専門コラム「指揮官の決断」
第169回女将のおもてなし
「料亭文化振興議連」発足!!
報道によれば、自民党の有志議員約30名が「料亭文化振興議連」を発足させたそうです。
日本料理や芸妓との遊びなど料亭のおもてなしを世界にアピールし、観光客にアピールするためなのだそうです。
会長は衛藤征士郎元衆議院副議長が勤め、二階幹事長などが名を連ねています。顔ぶれを見るとなるほど料亭大好き議員ばかりのようです。
私は元々政治や政治家が大嫌いですが、ここにきて愛想も尽き果てたという思いです。
解決しなければならない問題は浜の真砂の数より多数あるはずです。
この政治家連中はかつての料亭政治が忘れられないだけで、この議連を立ち上げて公然と料亭政治を復活させようとしているだけなのでしょう。
この連中がアピールなどしなくとも、日本の良いものを見た外国の観光旅行者がSNSで世界中に発信してくれます。
政権の危機管理能力とマスコミ
この能天気な政治家たちが政権与党の重鎮の地位を占めていると思うと暗澹たる思いに駆られます。
ただでさえ、現政権は稲田防衛大臣の辞任に際し岸田外務大臣を防衛大臣兼務とする暴挙を平気で行った政権です。
国家間の争いがエスカレートしていくとき、それを最後の瞬間まで外交交渉で何とか解決する努力をしなければならない外務大臣と、速やかに戦う準備を行い、できるだけ有利に戦いを進める策を練らねばならない防衛大臣が危機管理上の事態において兼務できるはずがないのを理解できない政権なのですが、こういう連中が中枢を占めているのであれば、そうなるのも当然かもしれません。
この外務大臣と防衛大臣の兼務の際、マスコミや評論家たちは何の疑問も呈しませんでした。内閣改造まで1週間であることが分かっていたからです。
この時声を荒げなかったマスコミや評論家たちは自分たちが芸能人のゴシップを追いかける程度が身の丈であることを自覚すべきでしょう。言論も堕ちるところまで堕ちています。
たとえ1週間であっても絶対やってはならない人事です。その1週間に何が起きるのか誰も知らないのであり、そのため自衛隊、海上保安庁、警察、消防の職員たちは即応の態勢を取り続けているのです。年末年始も洋上で、あるいは当直室で待機し、子供の入学式や運動会など観たことがないという父親や母親ばかりです。
末端にはそのような負担を負わせている政権が、トップの人事をいい加減に考え、その挙句は料亭文化振興議連の設立です。
私は現政権の危機管理能力などまったく信じていませんし、憲法9条で最大の論点である第2項に触れずに第3項を付け足して自衛隊を明記するなどという馬鹿げた改正論を真剣に考えるつもりもありません。
ただ、国政を託す政党として現政権以外に見当たらないのが、残念ながら現実でしょう。
わが国憲政史上最悪の政党だった党から分離独立した野党第一党も「桜」でしか政権を追及できないお粗末さです。
つまり、私たちには選択の余地がないのかもしれません。
女将の秀でた危機管理能力
我が国の政治家や言論界の堕落はともかくとして、私は料亭や旅館の女将たちの「おもてなし」は大きく評価しています。もちろん議連の議員たちとはまったく別の観点からの評価です。
私はある仮説をもっています。
それは「一流のおもてなしができる女将は危機管理に関しても超一流である。」という命題です。
一流のおもてなしのできる女将は客あしらいがうまいだけではありません。
お客様を迎える準備をするにあたり、彼女たちはあらゆるポイント、それは凡人にはまったく気が付かない微に入り際にわたる部分にいたるまで、一瞬にチェックをしていきます。
各部屋を見回り、その超能力とも思える勘をフルに働かせて何か従業員が見落としている点はないかを確認します。
そして、ほんのわずかな額の傾き、目に見えるか見えないかの埃、飾られた生花の瑞々しさなど少しでも問題があるとそれを本来あるべき姿に戻していく凄まじい執念を持っています。
この勘と執念が危機管理に極めて重要なのです。
いかなる変化も見逃さない観察眼は危機の予兆を察知する能力でもあります。
そしてその変化が何によって起きているのかを追求し、あるべき姿に戻していく執念は、あらゆる事態に対する準備に手を抜かない姿勢に他なりません。「まぁいいか。」という安易な妥協をしないのです。
また一流の女将はお客様を忘れません。お帰りになった後にすぐ訪れてくれた感謝を示す礼状を出したり、今風であればメールを送ったりします。そして、そのお客の好みなどをしっかりと記憶し、あるいはデータベースに残すという手間を惜しみません。
これは同じ過ちを二度と繰り返さない、あるいは教訓を無駄にしないという態度そのものであり、危機管理において最も重視すべき態度かもしれません。
どうです?BCPをコンサルタントに作らせたから危機管理ができていると思い込んでいる経営者など足元にも寄れないほど優れた危機管理者でしょ?
皆様も料亭や旅館に行く機会をお持ちかと思いますが、女将の流し目や襟足に見とれるだけでなく、彼女たちがどのように気を使っているか、何を見ているのかを少しは見倣ったほうがよろしいかと思いますよ。
能天気に構えている状況ではありませんよ
間もなく令和元年が暮れて新しい年が始まります。
おめでたいばかりではありません。
南海トラフに起因する大震災がまた一歩近くなってくるのです。富士山もそのエネルギーをしっかりとため込んでいます。
これらが一挙に噴き出してくる確率は100%です。
勘違いされている方が多いのですが、国が発表している南海トラフに起因する地震津波の発生確率が向こう30年で70~80%という数字は、30年後に70%の確率で地震が起きると言っているのではありません。
この30年間で70~80%という数字は、明日起きても何ら不思議はないという数字だと理解する必要があります。
切羽詰まっているということです。料亭を巡る議員連盟などで浮かれている場合ではありません。