないのです。そういう連中が国政を視る眼鏡がクリアなはずはありません。一寸先も見えないくらい曇っているはずです。だから、日本の最高学府を出て、世界でもトップクラスの大学院に留学しても、国内の平凡な大学の経済学部一年生が理解している内容が理解できないのです。

前言を翻すのが日常茶飯事な首相が出現したということは、この党の政治家は、公約どころか自分の発言にさえ責任を持たないことが不思議ではなくなっているのでしょう。

つまり、政治家の言うことなど、何一つ信じてはいけないということです。

筆者が政治や政治家をなぜ嫌いになったのか理由は定かではありませんが、物心ついたときには嫌いでした。つまり、理屈ではなく生理的な嫌悪感を持っていたのですが、筆者の生理的嫌悪感が間違いではなかったことが分かった次第です。