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専門コラム「指揮官の決断」

第242回 

過ちは繰り返しません

カテゴリ:危機管理

何が過ちだったのか

広島市にある平和公園には原爆死没者慰霊碑があり、「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから」と刻まれています。この碑文の主体については大きな論争があり、原爆を落としたのは米国だという議論や戦争を起こした日本の責任を問うという議論までありましたが、世界を巻き込む戦争を起こし、核兵器の使用に至った人類の過ちという解釈で落ち着いているようです。

何故筆者がこの碑文を思い出しているのかについては後で申し上げます。

コロナ禍は人災

以前からお伝えしてきておりますが、筆者はこのコラムを執筆するにあたり気力を振り絞って綴っています。限りない虚しさと闘いながらの執筆なので疲労感が半端ではないのです。

その最大の理由は、このコロナ禍が人災だからです。

テレビが振りまく「コロナ怖いウイルス」に政治家までが感染し、国民は不安な毎日を送ることを強要され、それが自治体の長と医師会の怠慢により増幅されているからです。

テレビでは内閣官房参与の高橋洋一氏のツイートが問題となって更迭要求などが出ていますが、当コラムではかなり以前から高橋氏と同様の発言を繰り返してきていますので、そのツイートは当たり前のことを言っているにすぎないと思っています。

ただ、筆者が知らなかったのは、この「さざ波」発言をメディアで最初にしたのは元厚労省の医系技官である木村盛世氏だということでした。彼女は「日本の状況は欧米に比べたらさざ波みたいなもの」と発言していたそうで、私は「欧米から見たらさざ波にもならない。」と言っていた違いはありますが、いずれにせよ、まともに欧米の状況と日本の状況を同じ尺度のグラフで比べると底辺にシミのようにしか見えないというのは以前当コラムでもご紹介しています。(専門コラム「指揮官の決断」第239回 無力感に襲われるとき https://aegis-cms.co.jp/2358 )

高橋氏は陽性判定者数の推移を示すグラフを提示して、欧米から見たら「さざ波程度」と述べているのですが、人命軽視という批判をしているメディアもあって呆れさせられています。彼が示したグラフは”Daily new confirmed COVID-19 cases per million people”というグラフで、このコラムでも執筆にあたりよく参照しているグラフです。

つまり、陽性が確認された人数のグラフであり、死亡者数のグラフではありません。このグラフを見て人命軽視というのであれば、昨年の日本の死者数が一昨年の死者数より1万人近く少なかったことについて、コロナで良かったと言わなければなりません。

多分、人命軽視と批判する人はこのグラフのタイトルが読めないのでしょう。

パーティを開くことなど問題ではない

そんなことで呆れている時に出てきたのが日本医師会の中川会長の政治資金パーティへの参加の話です。

当コラムではこれまで何回かにわたって日本医師会会長の怠慢、無責任、責任回避に終始する様について批判をしています。このため、この会長には何も期待はしていませんでしたので、その程度のニュースでは驚きませんでした。

ただ、中川会長は仮にも医師です。会見によればホテル側と綿密に打ち合わせをして感染回避策を取り、料理も出さず、飲み物もペットボトルの水1本に抑え、発言も登壇した人のみで静かに会合を進めたとのことであり、当コラムとしてはそのような会合などで感染の恐れはほとんどないでしょうから、開催に際して特に問題はないと考えています。さらに、会長を辞任すべきではという声もあるようですが、その必要もまたないと考えています。何か失敗をしたら辞めればいいということではなく、医師会会長には果たすべき責任があるはずです。ご本人もそれを意識してか、辞任の意思はないことを表明されています。

ここで申し上げなければならないのは、当コラムがそのような会合を開いても問題がないと考えているのは私たちのような一般人が開催する場合の話です。

ホテルが感染対策をしているのは当たり前です。巷の居酒屋だって必死になって感染対策をしています。また、観光地のホテルや旅館もあらゆる手を尽くして感染対策をしてきています。しかし、中川会長は何のエビデンスもないにもかかわらずGoToトラベルが感染を拡大させたことは間違いないとして同事業を中止に追い込みました。彼のその発言の少し前に共同通信が東京大学の研究者グループがGoToトラベルに参加した者が参加しなかった者の2倍の感染であったことが統計学的に証明されたという記事を配信したことは当コラムでもすでにご紹介しています。(専門コラム「指揮官の決断」第226回 危機管理における事実の理解の仕方 https://aegis-cms.co.jp/2264 )

この記事は実は誤りで、統計学的な証明など全くされておらず、研究者チームもそのような証明となっていないことを知っているので、統計学的な証明などという記述はしていないのですが、共同通信の記者が統計学の初歩を理解していないのか英語の論文が読めないのか誤った記事を配信したものです。

中川会長は自分でその論文を確認もせずに配信を鵜呑みにしたものと思われます。この件については、その後、国立感染症研究所のチームがGoToトラベル事業と感染者数に統計学的な関係は見いだせなかったという論文を出しています。

つまり、ろくな根拠もなく、あらゆる知恵を絞ってGoToトラベル事業を準備したホテルや旅館の努力は無視して同事業を中止に追い込んでおきながら、自分はホテルと万全の感染対策をしたと言い訳をしているのです。

そもそもホテルが感染対策をしているかどうか以前の話として、中川会長は人流の抑制を行わなければならないという主張をしてきて、それが今回の訳の分からない緊急事態宣言になっていることを考えると、ホテルに人を集めること自体が会長として国民に訴え続けてきたことと正反対です。

つまり、弊社がクライアントの皆さまを集めてパーティーを開くのはこれまでの言動と矛盾しませんので問題はないのですが、日本医師会の中川会長が開くのはダメなのです。

医師会会長は辞任ではなく、しっかりと責任を果たすべき

また、筆者は中川会長がその重責にふさわしくないので辞任すべきとも考えていません。

医師会の会長などは医学への貢献度や医師としての腕で就任する役職ではなく、単なる利益代表団体の長という極めて政治的な役職ですので、彼がそんなものを退いたからと言って誰かが困るとかいうものでもありませんし、本人もその日から収入が激減するということでもないでしょう。

医師会会長にはそれなりの責任の取り方があるはずです。

さしあたって当コラムが考えるのは、会長自身が自衛隊が運営を任されている大規模接種会場にこの政治資金パーティに参加した医師100人を率いて入り込み、日本国民すべてがワクチン接種を終わるまで外に出ずに一日24時間ワクチン接種を行い続けることです。

これによって自衛隊の医官の多くが原隊に復帰できるはずです。彼らは自衛隊の医官であり、国民の生命を守るのが仕事ではなく、わが国の独立と平和を守るのが任務です。自衛隊法にそうはっきりと書いてあります。その本来任務に早急に彼らを戻すことが必要なのです。そもそも彼らの手を借りなければワクチン接種すら満足にできないというのも医師会の怠慢によるものです。

その程度のことをさせないとこの男は目が覚めないでしょう。

コロナ死者の真実

当コラムでは感染症の専門家たちが新型コロナウイルスの致死率すらまともに計算できていないことを指摘しています。(専門コラム「指揮官の決断」 第240回 王様はハダカだと言う勇気 https://aegis-cms.co.jp/2368

まともな計算をすれば、このコロナウイルスの致死率が例年の風邪やインフルエンザと同じまたはより低いと計算されますが、そもそもその死亡者数のカウントすら他の病気による死亡者数のカウント方法と異なっており、普通に計算するとさらに致死率は低くなるはずなのです。

問題は死亡した際に検査してコロナウイルスが検出されるとコロナ死と認定されてしまうことです。

これはWHOの方針による死亡者のカウントの仕方がそうなっているから仕方ないですが、WHOがそのような方法を取ると決断したのには理由があると考えられます。

私は専門家ではないので素人の推測ですが、当初、WHOはこの世界的なパンデミックの結果、発展途上国などでは街のいたるところに行き倒れの人々が溢れ、死亡者の山を築くという状況を想定したでしょう。そうなるといちいち解剖して死因を特定することができず、検査でウイルスが検出されたら関連死と認定するしかないと判断したのではないでしょうか。

世界的な傾向を絶えず把握し続けなければならないWHOとしては世界各国が同じ基準でカウントしないと統計が取れないので、そのような方法に頼ることは無理もないでしょう。

ただ、正確に現状を把握するためにはこのカウント方式は無理があります。

当オフィスでは新型コロナウイルスに感染して発症し、さらに重篤化して死亡した方の数を推計しています。それによると現在コロナ死とカウントされている人数の15%程度となります。この推計方法はページ数の関係で今回は触れませんが、参考までに申し上げれば、死亡者の平均年齢が79.5歳で、その80%強の方々がICUで亡くなったのではなく、介護施設等で看取られて亡くなっています。つまり、寝たきりだったり、重度の認知症だったりした方々です。病院で亡くなった方の40%弱も末期癌やその他の闘病の結果力尽きた方が多く、コロナ専用の重篤者用の病棟で亡くなった方は僅かです。そのような実態から本当にコロナウイルスによる感染症で亡くなった方の数を推計することができます。

つまり、陽性判定者は確かに増えていますが、発症して入院治療などが必要となっている人数は1月初旬の半分以下ですし、新規重症者数はあまり変わりません。コロナによって亡くなった方も増えているわけではないのです。

テレビで医療崩壊が繰り返し伝えられるので私たちはそう思い込んでいますが、テレビに出てくる専門家たちや知事たちが医療崩壊を訴えていたのは昨年の4月にさかのぼり、その時点での陽性判定者の累計が1万人に満たない頃でした。何の魂胆があるのか分かりませんが、彼らは常に医療崩壊を訴え続けて私たちの不安を煽り、日本の経済にとどめを刺すことに必死です。

実際には5月17日現在でECMOを装着している新型コロナの患者は日本全国で10名いませんし、ECMOによる治療を受けて亡くなった方はこれまでに200人強です。ECMO以外の人工呼吸器を付けた治療を行っても亡くなった方もまだ1000人程度です。重篤化してECMO以外の人工呼吸器による治療などを受けざるを得なくなっている人も5月17日現在で100人もいません。

私たちに植え付けられたイメージではコロナの重篤者専用病棟では呼吸器を付けた患者がひしめき合って大変な騒ぎになっているはずなのですが、実態はここでお伝えしているようなものです。

繰り返してはならない過ちとは

これを要するに、この社会は徐々に免疫を獲得しつつあると考えることができるのではないでしょうか。当コラムの専門外の判断ですから推測しかできませんが、しかしあらゆる数字を検討しても、コロナが危機的な段階に入っているという結論の正しさは説明できず、緊急事態宣言の正当性は証明できません。

陽性者が増えるということは結核の例でも明らかであるように本来喜ばしいことなのです。

それを「感染者の増大に歯止めがかからない。」という誤報が連日流されることにより、私たちは恐怖に支配されるようになります。これはエコーチェンバー効果と言われます。

この「陽性」と「感染」の言い換えによってこの社会には恐怖に支配された「空気」が生まれ、その空気を読むことに必死な政権が緊急事態宣言を発出し、その空気を利用しようとする都知事が禁酒法と灯火管制を布いているのです。

このようにメディアに煽られた世論が「空気」を作り政策を誤らせたことがわが国には過去にあります。

満州への進出を煽ったのは新聞でした。そして満州事変が勃発し国際連盟脱退に喝さいを叫んだのも新聞でした。その新聞がついには「対米開戦やむなし」という空気を作り、1941年12月8日、日本の人々は大本営発表に小躍りしたのです。

冒頭に申し上げた繰り返してはならない過ちとはこのことです。

テレビに踊らされて現状を冷静に観ることを忘れ、知らず知らずに空気を作ってしまうことが恐ろしいのです。当コラムではアンナ・アーレントの「悪の陳腐さについての報告」に触れ、無批判にそのような状況を受け入れてしまうことの怖ろしさを指摘していますが、それは決して過去の話ではなく、昨年から私たちの社会に起きていることです。

これ以上テレビに私たちの社会を好きなように翻弄させることは止めさせなければなりません。

過ちは繰り返してはならないのです。

(写真:日本医師会HPより)